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環境に配慮した建設(6)〜都会のオアシス 屋上緑化〜

環境に配慮した建設技術について考えるシリーズ。最終回の第6回は、コンクリートジャングルをオアシスに変える屋上緑化の現状について紹介します。


環境に配慮した建設(6)〜都会のオアシス 屋上緑化〜

屋上の利用法として注目される屋上緑化


これまでビルやマンションの屋上は、水道の貯水タンクを設置するほかは特に利用方法がなく、広い面積が何にも使われずにいることがほとんどでした。近年は太陽光発電に利用されることも多くなってきましたが、高層建築では建物の容積に比べて屋上の面積の比率が低いため、太陽光発電を設置しても得られるメリットが少なく、屋上の効果的な利用法とはいえませんでした。

太陽光発電に変わって注目されているのが、屋上に土を敷いて農園にしたり、芝生などを敷き詰めるなど、屋上緑化と呼ばれる利用法です。

屋上緑化は夏涼しく、冬暖かい


屋上緑化の代表的なものとしては、菜園にして収穫体験などの場にするというものがあります。大都会で自然に触れ合うことができるレクリエーションの場として素晴らしいものですが、屋上緑化のメリットは単なるレクリエーション施設としてだけに留まりません。

最も直接的な効果としては、日差しを遮ることにより建物を冷却する効果があります。マンションの最上階は日差しがコンクリートを温めるため、中層階に比べて暑いという話は有名ですが、緑化することでコンクリートが暖まることが防げますし、土の水分が蒸発することで気化熱の仕組みで冷却する効果も望めます。さらに冬場にはコンクリートから熱が放出されることを防ぐため、断熱効果も期待できるという意見もあります。

また、太陽光発電では装置の熱があまりに上がると発電効率が落ちてしまいます。そのため、太陽光発電に屋上緑化を組み合わせると、屋上の気温を下げて、発電効率を上げる効果が期待できるといわれています。

アメリカでは商業としての農園利用も行われている


日本では原則として株式会社が農業を行うことができないため、商業目的の屋上農園などはほとんど見られませんが、ニューヨークではマンハッタンのビルの上に作られた屋上農園に本格的なビニールハウスが作られて、商業的な農産物の生産が行われています。

地上の農園に比べると、面積が狭いため生産効率がいいとはいえず、設備費もかさみます。しかし、都市部で生産するため輸送費や輸送時間がかからず、朝採れの野菜をランチで提供するといったことも行われています。こうしたメリットを生かすことで、新しい形の都市型農業として成り立っているようです。

屋上緑化の注意点


屋上緑化は大きなビルだけではなく、中・小規模のビルやマンション、個人の住宅などでも行われています。ただ、屋上に土を入れるにはいくつかの注意点があります。

最も中が必要なのは重要です。例えば10センチの厚さで土を敷き詰めると、平米あたりの重量はおよそ140Kgにもなります。一般的な鉄筋コンクリート造りの建物では、耐震性などを保つために平米あたり60Kgに抑える必要があるため、普通に土を敷き詰めるというわけにはいきません。建物の構造を強化したり、軽量化された土を使うなどの工夫が必要です。

また、土を敷くと常に湿った状態になるため、防水工事も必須です。さらに、植物の根が防水層を突き破らないように、防根シートを敷き詰める必要があります。いわゆるDIYで行うにはリスクが高いため、専門知識を持った業者と相談しながら施工したほうがいいでしょう。

建設業が環境保護の牽引役になる時代へ


高度経済成長時代、木を切り倒し、川を塞ぎ、土をコンクリートで固めてきた建設業は環境破壊の代名詞的な存在でした。しかし、現代の建設業界は、自然環境を守ることの重要性を深く理解しました。その結果、環境を守る建設や自然と調和する建設を生み出しています。

また、近年は環境に配慮するだけに留まらず、環境を再生する建設や、人と自然が共生できる新たな都市モデルを構築するところまで進んでいます。将来的には、建設業界が環境破壊の代名詞から、環境保護や環境再生の代名詞となることが期待されているといえるでしょう。

「環境に配慮した建設」はこちら↓
(1)建設がもたらした環境破壊
(2)見直される木材建築
(3)新時代の土木工事
(4)清浄な土壌を取り戻す取り組み
(5)超耐久建築は実現するか
(6)都会のオアシス 屋上緑化

「関連記事①-エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちら↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現

「関連記事②-自然エネルギー活用建築とは」はこちら↓
(1)パッシブデザインの考え方
(2)環境配慮型の新技術

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