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自然エネルギー活用建築とは(2)~パッシブデザインの考え方~

自然エネルギー活用建築を紹介するシリーズ、第2回は前回から引き続き、実際に施行されいてる自然エネルギー活用建築の例や特徴、そしてパッシブデザインの考え方を紹介します。

建設業界の人手不足の現状と対策(4)~新たな発想で人手不足を解消する~

自然エネ活用住宅普及協会が提唱する建築法


一般社団法人自然エネ活用住宅普及協会は、自然エネルギー活用住宅の技術研究を行い、その情報を協会加盟工務店等に供給することで、自然エネルギー活用住宅の普及を目指している団体です。協会が提唱している主な建築方法を紹介します。

◇外張り断熱
建物全体を覆う断熱工法により、外気温の変化の影響を受けにくくしています。基礎部分も断熱していることも大きな特徴です。

◇開閉式の通気層
外張りの断熱材と部屋の壁の間に空気を通す通気層が設けられています。夏場はこの通気層に外気温よりも温度の低い床下の空気を通すことで、壁が温まることを防ぎます。寒い時期には通気層を閉じることで、外気の侵入を防ぎ、暖かい部屋の空気を逃がしません。

こちらの自然エネルギー活用建築の特徴は、完全に建築の構造だけで地熱や風の自然エネルギーを利用していることにあるといえます。昔の日本家屋は風通しがよく、夏場も涼しかったといわれますが、気密性の高さが要求される現代の住宅に日本家屋の技術をうまく取り入れつつ、冬場の断熱性も確保しています。

太陽熱などを利用する方法に比べると効果は小さいかもしれませんが、装置という概念がないため、故障の心配は限りなく少ないといえそうです。

自然エネルギー活用を実現するパッシブデザインの考え方


パッシブデザインとは、特別な機械などを使用せずに、建物の構造や材料などの工夫によって光や熱、空気の流れなどをコントロールして快適な室内環境を実現するための建築手法のこと。

現代社会では、照明や冷暖房器具、空気清浄器や換気装置など、エネルギーを消費する装置を使うことで快適な室内環境に近づけていましたが、パッシブデザインでは建物の構造や材料などの工夫によって光や熱、空気の流れなどをコントロールして快適な室内環境を実現することで、大幅な省エネを目指します。

また、人工的な室内環境から、自然に近い環境にすることで、快適さを増す狙いもあります。

例えば、夏場の快適さを得るための工夫としては、天井や壁、窓からの日射熱の侵入を出来る限り防ぐことが有効になり、さらに風が通り抜けやすい窓の配置にすること、家の周りに樹木などを配置して空気を冷やすことなども考えられます。冬場なら、断熱性や気密性を高めつつ、太陽光の温かさを取り入れる設計が有効です。

こうした工夫はプロの建築家が行うものだけとは限らず、例えば夏場に窓の外にすだれをかけて日差しを遮断しつつ風を通す、といったことも立派なパッシブデザインの1つといえるでしょう。

一方で、夏場の涼しさと冬場の温かさを両立させる設計や、冬場に暖房効率を高めるために気密性を確保しつつ、快適な空気が実現するために暖かさを損なわない程度の通気性を確保する、というような高度なバランスが要求されるレベルになると、パッシブデザインの考え方を熟知した経験豊富な建築家などの領域になってきます。

自然エネルギー活用建築のコストパフォーマンスは


最新の建築技術として自然エネルギー活用建築を紹介してきましたが、最後にコストパフォーマンスについて考えてみます。

高度なパッシブデザインを追求した自然エネルギー活用住宅を建てるには、一般的でない工法や建築材料などが必要になるほか、1軒ごとに詳しい環境調査を元にした慎重な設計も必要になります。その結果、設計と建築を合わせたコストは、既存の工法で建てる場合に比べて高コストになることは避けられません。

その一方で、得られるパフォーマンスについては、冷暖房装置などが完全に不要になるというほどではないため、パフォーマンスが悪いと感じる人もいることでしょう。ただ、現状の冷暖房などで得られる室内環境に不満を持っている人が多いのも事実で、そうした人には既存工法で建てられた住宅よりもコストパフォーマンスが良いと感じる可能性は十分にあるといえます。

「自然エネルギー活用建築とは」はこちら↓
(1)パッシブデザインの考え方
(2)環境配慮型の新技術

「関連記事①-エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちら↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現

「関連記事②-環境に配慮した建設」はこちら↓
(1)建設がもたらした環境破壊
(2)見直される木材建築
(3)新時代の土木工事
(4)清浄な土壌を取り戻す取り組み
(5)超耐久建築は実現するか
(6)都会のオアシス 屋上緑化

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