建設業界の人手不足の現状と対策(4)~新たな発想で人手不足を解消する~
建設業界の人手不足と対策を考えるシリーズ第3回では、労働条件を改善し、就労先としての建設業の人気を回復する方法について考えました。しかし、日本の少子化は改善する目途が立たず、あらゆるところで今後も少子化が進行すると予想されています。そうなってくると、建設業の人気回復に成功したとしても、人手不足の深刻化が避けられない恐れがあります。今回は、新たな発想で人手不足に対応する方法を考えていきます。
女性や高齢者を労働力にできる環境を目指す
少子化社会の中で人材を得るためには、これまで労働力とみなされていなかった層を発掘する方法が有力です。
建設業は、これまで体力のある男性が就労する職場でしたが、女性(特に主婦層)や70歳以上の高齢者を労働力にすることができれば、人手不足解消の有力な手段となるだけでなく、高齢化社会の問題解決に貢献することになります。
女性や高齢者を労働者とする方法としては、女性用の更衣室や清潔なトイレ、シャワー室などを用意する、セクシャルハラスメントを発生させない管理体制の構築や、男性労働者への教育を行う、パートタイムでも働ける労働体制の構築などが考えられます。
より高度な手段としては、力の弱い女性や高齢者でも作業が可能なように、ロボット技術などを使ったパワーアシスト装置を開発することや、日焼けや熱射病を予防する作業着を開発することなどが挙げられます。
外国人労働者の採用や、期間労働者の採用には十分な注意が必要
政府の行う施策として人手不足解消の切り札と目されているのが、外国人労働者や期間労働者など非正規労働者に対する規制の緩和です。
建設業界の経営層の多くは、これらの動きを歓迎する態度を示していますが、こうした施策は即効性がある代わりに、副作用も起きやすい劇薬なのです。
低賃金で雇える外国人労働者が増えれば、建設業界全体の賃金レベルの低下を招き、労働条件がさらに悪化する恐れがあります。また、日本人の雇用枠が外国人に奪われることで、景気の悪化を招く恐れもあります。
期間労働者の採用も、収入が不安定な労働者が増えることで景気の悪化を招く恐れがあることや、モチベーションの低下などで、業界全体の技術レベルの低下を招きかねません。外国人労働者や期間労働者の規制緩和には十分な注意が必要で、建設業界としても安易に飛びつかない慎重な態度を取るべきでしょう。
技術革新で必要な人手そのものを削減する
1964年に開催された東京オリンピックの際は、開催までにホテルの建築を間に合わせるために、ユニットバス工法が開発され、工期を大幅に短縮することに成功しました。その後、ユニットバス工法は世界中で取り入れられており、日本が世界に誇る技術となっています。
ほかにも、職人の技術力に頼っている作業を、誰でもできるように変革していくことも重要です。こうした技術開発は日本が最も得意とするところで、成功すれば世界をリードすることにもつながります。一企業の枠を超えて、建設業界全体、さらにははロボット技術や人工知能などの技術を持つ他業界にまで広げて、国を挙げて開発に取り組むべき課題でしょう。
異業種合併で抜本的改革を図る
第3回で指摘したように、建設業界の労働条件などを改善するには、重層下請け構造の改革が必要不可欠です。しかし、長年にわたって続いてきた構造の改革はそう簡単にはいきません。抜本的な構造改革を推進するためには、外部から新たな風を吹き込むことが必要です。そのためには、建設業界以外の業種との交流や合併が有力な手段となる可能性があります。
これまで建設業界では合併がほとんど行なわれてきませんでした。これは、建設会社同士の合併では重複する業務が多く、合併によるメリットが少ないためです。しかしながら、昨今はまったく接点がないと思われた企業同士が事業協力をしたり、合弁会社を設立して、これまでにない新たな産業を生み出しているケースが見られます。
建設業界も異業種との交流や合併を模索し、抜本的改革を目指す時期にきているのではないでしょうか。
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「建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する
「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に
「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測
「関連記事-人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット