自然エネルギー活用建築とは(1)~環境配慮型の新技術~
近年注目されている建築技術に、自然エネルギー活用建築があります。自然エネルギーの活用と聞くと、まず思い浮かべるのは、太陽光発電や風力発電、地熱発電といった、いわゆる再生可能エネルギーによる発電ではないでしょうか。
しかし、自然エネルギー活用建築は、単なる発電技術に留まらず、さらに一歩進んだ先進的な考え方を元にした技術です。自然エネルギーを発電以外に利用する技術にはどのようなものがあるのか、歴史のある技術から最新の事例まで紹介します。
太陽光発電や風力発電なども自然エネルギーを活用する技術の1つですが、自然エネルギー活用建築といった場合は、自然エネルギーを活用する装置という意味を超えて、建築設計の工夫や、使用する部材の技術革新によって効率的に自然エネルギーを活用する方法のこを指します。いわば、建築物全体が自然エネルギーを活用する大きな装置になっているわけです。
建築物全体で自然エネルギーを利用するシステム
太陽光発電や風力発電などの発電装置も自然エネルギーを活用する技術の1つですが、活用方法を発電に絞ってしまうと活用が難しくなったり、活用効率が悪くなる自然エネルギーも存在します。
自然エネルギー活用建築は、自然エネルギーを活用する装置という枠を超えて、建築設計の工夫や、使用する部材の技術革新などによって効率的に自然エネルギーを活用する方法のことを指します。いわば、建築物全体が住居やオフィスであると同時に、自然エネルギーを活用する大きな装置になっているわけです。
自然エネルギーを効率的に活用する太陽熱温水器
少なくとも昭和40年代に始まっていたのが太陽熱温水器の技術です。建築技術そのもので自然エネルギーを活用しているわけではないため、自然エネルギー活用建築とはいえませんが、発電よりも効率的に太陽の熱エネルギーを利用できる考え方は、現代の自然エネルギー活用建築の基礎となる技術ですので最初に紹介します。
太陽熱温水器は、太陽光に含まれる赤外線が発する熱で水を温め、風呂などの給湯に利用するシステムで、エネルギー変換効率は40~50%にも達し、自然エネルギーを利用するシステムの中では最も高効率といわれています。太陽光発電のエネルギー変換効率が2016年現在で20%に届くかどうかといったレベルであることを考えると、太陽熱温水器がいかに効率的にエネルギーを利用しているのかがわかります。
太陽熱温水器のエネルギー変換効率が高い理由は、太陽から得られる熱エネルギーをそのまま水に移動して熱エネルギーとして蓄えているため、変換のロスが少ないためです。電気などの別のエネルギーに変換すると、どうしてもロスが発生してしまうのです。
現代の自然エネルギー活用建築では、さまざまなエネルギーが活用されていますが、基本的に太陽熱温水器と同様に、元のエネルギーをそのままの形で利用する方法がとられています。
次に、実際に施工されている自然エネルギー活用建築技術の例を紹介していきます。
太陽エネルギーを利用する暖房システム
冬場に外壁が受ける太陽エネルギーを集熱し、住宅内の暖房に利用するシステムです。集熱したエネルギーは床下の蓄熱層に蓄えることができるため、夜間や雨の日などでも暖房の利用が可能です。
暖房器具のように強力な効果が得られるわけではありませんが、ランニングコストが不要で一定の暖房効果が得られます。暖かさがが足りないときに暖房器具を併用したとしても、省エネ効果が望めます。また、部屋の空気を自然に温めることができるため、燃焼系の暖房器具のように空気が汚れたり、過剰に乾燥することがありません。さらに、部屋全体を温風で温めるため、結露を防ぐ効果があります。
地熱エネルギーを利用する省エネ換気システム
年間を通して17度前後で安定している地中の熱エネルギーを利用して、夏場の外気を冷却するシステムです。クーラーのような大幅な冷却効果はありませんが、ランニングコストが不要で室温を2~3度程度下げる効果が望めます。クーラーを併用する場合でも、室温が下がりやすいため省エネ効果が期待できます。また、床下を常に風が流れるため、建物の足回りを保護する効果も期待できるようです。
「自然エネルギー活用建築とは」はこちら↓
(1)パッシブデザインの考え方
(2)環境配慮型の新技術
「関連記事①-エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちら↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現
「関連記事②-環境に配慮した建設」はこちら↓
(1)建設がもたらした環境破壊
(2)見直される木材建築
(3)新時代の土木工事
(4)清浄な土壌を取り戻す取り組み
(5)超耐久建築は実現するか
(6)都会のオアシス 屋上緑化