災害と建設業(3)〜災害復興初期の対応〜
災害と建設業について考えるシリーズ、今回は災害後の最も混乱した時期を乗り切り、復旧活動が本格化する復興初期における建設業の役割について考えます。
復興初期における建設業者の役割
復興の最初期では、土砂や瓦礫の撤去により道路などの最低限のインフラの回復が優先されました。それらの暫定対応が進むと、次はいよいよ本格的なインフラの復興が求められます。
この段階に入ると、建設関係の業者は、それぞれの専門とする分野での活躍が期待されます。道路復旧は道路工事の専門業者に、電気・ガス・水道・通信網などのライフラインも、それぞれの専門業者が対応を始めることでしょう。
大規模災害で住宅に大きな被害が出た場合、住む家を失った避難者を収容する施設が必要になります。インフラ系の専門業者以外の建設業者には、仮設住宅の建設が最も期待される役割だといえるでしょう。
東日本大震災に見る瓦礫撤去の特例
広範囲にわたる地震と津波による大規模の被害をもたらした東日本大震災では、復興最初期の段階だけでは瓦礫の撤去が間に合わず、復興初期の段階でも瓦礫撤去が建設業者に求められる作業となり続けました。
復興最初期には、道路に詰みあがった瓦礫を、最低限、車1台が通れるように、瓦礫を道の両端に寄せておき、その後、時間をかけて徐々に撤去を進めていったのです。このとき問題になったのが、公共地である道路に隣接する私有地にある瓦礫の撤去です。
道路上にある瓦礫は管理者である市町村長の判断で撤去することができますが、私有地は土地の所有者の許可がないと原則として撤去できないためです。災害による大きな混乱のため、土地所有者の許可を取ることは難しく、撤去は進みませんでした。しかし、道路に隣接した土地に大量に瓦礫が積みあがった状態を放置したままでは、危険で道路交通を完全に回復させることが難しくなります。
このときは、行政の判断で災害時における特例として、土地所有者の許可を得ずに私有地の瓦礫を撤去することが認められて、ようやく瓦礫撤去がスムーズに進むようになった経緯があります。
行政の主導による工事中止命令が有効
大規模災害が発生すると、燃料や資材、作業員、重機などの調達が難しくなり、災害前に請け負っていた工事の継続が困難になり、大幅な納期遅れの発生などが予想されます。これは、やむを得ないことではありますが、契約内容によってはペナルティが発生しかねず、建設業者にとっては死活問題になってきます。
このようなケースでは、公共工事であれば、発注元の自治体などから、工事の一時中止命令を出してもらうことが有効です。また、民間企業からの発注案件であっても、国交省などからの要請に発注元企業が応える形で工事の一時中止命令が出されることもあるため、必要であれば、建設業者の協会等を通じて、国交省に働きかけることが有効です。
全国規模のゼネコンが持つ災害対応経験を生かす
大規模災害の対応では、過去に災害対応の経験があるかどうかで、対応力に大きな差が出るといわれています。全国規模のゼネコンには、日本各地で過去に発生した大規模災害に対応した経験を持つ社員が多く存在しているため、この知識や経験を生かすことが重要になります。
地域の建設業者とゼネコンとがうまく作業分担をし、場合によっては地元建設業者が行う災害復旧現場に、知識と経験を有するゼネコン社員を派遣してもらうなどの協力体制を築くことが重要です。
「災害と建設業」はこちら↓
(1)災害発生直後の対応
(2)災害復興最初期の対応
(3)災害復興初期の対応
(4)災害復興中期の対応
(5)災害復興後期の対応
(6)災害復興対応のまとめ
「関連記事①-地方活性化と建設業」はこちら↓
(1)建設業の果たしてきた役割と現状
(2)人材移動の功罪
(3)経営の多角化がカギを握る
(4)経営多角化の事例