建設業の未来(1)~期待される技術革新~
子どもの頃に、未来の日本を予想した絵を見て、空想を膨らませた経験を持つ人は多いのではないでしょうか。そうした未来予想図は、その通りに実現したものもあれば、いまだ実現していないもの、予想を超えて実現したものもあります。
今回は、2016年現在から建設業の未来について、期待される新技術や、建設業のあり方などを考えてみます。
技術開発に力を入れることが期待されている
現在の建設業では、新技術などが日々登場してはいるものの、ほかの分野に比べるとまだまだ技術開発に十分な力が入れられているとはいいがたい状況です。
日本の長引く不況と少子高齢化の流れの中で、不況の影響を受けやすい建設業が未来への投資を行う余裕が少ないことはやむを得ない部分もありますが、こうした状況を脱するためにも、未来の日本を支える技術開発が期待されています。
具体的にはどのような技術が期待されているのかを考えていきます。
超耐久建築物でマンションの未来を変える
現在、40~50年前に建てられたマンションの老朽化が現実的な問題として浮上しています。マンションの老朽化と同時に、住人の高齢化も進み、建て替え費用を捻出することも難しく、空き家が増えて管理もできずにボロボロになっていくマンションは増える一方。安全性が確保できなくなっていく中でも、一部の住人は住み続けるしかなく、また周辺の環境にも大きな影響を与えることが懸念されています。
現在のコンクリート技術は飛躍的に向上し、最先端のものは数百年レベルの耐久性を持つとされるものも登場していますが、配管や電気系統など、コンクリート以外の部分の耐久性が追い付いていないのが現状です。
こうした課題を解決し、比較的簡単なメンテナンスで100年、200年持つマンションやビルが実現すれば、日本の住宅事情は大幅に改善されることでしょう。
街を支えるインフラ技術の開発
このところ、日本の各地で水道管の破裂、高速道路やトンネル壁面の剥落などの事故が相次いでいます。これは戦後急速に整備したインフラが一斉に限界を迎え始めているためといわれています。マンションなどの建築物と同様に、社会インフラにも耐久性の革新が求められているといえるでしょう。
また、現在道路に埋設されている水道管やガス管は、メンテナンス性が悪く、工事費用がかさむ、道路を通行止めにするなど渋滞の原因になる、緊急時の対応に時間がかかるといった問題点が多く指摘されています。耐久性を高めると同時に、高いメンテナンス性を実現することも未来の大きな課題といえるでしょう。
人体に悪影響を与えにくい建築から、好影響を与える建築へ
建築に使用される接着剤や塗料に含まれる化学物質が原因で発生する体調不良のことをシックハウス症候群と呼びます。この問題が浮上したのは1990年台ぐらいのこと。以来、各メーカー各社は対策を進め、20年ほど経過した現在は低ホルムアルデビドの製品が建築の世界でスタンダードになるところまできています。
また、建築技術が進化したことで超高層マンションなどが増加していますが、高層階に居住することの人体への影響を懸念する意見があります。現在のところ、悪影響があることを示す明快な科学的根拠は見つかっていませんが、新しい技術が新たな問題を発生させる恐れがあることは事実です。
こうした問題に対応していくことは重要ですが、問題が発生してから対策を考えていたのでは、後手後手に回ってしまい、被害の発生を防ぐことはできません。未来の建設では、人間工学や医療科学などと連携を進め、悪影響を回避するだけに留まらず、むしろ人に対して好影響をもたらすような建築物が求められています。

「建設業の未来」はこちら↓
(1)期待される技術革新
(2)日本ならではの技術
(3)建設業界の構造改革が未来を創る
(4)空想が現実になる超先進技術
「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)週休二日へ向けた具体的な取り組み
「関連記事-建設業を変革しえるBIMとは?」はこちらから↓
(1)BIMとは何か
(2)ソリューションとしてのBIM
(3)BIMの導入状況と課題
「関連記事-エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは」はこちらから↓
(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現