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災害と建設業(6)〜災害復興対応のまとめ〜

これまで5回にわたって、災害と建設業について考えて来ました。最終回は、これまで考えてきたことを振り返りながら、災害復興に対して建設業界はどう取り組むべきかを考えます。

災害と建設業(6)〜災害復興対応のまとめ〜

安全面の配慮が最重要事項


災害復興の最初期では、人命救助の支援が建設業者に要求されますが、災害が終結していない時期に行う作業には大変な危険が伴います。現場では、被災者の家族などから作業の続行を強く望まれるようなケースもあるでしょうが、二次災害の発生はなんとしても避けなければいけません。経営者や現場監督者が作業中止や撤退の決断を下すことが求められます。

復興初期から中期では土砂や瓦礫の撤去が主要な作業となります。計画的に行われる造成や建物の解体と異なり、災害現場における土砂や瓦礫の撤去では、通常と異なる状況が多分にあります。作業は決して急がず、慌てず、慎重に進めることが必要です。

復興後期では、通常と同じ土木や建築の作業が増えてきます。しかし、災害特需という特殊な状況下では、安全機材の不足や、経験不足の作業員などが従事することで、普段よりも事故が起こりやすい状況になります。この段階でも、慎重すぎるほどに作業を進めることが重要です。

資金繰りの備えが必要不可欠


大規模災害の発生は、様々な面から建設業界に影響を与えますが、特に資金面への影響は深刻です。

例えば、被災前に受注していた工事の中断や発注者の被災による支払いの遅れにより、見込んでいた資金が得られなくなる恐れがあります。建設業者自身が被災により重機や資材を失うことも考えられます。また、資材の高騰により、建設費用が増加することもあるでしょう。完成前の建物が被災により失われた場合は、それまでの建築費用と再建築のための費用が2重に発生し、支払い者の支払い能力を超えてしまう恐れがあります。

このように、災害発生後は、資金面での不安材料が数多く存在します。ただ、プラス材料として、復興が本格化すれば復興特需が見込めるという希望があります。つまり、復興特需による収入が得られるまでの間に資金がショートして倒産してしまうことがないようにすることが重要です。

その方策として、行政が行う無利子の融資や、全額保証の活用、ファクタリングによる資金調達などが有効になります。日頃からこうした資金調達の方法の情報を集めておき、いざというときに備えておくことが重要です。

被災者雇用に備えておく


大規模災害では、多くの人が職を失います。建設業は、災害後に最も仕事が増加する職種ですから、被災者を雇用することは建設業に課せられた使命ともいえる重要な案件です。

一方で、災害による混乱や資金繰りに苦労する中で、未経験者や高齢者と雇い入れることは、建設業者にとって大きな負担になることも事実です。やはり日頃から、作業のマニュアルを整備しておくことや、指導体制を構築しておくことが必要とされます。

未経験者や高齢者を雇い入れる体制を作り上げることは、大規模災害発生時だけに役立つことではありません。高齢化が進む日本の社会では、近い将来必ず深刻な人材不足におちいることが予測されています。そのとき、未経験者や高齢者を雇うことができれば、建設業者にとって大きなプラスになります。

災害復興への対応が建設業のイメージを変える


建設業は「きつい、きたない、きけん」の3K職場というイメージがあります。また、汚職などのダーティーなイメージも払拭できていないのが現状です。

しかし、災害復旧現場で途方に暮れる被災者たちの前で、必死に復興作業にあたる建設業者の作業員の姿が、被災者たちに復興に向けた大きな力を与えているのも紛れもない事実です。また、作業員自身も、市民たちからの期待や感謝を受けて働くことで、自分の仕事に誇りを持つことができます。

また、復興による街づくりは、最新の技術などを駆使して街づくりを行う経験を詰める大きなチャンスでもあります。復興特需のような一時的な好景気に期待するのではなく、建設業の将来を変えるチャンスととらえることが肝要だといえるでしょう。

「災害と建設業」はこちら↓
(1)災害発生直後の対応
(2)災害復興最初期の対応
(3)災害復興初期の対応
(4)災害復興中期の対応
(5)災害復興後期の対応
(6)災害復興対応のまとめ

「関連記事①-地方活性化と建設業」はこちら↓
(1)建設業の果たしてきた役割と現状
(2)人材移動の功罪
(3)経営の多角化がカギを握る
(4)経営多角化の事例

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