働き方改革が建設業に与える影響(1)~2018年現在の状況を整理~
【働き方改革が建設業に与える影響①】
政府は「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」とし、2017年3月末に「働き方改革実行計画」を策定しました。それから早くも1年が経ちますが、「働き方改革」による建設業への影響を考えるにあたり、まず今回は建設業における「働き方改革」の現状について概要を整理していきます。
建設業における働き方改革とは!?
現在の建設業は時間外労働に関する労働基準法第36条、いわゆる(サブロク)36協定の適用対象から外れています。これは、建設現場では天候などの自然条件により工程が影響を受けやすい為です。しかしながら、今後は「働き方改革」による改正労働基準法の施行から5年間の猶予期間を置いた上で、建設業に対して他産業と同様に罰則付き上限規制の一般則が適用されることとなります。
具体的には、2018年に関連法案が成立すると、そこから概ね1年程度を経て関連法が施行されるので、建設業では2024年より罰則付き上限規制の一般則が適用されることになるのです。
現在、建設業における就業者の実労働時間は、全産業の平均よりも年間で約300時間程度多く、これは、他産業では週休二日である休日が建設現場で普及していないことが影響しています。その為、建設業における「働き方改革」は現場労働者も含めた「週休二日」の実現を目的として、例えば、現在4週4閉所の建設現場を4週8閉所とする取り組みや、建設現場において生産性を向上させる取り組みが業界として推進されています。
政府の建設業における「働き方改革」への取り組み!
政府は2017年3月末に「働き方改革実行計画」を策定した後、同年8月に公共・民間を含め、全ての建設工事において働き方改革に向けた生産性向上や適正な工期設定等が行われることを目的として「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定しました。
このガイドラインは、受注者と発注者が相互の理解と協力の下に取り組むべき事項を指針として取りまとめたもので、例えば、下請業者との契約においても長時間労働の是正や週休2日の確保等を考慮して適正な工期を設定すること、また、建設生産プロセス全体で生産性を向上させることなどについて示されています。
既に、関係各省庁では、このガイドラインに基づいた工事の実施に向け、所管分野における発注者団体へ働きかけを行うなどの具体的な取組みが始まっています。
建設業団体による「働き方改革」への取り組み!
一方、建設業団体でも政府の「働き方改革実行計画」ならびに「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」に応える形で、例えば、全建(全国建設業協会)は2017年9月末に「働き方改革行動憲章」を策定、日建連(日本建設業連合会)は同年12月に「週休二日実現行動計画」を策定しました。
また、2017年9月に経団連(日本経済団体連合会)により「長時間労働につながる商慣行の是正に向けた共同宣言」が公表されましたが、日建連や全建もこれに参加しております。
つまり、政府、関係各省庁をはじめとして、経済界、建設業団体が一丸となって「働き方改革」を推進しているのが現状であり、その為、2017年3月末に「働き方改革実行計画」が策定されてからわずか1年間で驚くほどその動きは加速しています。例えば、経団連による呼びかけで「働き方改革アクションプラン」を策定した企業一覧からもそのスピードを読み取ることができます。
なお、この一覧では、淺沼組、大林組、奥村組、鹿島建設、熊谷組、清水建設、大成建設、竹中工務店、東洋建設、飛島建設、西松建設、長谷工コーポレーション、前田建設工業、三井住友建設など、建設大手5社を含む主要建設会社14社(50音順、2018年6月時点)が名を連ねています。
そして、各社の「働き方改革アクションプラン」では、①長時間労働の是正、②年休の取得促進、③柔軟な働き方の促進、以上3つの観点より「KPI」と「行動計画」が策定され、その内容について具体的に記載されております。
このように、今回のコラムでは建設業における「働き方改革」について2018年現在の状況を概要として整理しました。次回は「働き方改革」を推進することにより、具体的に工期や建設費などへどのような影響を与えるのかについて紹介していきます。
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「働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)週休二日へ向けた具体的な取り組み
「関連記事-東京オリンピックが建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)現在(2016年)までの状況
(2)オリンピック開催までの影響予測
(3)オリンピック開催後はどうなるか
「関連記事-建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する
「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測
「関連記事-人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット