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東京オリンピックが建設業に与える影響(2)~オリンピック開催までの影響予測~

東京オリンピックが建設業に与える影響を考えるシリーズ、第2回は2016年以降から、2020年のオリンピック開催までの間でどのような影響が発生するかを考えていきます。

東京オリンピックが建設業に与える影響(2)~オリンピック開催までの影響予測~

オリンピックによる建設需要のピークは2018~2019年か


オリンピックによる建設需要の増加はいつ頃ピークを迎えるのでしょうか。経済産業省による分析によると、2012年に開催されたロンドンオリンピックでは開催地決定の2年後(開催の5年前)にピークを迎えています。

日本で開催されたオリンピックでは、建設業の就労者数を元に推定されており、1964年の東京が開催の2年前、72年の札幌、98年の長野では開催前年にピークを迎えています。

日本では2016年6月現在で、オリンピックによる建設需要の顕著な増加は見られていないため、早めにピークを迎えたイギリス型ではなく、過去の日本での開催と同様に、開催の2年前から前年にかけてピークを迎えるのではないかと予想されます。

ピーク時には人手不足の深刻化が予想される


東京オリンピックのように開催時期が決まっていて、工期が厳密に定められている建築需要が高まると、人手不足がますます深刻化することが予想されます。

また、オリンピック開催にともなう人手の需要増加は建設業界だけではありません。むしろ観光業、宿泊業のほうが顕著なため、建設業者がアルバイトや派遣労働者で人手不足を補おうとしても、人が集まらない恐れがあります。

人手不足解消の手段として、外国人労働者の規制緩和を行うという案もありますが、急激な規制緩和は労働賃金の低下をもたらす恐れがあります。賃金が低下すれば、ただでさえ人気のない建設業界に就労する若者がさらに減り、将来的に安定した人材の確保がより難しくなることが予想されます。

人手不足の深刻化が建築の遅れ、建築費の高騰などをもたらす


人手不足解消の目途が立たない以上、その影響は必ずどこかにでます。まず最初に懸念されるのは工期の遅れでしょう。

オリンピックで使われる競技場や選手村の建築、インフラの整備などが間に合わないという致命的な問題も起こるかもしれません。オリンピック関連だけはなんとか間に合わせたとしても、そのしわ寄せは、オリンピック関連以外の建築や工事に出てきます。

住宅建築の遅れで、予定された引き渡し日までに完成しなかったり、開通予定日までに道路が完成しないなどの影響が考えられます。また、新規の建築だけでなく、既存物件の修繕などにも影響が出ます。漏水などを修繕したくても、業者が手配できずに被害が拡大する恐れがあります。

次に懸念されるのは人手不足が人件費の高騰をもたらし、建築費の高騰につながることです。

マンションなどの建築費が計画段階よりも上がると、デベロッパーの倒産などが発生する恐れがあり、最悪の場合、引き渡しが行われなくことも考えられます。

修繕費なども高騰する可能性があり、マンションの管理組合は大規模修繕等にかかる費用の見直しを迫られるかもしれません。修繕積立金を値上げしたり、一時金を徴収せざるを得なくなるケースも考えられます。

苦境を乗り切るためにはイノベーションが必要


現在では大多数の住宅建設で使われている技術に、ユニットバス工法があります。それまでは、建築の現場で床や壁に職人がタイルを張っていた工事を、構造をモジュール化して、あらかじめ工場で組み立ててから現場に搬入・据え付けすることで、大幅に工期を短縮する工法です。ユニットバス工法は、1964年に開催された東京オリンピックの際に、ホテルニューオータニの建設を間に合わせるために開発されたものであることは有名です。

必要は発明の母、といわれるように、苦境に立たされたときこそ、それを乗り越えるためにイノベーションが生まれる可能性が広がります。

これからの建設業界では、人手をかけずに工事をする手法や、工期を短縮する手法が求められます。また、建築の未経験者や主婦、高齢者など、これまで建設業界で労働者と見なされなかった人でも働けるように、工程の簡略化や腕力等を必要としない工法、危険度の少ない工法なども必要とされるでしょう。

現代の東京オリンピックまで、あと4年。イノベーションを起こして苦境を乗り切ったとき、建設業界の未来が見えてきます。

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「東京オリンピックが建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)現在(2016年)までの状況
(2)オリンピック開催までの影響予測
(3)オリンピック開催後はどうなるか

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(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に

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(2)新国立競技場の建設費は高いのか

「関連記事-建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する

「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測

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(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
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