アーキブックコスト

東京オリンピックが建設業に与える影響(1)~現在(2016年)までの状況~

開催まで、あと4年に迫った東京オリンピック。
競技施設の建設や関連するインフラ整備等で、建設業界は特需に沸いています。

しかし、これはあくまでも期間限定のもの。むしろ特需に振り回されることで、オリンピック終了後の悪影響を懸念されている経営者も多いことでしょう。

また、建設業に大きな影響が出ることで、関連する業界に影響が及ぶことも懸念されます。東京オリンピックが建設業に与える影響について考えていきます。
東京オリンピックが建設業に与える影響(1)~現在までの状況~

建設業界の現在の景気状況は


東京オリンピック特需に沸くとされる建設業界ですが、実際の業績はどうなっているのでしょうか。

まず、大手ゼネコンの売上高は2010年を底に、現在まで上昇し続けています。東京オリンピック開催が決定したのは2013年なので、2010年以降の業績アップは、主に震災復興特需とアベノミクスによる公共投資増加の影響によるところが大きいでしょう。

2012年にロンドンオリンピックを開催したイギリスでは、オリンピック開催決定の2年後から建設業界の景気に好影響が出始めているため、日本でも東京オリンピックの影響が顕著に出るのは昨年後半から今年あたりと予想されるところです。

一方で、公共工事前払金保証事業会社(北海道、東日本、西日本の3社)が調査している建設業景況調査(主に地元建設業者を対象とする調査)によれば、2013年をピークに景気状況が悪化していると見る企業が多く、2016年現在もその傾向は変わっていません。景気悪化の要因は受注数が少ないことのほか、人手不足や資金繰りが困難であることも挙げられており、状況が悪化していないのは資材調達に関する項目のみでした。

現状の問題点は人手不足と人件費の高騰


2016年現在、建設業界は深刻な人手不足に悩まされています。国税調査などの統計によれば、建設業に従事する人の数は1995年をピークに減少が続いており、2010年にはピーク時から30%以上減少しているとされます。もちろん、建築の受注数が減少すれば、それに合わせて就業者数も減少するのが自然ですが、ゼネコンの売り上げ高が回復基調に転じた現在でも就業者数の減少は続いています。

その要因は、少子高齢化により社会全体が人手不足になっていることに加えて、いわゆる3K(きつい、きたない、危険)職場として敬遠されていることが影響していると思われます。

また、深刻な人手不足により人材の奪い合いが行われた結果、人件費の高騰も発生しています。作業員の労務単価が上がることは、作業員の生活の安定や充実といった面では良いことであり、収入があがれば、建設業に従事する人の数も増加しやすくなります。

しかし、急激かつ極端な人件費の高騰は、会社の利益を押し下げる要因となり、建設費の高騰にもつながり、予算不足で建設が中止されるような事態も招いています。

関連業界に与えている影響


建設業界の人手不足と人件費の高騰や、その影響で建築費が高騰したことによって、直接的な影響を受けているのが不動産業界です。

建築費の高騰によって、新築マンションなどの価格は上昇を続けており、その影響で戸建住宅や土地、既存物件(中古市場)の価格も上昇しています。その結果、不動産投資の人気が高まり、価格がさらに上昇するという循環が発生しています。

景気面でいえばマンション価格の上昇は良いことのようですが、業界関係者の見方は冷ややかです。価格の上昇が社会全体の好景気や、住宅需要の増加に支えられたものであれば問題ないのですが、現在でも住宅は余剰しているといわれており、少子化が進む未来では、さらに大幅に住宅が余剰するとみられています。そのため、不動産業界ではオリンピックの終了を契機に、不動産価格の上昇は止まり、これまでの過剰な投資熱のリバウンドで下落に転じるとの見方が大勢を占めています。

東京オリンピックの影響は限定的でマイナス面も目立つ


以上のことから、2016年現在は東京オリンピックが建設業に与えた影響は限定的であるといえるでしょう。現状ではむしろその直接的な影響力は不透明ではっきりしていないといっても過言ではないようです。

次回はオリンピックの影響が顕著に出始めると思われる2017年からオリンピックイヤーまでに予想される影響を考えてみます。

実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ
職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】TOPへ
購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】TOPへ

無料レポートダウンロード

「東京オリンピックが建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)現在(2016年)までの状況
(2)オリンピック開催までの影響予測
(3)オリンピック開催後はどうなるか

「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)建設業で週休二日を実現する為に

「関連記事-新国立競技場の建設費水準を考える」はこちらから↓
(1)これまでを振り返る
(2)新国立競技場の建設費は高いのか

「関連記事-建設業界の人手不足の現状と対策」はこちらから↓
(1)現在までの状況
(2)人手不足の根本的な要因
(3)就労先として人気を得るには
(4)新たな発想で人手不足を解消する

「関連記事-建設業の社会保険未加入問題」はこちらから↓
(1)現在の状況と問題の背景
(2)ガイドライン改訂の影響と今後の予測

「関連記事-人手不足の深刻化が進む建設業における外国人技能実習生活用の実態」はこちらから↓
(1)外国人技能実習生ニーズの現状
(2)実習生の採用から受け入れ
(3)採用のメリットとデメリット

この記事に付けられたタグ

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

記事を気に入ったらシェア!

合わせて読みたい

オススメの最新記事

この記事と同じカテゴリの質問


アーキブックコスト

コラムカテゴリ

カテゴリー

専門家の種類

建物用途

資格

課題解決

サイトニュース

2016.7.19
「アーキブック」をリリースしました。