人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態(3)~採用のメリットとデメリット~

建設業では高齢化や若手入職者の減少が進み、人手不足が深刻化しております。その中で、業界ではベトナムやカンボジアなどといった開発途上国からの外国人技能実習生を建設現場で活用する動きが徐々に出てきており注目されてきています。前回のコラムでは外国人技能実習生が実際に採用され日本で活動する流れについて解説しましたが、今回は具体的に技能実習生採用のメリット・デメリットについて紹介します。
人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態(3)~採用のメリットとデメリット~

外国人技能実習生採用のメリット


日本では実習生を採用することでどの様な効果が期待できるのかについて十分に認識されていないのが現状です。そこでまずは、外国人技能実習生を採用することで期待される効果についてメリットとして紹介します。

①安定した雇用計画を行える
実習生の採用可能な最大人数は、受け入れ企業の従業員数によって定められています。例えば、従業員数50人以下の企業であれば、毎年3人まで外国人技能実習生を採用することが可能です。また、受け入れ企業は技能実習生を継続的に採用することができるため、この場合ですと1年目に3人、2年目、3年目にそれぞれ3人と3年目以降は最大9人の採用が可能となります。仕事に意欲的な人材を計画的に毎年、最大人数まで採用することができることもあり、安定した雇用計画に繋がります。なお、技能実習生受入れ人数枠については公益財団法人国際研修協力機構(通称:JITCO)が公表しており、こちらのページで確認することができます。

②若い活力ある人材による生産性・効率性の向上
技能実習生の多くは20代からの労働意欲が旺盛な若い人材です。その為、肉体労働が求められることが多い建設現場などにおいては、現場における生産性を向上する為の強力な戦力となります。また、実習生は意欲的に仕事に取り組むため技術の習得も早く、仕事の効率向上にも期待することができます。例えば、このような若い活力ある実習生を継続的に採用することで採用した実習生が翌年採用した新しい実習生に仕事を教えることも可能となり、さらなる生産性や効率性の向上に繋がります。


外国人技能実習生の大半は若くて活力にあふれる20代の人材


(外国人技能実習生の大半は若くて活力にあふれる20代の人材)

③新しい価値観の取り入れや技術伝達による社内活性化のシナジー効果
技能実習生を採用している企業では、彼らが職場に入ることで、異国の文化・慣習といった新しい価値観が社内にも取り入れられ日本人従業員が刺激を受けるだけでなく、実習生との国境を越えたコミュニケーションを通して社内の雰囲気が明るくなることが挙げられます。さらに日本人従業員にとっては「海外に自分達の技術を伝えられる」という意識から、実習生の教育だけでなく自らの仕事に対しての責任感・使命感が向上し、結果として社内が活性化するといったシナジー効果にも期待できるのです。

③採用費等のコストを抑えられる
外国人技能実習制度ということで採用に係る広告費が発生しません。若い人材を継続的に雇うことができ、最長3年で帰国する実習生は昇給等による固定費の上昇が長期的に大きくなることが避けられます。そのため、人件費について安定的・計画的に考えることが可能です。

④国際貢献につながる
採用企業やその従業員にとって、日本の技術を実習生に伝えることで、国際援助の一環を担うことができ、実習生の出身国の発展に繋がります。

⑤海外進出への足掛かり
実習生出身国の多くはアジアの発展途上地域です。技能実習生は実習後にそれぞれの国に帰るので、アジア進出を考えている企業は実習生が進出国での信頼できるコネクションとなり、その国での手助けになります。最近では、送り出し側がアジア進出時の支援を行うケースもあり、進出時に日本で技能を習得した現地の若者を採用することに繋がります。

外国人技能実習生採用のデメリット


国内では外国人技能実習生の活用を検討する企業も徐々に増えてきていますが、まだまだ言葉だけでなく慣習の違いやコミュニケーションに対する不安・心配があると思います。そこで次は、外国人技能実習生を採用にかかわるデメリットについて紹介します。

①同じ実習生を採用できる期間が決まっている
外国人技能実習制度では、実習期間が最長3年と定められているため3年を超えて延期させることができません。また、同じ在留資格で再入国することもできないものとなっています。実習生を採用した企業では、継続的な賃金上昇をして良いから3年以降も居て欲しいなどの要望もあるのですが、現状は最長3年という期間の中で新たな実習生の採用を繰り返し有効に活用いただくものとなっています。

ただし、平成28年11月28日、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)が公布され、今後は技能実習期間が最長5年に延長されることになります。(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の詳細は厚生労働省が公表しておりますこちらを参照

②採用を決定してから来日・配属までに時間がかかる
外国人技能実習生を採用する場合、手続き書類が煩雑で入管の審査に時間を要することもあるため、採用を決定してから配属可能な日にちを当初段階ではっきりさせることができません。両国の手続きチェックが厳正で、入国に向けた申請は状況にもよりますが3か月前後かかるのが一般的です。そして来日後には監理団体の組合において集合講習が1か月行われ、その後受け入れ企業への配属となる為に、採用を決定してから実際に実習生が配属されるまでに時間がかかります。

③初めての受け入れではコミュニケーションで苦労する場合もある
外国人技能実習生を受け入れた際、特に初めての受け入れでは日本語の不慣れ、文化や風習の違いからコミュニケーションの部分で苦労する場合もあります。ただし、組合および送り出し側の日本駐在の担当者が採用企業と実習生をサポートすることで、配属後半年程度までには段々と慣れてくるケースが多いといえるでしょう。

また、翌年以降は彼ら実習生が先輩実習生として後で配属された後輩に指導したりもできます。採用後にコミュニケーションで問題が生じてもそれをしっかりとサポートできる能力が、送り出し側と組合の双方に求められていると言っても良いかもしれません。

外国人技能実習生の採用で最大限の効果を生む為には


外国人技能実習生を採用した際の主要なメリット・デメリットを紹介いたしましたが、実習生の採用を検討する際にはこれらの点をきちんと理解することが必要です。また、日本では実習生を受け入れるときには必ず監理団体の組合と送り出し国の機関が関わりますが、いずれも日本国内および現地国でしっかりと実習生および採用企業のサポートが可能であるかを見極めることも効果的な採用とするために重要になります。

最後に、外国人技能実習生には一定のルールは必要かも知れませんが、同じ人間ですからお互いに協調し合い、それぞれの役割を果たせるように助け合って協力するよう心掛けていくことが大事なのではないでしょうか。日本でも生まれた家や地域が違えば価値観や慣習が違ってきますが、個々にそれが他の地域や社会では違っているということを理解して共存しています。

外国人技能実習生を採用する際は、私たち日本人は彼らの価値観や慣習には否定的にならず、良い形で仲間として受け入れて理解する気持ちが大切であり、このような気持ちが実習生の活動におけるモチベーションの向上に繋がり、結果として効果の高い採用になるのであると考えます。

「人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちら↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット

「関連記事①-建設業界の人手不足の現状と対策」はこちら↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する

「関連記事②-建設業の社会保険未加入問題」はこちら↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測


著者紹介
渡辺法禎
3-2HOA BINH株式会社 所長


1969年 山形生まれ。
某上場企業内にて新規部門・新規事業・子会社立ち上げに参画した後退社。
国内でシステム開発を中心に多くの案件を手掛けると同時に、中国やベトナムでオフショアを活用したシステム開発を実施する。建築確認審査業務に関して設計士~消防庁、行政までをIT化するプロジェクトにも参画。ベトナムにおける活動が増える中、ベトナムで外国人技能実習制度に係り、現在はベトナムにおける技能実習生育成機関で人材育成や日本国内における技能実習生採用の支援・サポートを実施。
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