建設業界の人手不足の現状と対策(3)~就労先として人気を得るには~
建設業界の人手不足と対策を考えるシリーズ。第2回では、建設業界が就労先として不人気な理由に迫りました。今回は、建設業界が人気を回復するための方策を考えてみます。
賃金の改善に必要なのは利益率の改善
建設業界の人気回復のためには、労働環境の改善が必要です。やはり3Kや6Kのイメージを払拭する必要があるでしょう。単なるイメージである3Kよりも、具体的な不満といえる6K(きつい、きたない、きけんの3Kに、給料が安い、休暇が少ない、かっこ悪いが追加されたもの)のほうが重要かもしれません。
中でも最も重要なのは賃金の問題でしょう。
東日本大震災の復興を促進するために国がとった施策によって、現在は賃金レベルが回復傾向にありますが、それでも他業種に比べればまだ低い水準です。また、一時的に上がっても景気の悪化にともない、すぐに下がってしまう体質にも問題があります。
賃金の背景には、過当な受注競争による利益率の低下があります。利益率が低下して会社が体力を失った結果、社員の賃金を保障することが難しくなったのです。業界全体の問題として、適切な利益率をあげられる方策を考える必要があります。
建設業ならではの休暇の難しさを改善する
週休2日制が当たり前になっている現代において、建設業だけはいまだに日曜日のみの休日が主流です。なんと時代遅れなのか、と思えますがそうともいいきれません。
建設の現場では、多くの場合雨の日は作業ができません。するとその日は休日となり、自宅で寝ていてもいいということになります。うらやましいと思うでしょうが、多くの場合は給料が日給・月給(働いた日数分が月給として支払われる)のため、休めばそのぶん給料が減る仕組みで、決して嬉しいものではありません。
このうえ土曜日まで休日になると、ますます給料が減ってしまい生活していけなくなる恐れがあります。また、雇用主側からすれば、工期の遅れにつながるため土曜日を休日にはしにくいという事情もあります。
このように建設業ならではの事情があるわけですが、このあたりを改善しないことには人気の回復は難しいでしょう。週休2日制の導入は難しいとしても、完全な日給・月給制度をあらためて、ある程度の月給を保障するなり、シフト制で計画的な連休の取得をしやすくするなどの工夫が望まれます。
技術者を育成する体制づくりを目指す
2015年の10月に横浜市のマンションで発覚した、杭打ち不良によるマンションの傾斜問題は、建設業界が犯した不祥事として記憶に新しいところです。この問題は、一業者の問題に留まらず、業界全体の技術者の不足や、ずさんな管理体制などの問題点を浮き彫りにしました。
また、今年4月に神戸市で発生し、建築作業員10名が死傷した橋脚の落下事故も世間に大きな衝撃を与えました。この事故の原因については現在究明中ですが、技術的な問題があったのではないかと推測されています。
2つの問題に共通していえることは、建築の現場での技術力低下が見られることです。この背景には、建設業界が長年、技術者を軽視してきたということがあります。その結果、工学部を卒業した学生は電子技術産業やIT産業などに就職し、建設業に優秀な人材が集まりにくくなったのです。建設業界には優秀な技術者を招き入れ、大切に育てていく体制づくりが必要とされています。
抜本的な構造改革が必要とされている
労働条件の改善や技術者を育成する体制づくりの重要さは、建設業の経営陣も十分に理解していることでしょう。それでも、いままで十分な改善ができなった背景には、建設業界が持つ重層下請け構造の特殊性があります。
大きな工事のほとんど全てをゼネコンが受注し、1次下請けに外注し、1次下請け企業は2次下請けに、さらに3次、4次と、次々に下請けに外注していく業界構造では、末端の下請け企業や個人事業主の職人の立場が弱すぎて、いつまでたっても状況が改善できません。
建設業界が本当に変わるためには、重層下請け構造の抜本的な改革が必要とされています。
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「建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する
「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に
「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測
「関連記事-人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット