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災害と建設業(4)〜災害復興中期の対応〜

災害と建設業について考えるシリーズ、今回は、緊急的な災害対応にある程度見込みがつき、街の再興を考え始める復興中期における建設業の役割について考えます。
災害と建設業(4)〜災害復興中期の対応〜

復興中期における建設業者の役割


復興の中期では、瓦礫の撤去や仮設住宅の建設、各種インフラの復旧を進めるとともに、中断していた建設工事の再開や、失われた設備や施設の再建築なども始まります。

緊急性の高い工事と、将来を見据えた工事の両方が重なってくるため、災害直後の混乱期とはまた種類の異なる忙しさに追われることになります。作業員の疲労もピークに達する頃で、ミスなども発生しやすくなるため、いっそうの注意が必要になってきます。

がむしゃらに突き進んできた時期を抜けると、建設業者自身の将来を見据えた計画も必要になってきます。経営者や幹部にとっては、真の正念場を迎えるのが復興中期といえるでしょう。

地元建設業者は資金繰りが最大の課題


この時期、規模の小さい地元の建設業者にとっては、資金繰りが最大の課題になってきます。

災害前に請け負っていた工事は、災害復興を優先するために中断していることが多く、予定していた支払いが受けられず、災害前に仕入れた資材の代金支払いができなくことが予想されます。発注者側に余裕がある場合は、工事代金の一部を先払いしてもらうことなども可能ですが、大規模災害では、発注者側も混乱していることが多く、先払いに応じられないケースが多いでしょう。

こうした特殊な事態に、建設業者単体で立ち向かうことは難しいため、行政や建設業の管理団体の協力を取り付けることが重要です。

東日本大震災の復興期にも、やはり中小建設業者の資金繰りが悪化し、危機的状況を迎えました。このときは行政からの要請を受け、信用保証協会が融資の全額保証を行ったり、ファクタリング(売り掛け金を買い取る仕組み)会社が、売り掛け金の買い取りを免責条項なしに行うなどの特別対応を行って、危機を回避した経緯があります。

作業員や機材を柔軟に運用することが重要


東日本大震災では、過去に例がないほどの瓦礫が発生し、その処理には数年単位の時間を要しました。これは、作業員や重機等の不足よりも、撤去した瓦礫を運び込む先が不足したことが原因でした。自治体が有する空き地などは、仮設住宅の建設に使用する必要があったことなども要員となっています。

また、仮設住宅の建設も、資材の不足や建設用地に不足などにより、需要があっても作業ができない状態が続いています。このような状態になると、建設業者は人員や重機はあっても作業が行えず、無駄に待機し続けることになりかねません。

こうした事態に対応するには、災害前に受注して一時中断していた工事を条件付きで再開したり、公共工事などを余裕を持たせた工期で新たに受注するなどの工夫が必要になります。瓦礫撤去や仮設住宅建設の作業が行えない時期は別の建設現場で作業を行うなど、柔軟な運用が必要とされるでしょう。

被災者雇用の必要性


大規模災害が発生すると、店舗や工場などが失われたり、漁船の損失や田畑の損失により、大勢の人が職を失います。そうした状況下で高い雇用力を期待されるのが建設業界です。

被災者雇用は、多くの作業を抱える建設業者にとっても人手不足を解消する手段ではありますが、建設業に従事したことのない素人を多数抱えることは、負担のほうが大きくなることでしょう。しかし、大規模災害時における被災者の雇用は、復興の加速には必要不可欠となります。

また、復興に伴う新たな公共工事の発注は、被災者雇用を行っている建設業者に対して優先して行われることもあります。被災者雇用に対して日頃から備えておき、積極的に雇用を行うことが災害復興期を乗り切るためには必要なことといえるでしょう。

「災害と建設業」はこちら↓
(1)災害発生直後の対応
(2)災害復興最初期の対応
(3)災害復興初期の対応
(4)災害復興中期の対応
(5)災害復興後期の対応
(6)災害復興対応のまとめ

「関連記事①-地方活性化と建設業」はこちら↓
(1)建設業の果たしてきた役割と現状
(2)人材移動の功罪
(3)経営の多角化がカギを握る
(4)経営多角化の事例

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2016.7.19
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