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災害と建設業(5)〜災害復興後期の対応〜

災害と建設業について考えるシリーズ、今回は、瓦礫の撤去や建物の取り壊しなどに目途が付き、街の再興に向けた動きが加速する復興後期における建設業の役割について考えます。

災害と建設業(5)〜災害復興後期の対応〜

復興後期における建設業者の役割


復興の後期では、瓦礫撤去が進み、街の再構築を考える時期に入ります。
災害による被害は大変悲しいできごとです。ただ、街が破壊されてしまったときだからこそ、1から自由に近代的で魅力的な街づくりを進めることができると考えることもできます。災いを転じて福となす、の精神で魅力的な街づくりを目指すことが、街の復興と発展に大きな役割を果たすのです。

この時期の建設業界には、単なる発注待ちの姿勢ではなく、新たな街づくりの計画作成に積極的に参画することが求められます。地域を統括する建設業者の協会やゼネコンはもとより、地域の建設業者の経営者なども、地域を良く知る立場から積極的に提言を行うことが望ましいといえます。

予測が難しい資材需給


災害直後は燃料不足などが最大の懸念事項でしたが、復興計画が進み復興特需ともいえる建設ラッシュが始まると、資材不足が最大の懸念事項に変わってきます。

ただ、復興特需とはいっても、その地域は限定的で、通常は資材メーカーによる増産で対応可能なレベルであると予測されます。ただ、全体的に値上がり傾向にはなりやすいため、建設費用の見積もりには注意が必要になります。

東日本大震災では、日本の木材輸入の最大拠点である東北の港湾施設が津波により被害を受けたため、木材輸入が滞って、型枠用合板や構造合板が不足する事態となっています。さらに、断熱材の大手メーカーの工場が被災したことで、グラスウールなどが不足する事態も生じました。こうした特定の施設が被災して発生する資材不足に対しては、被災が明らかになった時点で早めに手を打つことが重要で、行政に早期対応を求めることが重要と思われます。

また、資材不足が発生する要因のひとつとして、不足しそうな資材の買い占めや値上がりを見込んだ売り惜しみなども考えられます。こうした状況を避けるには、行政や建設業協会が、不足が懸念されている資材の調達の目途をつけて公表することで防ぐことができます。各建設業者は、市場で買い占めや売り惜しみの兆行が見られた場合、行政や所属する協会などに早急に報告するうことが肝要です。

被災地以外への影響


被災地の建設業に対する影響を主に考えてきましたが、大規模災害が発生した場合、被災地以外の地域への影響も懸念されます。特に公共の資金は被災地の復興に優先して割り当てられるため、それまで行われていた公共工事などが延期されるなどの影響が予想されます。

定期的な公共工事が大幅に延期されると、請け負っていた建設業者の経営に大きな影響が出て、被災地以外でも資金繰りの悪化などが発生する恐れがあります。こうしたケースへの対応として、融資条件の緩和なども行われますが、根本的な仕事不足への対策にはなりえません。

復興にともなう工事には、影響を受ける被災地以外の建設業者も積極的に参加させるような施策が必要とされます。

復興特需後の備えが必要


復興による建設ラッシュは一時的に建設業者を潤すことになるでしょう。特需に対応するためには重機を新たに導入したり、作業員を増員する必要が出てきます。また、被災地で職を失った人の対策として建設業界には雇用を促進することが求められます。

しかし、復興特需はあくまでも一時的な需要であり、数年ほどで終焉を迎えます。そのときに、導入した重機の代金やリース料、雇い入れた作業員の人件費などが重くのしかかることになりかねません。

復興の進捗に合わせて、労働者を建設業から復興して再開した製造業やサービス業などにスムーズに移動させていく取り組みが必要になってきます。建設業界は、こうした懸念について早期から行政に対して対策を要望していくことが重要です。

「災害と建設業」はこちら↓
(1)災害発生直後の対応
(2)災害復興最初期の対応
(3)災害復興初期の対応
(4)災害復興中期の対応
(5)災害復興後期の対応
(6)災害復興対応のまとめ

「関連記事①-地方活性化と建設業」はこちら↓
(1)建設業の果たしてきた役割と現状
(2)人材移動の功罪
(3)経営の多角化がカギを握る
(4)経営多角化の事例

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2016.7.19
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