建設業の未来(4)~空想が現実になる超先進技術~
建設業の未来を考えるシリーズ、最終回の第4回は、近未来を飛び越えて、遠い未来に実現するかもしれない、SFやファンタジーのような世界の技術について考察していきます。
超高層建築はどこまで進むのか
現在、世界で最も高い建築物は、アラブ首長国連邦のドバイに存在するブルジュ・ハリファで、先端の塔まで含めると828m、ビル本体の高さは636mとなっている。また日本で最も高い建築物は大阪のあべのハルカスであり、その高さは300mです。
このような超高層建築は技術的にどの程度の高さまで可能なのでしょうか。
建設中のものでは先端の塔部分で1000m超のものがあり、計画段階のものでは2400mのものもあります。現在の技術的には富士山よりも高い建築は可能と見られていますが、世界最高峰のエベレストを超える8000mクラスの建築物が限界に近いとされています。
この限界値を超えていくためには、技術的なブレイクスルーが必要になってきます。
超高層建築の持つ可能性
1000mを超える超高層建築はハイパービルディングと呼ばれ、未来の都市計画のカギを握っていた時代があります。日本でもバブル期には多数の建築計画が存在しましたが、バブル崩壊によって立ち消えになった経緯があります。
いったん立ち消えになったものの、日本のように国土の狭い国家では、土地を究極的に有効利用するハイパービルディングの計画は魅力的です。そのため、新たな都心を構築する手段として現在も研究や計画は進められています。
ただ、超高層建築で世界のトップを走るドバイに比べると、地震国家である日本でハイパービルディングを建設するためには越えなければいけないハードルがまだまだ多くあるようです。
絵空事ではない宇宙エレベーター計画
宇宙エレベーターは、地上から宇宙までエレベーターで昇れるようにしようという設備のこと。それだけ聞くと、現実味のまるでない絵空事のように聞こえることでしょう。しかし、別名で軌道エレベーターとも呼ばれるように、単に宇宙までケーブルのようなものを伸ばそうというわけではなく、地球の自転に合わせて軌道上を周回する静止衛星と地上をつなげようというのが宇宙エレベーターの概念です。
単純にいえば、静止衛星から地上に向かってケーブルを伸ばすのと同時に、同じ質量のケーブルを反対側にも伸ばしていけば、バランスが釣り合って衛星の軌道が保たれままケーブルを伸ばしていくことが可能で、最終的に地上に到達させることも理論上は可能であるとされています。
宇宙エレベーターの利用価値は
現在宇宙には、開発の拠点として国際宇宙ステーションが設置されていますが、そこに物資などを届けるためには、莫大な費用をかけてロケットを打ち上げる必要がありました。
もしも宇宙エレベーターで物資の輸送が実現すれば、宇宙開発のペースが飛躍的に加速することが予想されます。さらに、宇宙エレベーターで人を宇宙に運ぶことも技術的には可能とされています。100年、200年先の未来では、手軽にエレベーターで宇宙に行ける時代が来るのかもしれません。
また、宇宙開発や宇宙での各種実験の成果は、さまざまな新素材などを生み出す可能性を秘めているといわれています。ひとつの夢の技術の実現が、ほかの技術革新にも連鎖的な影響を与えていくのです。
大深度地下開発が都心を変える
宇宙を目指す話とちょうど逆向きになるのが、地球の中を目指していく大深度地下計画です。現在でも都心部の地下は、地下鉄や地下道路が建設されており、さらに道路の下には電気・ガス・水道・電話線などの通信ケーブルなどが通されており、都心の地下はすでに満杯に近いといわれます。大深度地下計画は、そういった既存の地下設備のさらに地下、およそ地下40メートル以深の、これまで利用されていなかったゾーンを活用しようというものです。
これまでの地下利用は、既存の設備の間を縫うように、狭いスペースをやりくりしてきました。その結果、メンテナンス性が悪くなったり、工事費がかさむなどの問題がありました。大深度地下の開発が実現すれば、地下設備の大幅なリニューアルが可能で、効率的な配置やメンテナンス性の高さで、工事費用の削減や工期の短縮などにつながると考えられています。
建設業発の社会改革で日本に好景気を
建設業界は景気の波に影響されやすい業界といわれます。経済が成長している時代は建設の需要が右肩上がりで、建設業者は経営の不安がなく、労働環境も良好、新技術への投資なども積極的に行われて好循環が自然に生まれます。
現在のような出口の見えない不況が続くと、建設業の勢いは衰え、労働環境が悪化、新技術の開発も滞り、悪循環が生まれてしまいます。日本という国が不況から脱却することができれば、建設業も立ち直ることでしょう。しかし、現実的に考えて、人口減少と高齢化が続く日本では、高度経済成長期の再来のような好景気の到来は期待できません。
こうした状況を抜け出すためには、好景気を待つのではなく、自らが社会を変えていく積極籍が必要です。
再生可能エネルギーや人間工学、ロボット工学、人工知能、医療、宇宙科学といった先進技術と建設業が融合し、ビジネスの常識や市民の生活を激変させるほどの新技術を生み出すことができれば、新たな需要が生み出され、建設業を起点とした好景気を日本にもたらすことができるでしょう。

「建設業の未来」はこちら↓
(1)期待される技術革新
(2)日本ならではの技術
(3)建設業界の構造改革が未来を創る
(4)空想が現実になる超先進技術
「関連記事-働き方改革が建設業に与える影響」はこちらから↓
(1)2018年現在の状況を整理
(2)工期や建設費への影響
(3)週休二日へ向けた具体的な取り組み
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(1)BIMとは何か
(2)ソリューションとしてのBIM
(3)BIMの導入状況と課題
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(1)一家に一台の時代がやってくる
(2)HEMSによる家庭の省エネ
(3)企業向けのBEMSとFEMS
(4)目標はスマートシティの実現