エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは(3)〜企業向けのBEMSとFEMS〜
エネルギーマネジメントシステムについて考えるシリーズ、第3回はBEMSとFEMSについて紹介します。家庭用のシステムだったHEMSとはどのような違いがあるのでしょうか。
BEMS(Building Energy Management System)とは
BEMSのBはビルを意味しています。具体的にはオフィスや商業施設などを対象としたエネルギー管理システムです。
家庭向けのHEMSでは、電気の使用量を可視化して省エネに役立てるということが、最も大きなシステムの目的でした。BEMSにも同じ役割がありますが、家庭向けとは異なる特徴もあります。
BEMSならではの機能
大きなビルなどでは、BEMS以前にもBAS(Building Automation System)と呼ばれるシステムの導入が進んでいました。BASは建物内の照明や空調、OA機器などの設備をネットワークを通して集中管理するシステムです。
BEMSでは、このBASも管理下において、省エネルギーの観点から建物内のエネルギーを消費する機器をコントロールする機能を持っています。HEMSでも、家電を管理する機能は有していますが、現時点ではHEMSで管理するための機能を有している家電の普及率が低いため、実現には相応の時間が必要です。BEMSでは、すでに導入されているBASを管理下におくことで、すぐにでもエネルギーの効率的な管理が行えるのです。
また、HEMSと同様に蓄電池や太陽光発電と連動して、電力消費のピークカットやピークシフトを行う機能にも大きな期待が寄せられています。ビルの電力契約は、電気の最大使用量によって基本契約の金額が大きく変わってくるため、最大消費量を抑えることは、省エネだけでなく、企業の経費削減にも大きく貢献する可能性があります。
工場向けのFEMSの特徴
FEMSのFはFactory(工場)を表しています。機能としてはBEMSとほぼ同じですが、FEMSならではの特徴もいくつかあります。
まず、工場はビルに比べると建物(天井)の面積が非常に広いため、太陽光発電を導入した場合の効果が大きくなります。また、広い敷地に風力発電を設置したり、海岸に隣接する向上などでは、波力発電などの導入も期待できます。
このように、再生可能エネルギーとの相性がいい工場では、電気の使用状況のほかに、発電状況も一元管理できるFEMSの持つ役割も大きくなります。
BEMS・FEMS普及の壁
BEMSやFEMSは、HEMSよりもさらに大きな省エネ効果が期待できますが、システムが高度で大がかりになるため、初期投資コストが高くなることが普及の妨げになる恐れがあります。導入すれば、一定以上の省エネと経費削減効果が期待できるのですが、投資コストの回収に時間がかかるため、導入に二の足を踏む企業が多いのです。
そのため、政府では、EMSを導入する企業を対象とする補助金事業を行っています。現在行われているものとしては、経済産業省の「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」があります。各地で説明会なども開催されているので、これらエネルギーマネジメントシステムの導入を検討している企業にとっては調べてみる価値があるといえるでしょう。
「エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちら↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現
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(2)見直される木材建築
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