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人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態(1)~外国人技能実習生ニーズの現状~

建設業では高齢化や若手入職者の減少が進み、人手不足が深刻化しております。その中で、業界ではベトナムやカンボジアなどといった開発途上国からの外国人技能実習生を建設現場で活用する動きが徐々に出てきており注目されてきています。建設業における外国人技能実習生活用の実態をシリーズとしてご紹介していきたいと思います。

人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態(1)~外国人技能実習生ニーズの現状~

建設業における外国人技能実習生活用の背景


下図1は建設業における就業者数と、全産業に占める建設業就業者数の割合を示しています。また、建設業における就業者数は1997年のピークであった685(万人)から2016年現在の492万人まで、20年間で約28%減と大きく減少しています。また、建設業就業者数が全産業における就業者数に占める割合を見てみると1997年に10.4%であったのが2016年では7.6%と大きく減っているのです。つまり、若い働き手にとって、建設業は他産業と比較して就労先として選択されないケースが年々増加しているのが現状なのです。


建設業就業者数(万人)と全産業に占める割合(%)


実際に、下図2における建設業における年齢別の就業者数割合を見てもわかるように、1997年にはほとんど同じあった29歳以下の就業者が占める割合と55歳以上の就業者が占める割合が、2016年現在では11.4%と33.9%と約3倍の開きとなり、業界における高齢化が加速していることが読み取れます。培われてきたノウハウや技術を継承する後継者としての若者世代が減っていることも業界における人手不足に影響を与えているのです。


建設業就業者数の年齢別割合(%)


このように、建設業で就業者数そのものが減少しているだけでなく、就業者の高齢化が加速している現状を背景として、求人を出してもなかなか人が募集に集まらないとか、一部では、働く側の希望する給与等の条件が合っていないなど、建設現場における人手不足を解消する有効な手段の一つとして、国外からの労働力、つまり外国人技能実習生の活用が注目されているのであります。

外国人技能実習制度とは!?


皆さんは「外国人技能実習制度」という言葉を耳にしたことはありますでしょか?開発途上国には、経済発展・産業振興の担い手となる人材の育成を行うために、先進国の進んだ技能・技術・知識を習得させたいというニーズがあります。日本では、このニーズに応えるため、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を習得してもらう「外国人技能実習制度」という仕組みがあるのです。

具体的に外国人技能実習制度とはどのようなものかと言いますと、最長3年の期間において、実習生が雇用関係の下、日本の産業・職業上の技能等の習得・習熟をするものです。(一部、期間が3年以上の職種もあります。)実習生は、一年ごとに技能習得の成果が一定水準以上に達していると認められた場合に限り翌年の技能実習が認められるものです。

外国人技能実習生の特徴としては「実習生自身の職業生活向上や産業・企業の発展、母国でノウハウを発揮し、品質管理、労働慣行、コスト意識等の事業活動の改善や生産向上に貢献すること」を目標にしているので、一般的に仕事に取り組む姿勢も真面目で真剣であることが挙げられます。また、外国人技能実習生が日本で採用されている間は、実習生を採用した会社が円滑な業務活動を行えるように「送り出し機関」と呼ばれる実習生母国の職業訓練機関日本駐在所と、「組合」と言われる日本における実習生の受け入れ監理団体が協力しながらサポートしています。


ベトナムにおける海外技能実習生


(ベトナムにおける技能実習生)

建設業における外国人技能実習制度の対象職種は!?


この外国人技能実習制度、建設関係では建設現場で必要となる「さく井」「建築板金」「冷凍空気調和機器施工」「建具製作」「建築大工」「型枠施工」「鉄筋施工」「コンクリート圧送施工」「とび」「石材施工」「タイル張り」「かわらぶき」「左官」「配管」「熱絶縁施工」「内装仕上げ施工」「サッシ施工」「防水施工」「ウェルポイント施工」「表装」「建設機械施工」「塗装」など多くの職種が対象となっており、現場における様々なシーンで技能実習生の活用が可能となっております。

なお、これら外国人技能実習制度が対象とする職種の詳細(対象作業等)については「公益財団法人 国際研修協力機構-企業部-建設班」による「建設関係「技能実習2号」移行対象職種」に細かく記載されておりますのでここで紹介いたします。

今後ますます期待される外国人技能実習生の建設現場における活用


人手不足解消の解決策として有効な手段が見つからない建設業、外国人技能実習制度を活用している建設会社も徐々に出始めてきており、今後、この制度を活用する建設業関連企業がますます増えていくであろうと考えられます。

また、日本企業が外国人技能実習制度を利用することは、実習生が帰国した後に習得した技能やノウハウを通して能力を発揮し、母国における事業活動の改善や生産向上に貢献することに役立つことになります。それだけでなく、実習生を受け入れた企業にとっても、外国企業との関係強化(海外進出時の足掛かり)、経営の国際化などに繋がっていきます。

このように、外国人技能実習生を召致して活用するということは、単に労働者不足を補うだけでなく、発展途上国の人材に技能を習得してもらうという国際貢献にもなり、将来的にノウハウや技術を継承した人材を活用し、市場の急成長が見込まれる海外展開への足掛かりにもなるのではないでしょうか?

「人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット

「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に

「関連記事-建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する

「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測

著者紹介
渡辺法禎
3-2HOA BINH株式会社 所長


1969年 山形生まれ。
某上場企業内にて新規部門・新規事業・子会社立ち上げに参画した後退社。
国内でシステム開発を中心に多くの案件を手掛けると同時に、中国やベトナムでオフショアを活用したシステム開発を実施する。建築確認審査業務に関して設計士~消防庁、行政までをIT化するプロジェクトにも参画。ベトナムにおける活動が増える中、ベトナムで外国人技能実習制度に係り、現在はベトナムにおける技能実習生育成機関で人材育成や日本国内における技能実習生採用の支援・サポートを実施。
渡辺法禎詳細ページへ

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