災害と建設業(2)〜災害復興最初期の対応〜
災害と建設業について考えるシリーズ、今回は人命救助などの災害直後の対応が終わり、復興に向かって動き出す時期について考えていきます。
復興最初期における建設業者の役割
災害の発生が治まると、被災した地域の復興に向けて動き出します。その最初の一歩としては、土砂や瓦礫の撤去、ライフラインの復旧などが求められます。特に道路が寸断されている場合は、被災者の移送や救援物資の輸送が滞ってしまうため、その回復は急務といえるでしょう。
アスファルトの敷設などを含む道路工事は、専門の機材や材料、技術が必要で、一部の建設業者しか請け負えない作業です。しかし、復興初期においては舗装路を敷設することよりも、土砂や瓦礫を撤去して、最低限の通行を可能にすることが重要で、道路敷設の専門性を持たない建設業者にもできることは数多くあります。
地域の復興を管轄する協会等と連絡を密に取り、土砂や瓦礫の撤去作業に人手と機材をできるだけ提供できるように準備することが求められます。
土砂・瓦礫撤去における注意点
復興作業における土砂や瓦礫の撤去作業では、通常の建設工事に伴う土地の造成や、建物の解体作業とは状況が大きく異なります。
周囲の建物などを巻き込んで崩れて堆積した土砂の中には、どんな危険物が紛れ込んでいるかわかりません。鉄骨などが紛れていれば、重機が破損する恐れがあります。東日本大震災では、通電したままの電線が土砂や瓦礫に紛れていて、重機が感電して動かなくなるといったトラブルも多発したと報告されています。
他にも、瓦礫にアスベストが含まれている場合や、工場や病院などの特殊施設が崩壊した場合は、危険な薬品や放射性物質などが含まれている恐れも多分にあります。戦災地域では、土砂に不発弾が紛れ込んでいることもあるかもしれません。
作業に入る前に、倒壊した建物の情報を集めて、危険因子をあらかじめ予想しておくことが重要です。
混乱の中でも発注者の支払い能力の確認を
大規模な災害の復興の初期段階では、街は大きな混乱が続いています。そのため、普段はあまり考えられない問題点が出てきます。
特に切実な問題となりやすいのが、作業費の支払いの問題です。行政が発注者であれば、支払いが滞るようなことはありませんが、民間企業や個人からの依頼では、支払いが受けられないケースも起こりがちです。
人助けと思って利益なしでも構わない、着手金なども求めないという業者も多いでしょうが、最低でも経費程度は回収しないと業者の負担が大きくなりすぎて作業を続けられなくなってしまいます。建設業者が倒れてしまうと復興も遅くなってしまうため、作業発注者の支払い能力の確認などは慎重に行うべきです。
燃料や資材の確保が重要
大規模災害では、ガソリンスタンドが被災したり、石油コンビナートが被災することで、給油が困難になる恐れがあります。同様に港湾施設の破損等で、セメントなどの資材が不足することも予想されます。また、復興中期の資材不足、価格の高騰をにらんで、買い占めや売り控えが発生し、資材不足につながるケースもあります。
これらの影響は、復興に関わる作業だけでなく、災害前に受注していた建設作業にも大きな影響を及ぼします。燃料や資材は、被災地域外から援助が受けられる場合もあるので、行政や建設業協会などを通して情報収集に努めることが重要です。
「災害と建設業」はこちら↓
(1)災害発生直後の対応
(2)災害復興最初期の対応
(3)災害復興初期の対応
(4)災害復興中期の対応
(5)災害復興後期の対応
(6)災害復興対応のまとめ
「関連記事①-地方活性化と建設業」はこちら↓
(1)建設業の果たしてきた役割と現状
(2)人材移動の功罪
(3)経営の多角化がカギを握る
(4)経営多角化の事例