環境に配慮した建設(2)〜見直される木材建築〜
環境に配慮した建設技術について考えるシリーズ。第1回は、これまで建設がもたらした環境破壊について調べました。第2回からは、過去の環境破壊を教訓にし、環境に配慮した新しい建設技術について調べていきます。
木材は再生可能エネルギー
建設がもたらした環境破壊の最も古く、深刻な影響をもたらしたものとして、森林破壊がありました。
木そのものを使う木材建築や、木材を薪として消費するレンガ建築が大量の木を消費したことが原因です。その後、建築材料の主流がコンクリートに移ったことで、木材の大量消費に歯止めがかかりましたが、現在の建設業界では、再び木材を利用した建築技術が注目されています。これはなぜでしょうか。
建設のために木を無計画に伐採することは、森林を破壊し、深刻な環境破壊をもたらすことは確かです。しかし、計画的に伐採し、植林して育てることで森林破壊を防ぐことができます。この循環を保ち続けることで木材は半永久的に使える再生可能エネルギーとなるのです。
さらに、植林して山を管理することは自然環境にとってプラスに働きます。木を適度に間引いて適切な数を育てることで、山の保水力が保たれますし、数が増えすぎないことで立ち枯れを防ぎ、土砂崩れなどの予防にもなるためです。
木材建築がもたらす環境への効果
建築に木材を用いる利点は、再生可能エネルギーであることだけではありません。自然が生み出す木は、木材に加工されたあとも、湿気の吸収や排出を行うため、室内環境を良くする効果が生まれます。
無機質なコンクリートに比べて、木材を使った建築は人間の心に安らぎを与えてくれます。人間工学の研究が進み、木材の持つ安らぎの効果は、気分の問題だけでなく、子供の教育への好影響や、仕事の生産性の向上、病気治療への好影響などの具体的な効果をもたらすこともわかってきました。
また、日本には古来から木材を用いた建築が行われてきた伝統があります。現代の建築物にも木材を積極的に用いることで、日本の文化を継承することができ、魅力的な街づくりにも役立ちます。ひいては、外国人観光客の増加なども見込めることでしょう。
耐火木材の開発で幅広い利用がが可能に
伝統的な木材建築の最大の弱点が、火災に弱いということでした。古来、歴史のある城や神社仏閣などが焼失した例は枚挙にいとまがありません。そのため、建設業界では日本の杉などを建築に用いたくても、防火基準を満たせないために使用できないというジレンマがありました。
木材建築で防火基準を満たすためには、木材の表面を石膏ボードなどの耐火素材で覆う手法がありましたが、この方法では、木材の質感を生かせないため、木材が持つ安らぎや癒しの効果を発揮できないという大きな問題があります。このため、ビルや公共施設など、高いレベルの防火性能が求められる建築物に木材が用いられることは少なかったのです。
しかし、近年は多層構造の集成材で、表面の質感を残したまま耐火基準を満たす構造用木材が開発されました。一例としては、三層構造で中心部は純粋な木材で構造材としての強度を持ち、二層目に難燃性の薬剤を注入した耐火木材を使用、一番外側の三層目には、化粧木材と張って、木の質感を確保したものなどがあります。こうした新技術により、木材の用途は大きな広がりを見せています。
ハイブリット工法で耐震性もクリア
木材建築のもう一つの弱点が、鉄筋コンクリートに比べて強度に劣るということです。そのため、学校や病院など、木材の持つ安らぎを生かせる施設の建築に木材を用いたくても、耐震性などの問題で利用できないという問題がありました。
無理に木材を使うなら、コンクリートの壁の表面を木材の化粧板で覆うという手法がありますが、費用がかさむため現実的とはいえません。
この問題を解決するため、最新の建設技術では、基礎部分や建物下部の主要な構造を鉄筋コンクリートで造り、屋根や2階部分など、高い強度が必要とされない部分を木材建築とするハイブリット工法が開発されています。
例えば病院であれば、手術や検査などを行う下階部分を鉄筋コンクリート造りとし、上階の病室は木造として、木の持つ癒し効果を生かす建築などが行われています。
「環境に配慮した建設」はこちら↓
(1)建設がもたらした環境破壊
(2)見直される木材建築
(3)新時代の土木工事
(4)清浄な土壌を取り戻す取り組み
(5)超耐久建築は実現するか
(6)都会のオアシス 屋上緑化
「関連記事①-エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちら↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現
「関連記事②-自然エネルギー活用建築とは」はこちら↓
(1)パッシブデザインの考え方
(2)環境配慮型の新技術