アーキブックコスト

建設業界の人手不足の現状と対策(1)~現在までの状況~

現在、建設業界は深刻な人手不足にあえいでいるといわれています。ここ数年、オフィスビルやマンションなどの建築需要が高まっていますが、極端に増加しているというほどでもないにも関わらず、ビルを建てたくても業者が見つからないといった現象が発生するほど事態は深刻化しているようです。

その根本に少子化の影響があることは否めませんが、ほかの業界と比べても建設業が突出して人手不足に悩まされているのには、何か特有の理由があると思われます。そこで、建設業界が人手不足に陥っている理由とその対策を考えていきます。

建設業界の人手不足の現状と対策(1)~現在までの状況~

データが示す人手不足の状況


国土交通省が国税調査を元に調査したデータによれば、建設関連業に従事する労働者の数は1995年のピーク時に650万人を超えていたのに対して、2010年には450万人を切っており、大幅に減少していることを示しています。

一方で同じく国土交通省が発表した建設労働需給調査結果によれば、建設技能労働者の過不足率は季節調整値で2014年の3月に3.4%のピークを迎え、その後は減少に転じて2016年4月現在は0.4%と、急速に回復して、ほぼ需給の均衡がとれた状態になっています。

人手不足に陥った要因と、回復の理由


建設業界の労働者の過不足率は2000年代は概ね過剰の状況で推移してきました。それが不足に転換したのは2011年の春です。これは東日本大震災が発生した時期で、復興特需のために急速に人手不足に陥ったことがわかります。

2014年に回復に転じたのは、復興特需が一段落したこともありますが、国土交通省と農林水産省が決定する工事設計労務単価(公共工事費の積算に用いられる基準値)が、2011年の震災以降、急速に引上げられた結果、労務者の賃金が改善されて、ほかの業種へ流れていた人材が戻ってきたものと考えられます。

需給の均衡が取れていても「人手不足感」は続いている


データ上は2016年現在の人手不足は解消していますが、現場の人手不足感は依然として残っています。人手不足感が続く理由としては、需給のバランスが短期間で上下したことから、

職種別の需給にバラつきが生じていることが挙げられます。職種別の建設労働需給調査結果によれば、鉄筋工(建設)では過剰感が生じているのに対して、型わく工や左官、とび工などにおいては不足感が増しています。特定職種の労務者が不足すれば、結局工事を遅らせざるを得ないため、全体として不足感が解消しないわけです。

また、建設業就労者における高齢者の割合が高まっていることも人手不足感や、将来への警戒感を高める要因です。総務省の労働力調査年報によれば、建設業就労者の年齢分布は、全業種の平均値に比べて55歳以上の就労者数が5%程度多く、29歳以下の就労者数は5%以上低くなっています。

ベテランの労務者は、品質の高い作業を行ううえでは貴重な戦力ですが、建設業界では現在も年功序列の賃金制度が一般的で、賃金の高い高齢者の割合が増えすぎると人件費がかさみます。
その結果、人件費上では必要な人手が確保されていても、安い賃金で多人数を雇える若手の割合が低いため現場では人数が不足するという事態が発生するのです。

近い将来、大幅な人手不足に陥る危険がある


現場で人手不足感が続くとともに、建設業者の間では将来的な人手不足に対する警戒感が強まっています。その最大の要因は、前述した高齢者の割合が増えていることです。
55歳以上の高齢労働者が全体の30%以上を占める建設業界では、5~10年先の非常に近い将来に、高齢労働者の引退により深刻な人手不足が懸念されます。高齢労働者が引退した穴は、若い労働者が埋めるしかありませんが、建設業への就労者が増える見込みはいまのところありません。

実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ

無料レポートダウンロード

「建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する

「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に

「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測

「関連記事-人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット

この記事に付けられたタグ

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

記事を気に入ったらシェア!

合わせて読みたい

オススメの最新記事

この記事と同じカテゴリの質問


アーキブックコスト

コラムカテゴリ

カテゴリー

専門家の種類

建物用途

資格

課題解決

サイトニュース

2016.7.19
「アーキブック」をリリースしました。