遊休不動産の活用(4)~管理・活用を支援するサービス~
遊休不動産の活用について考えるシリーズ。第4回は遊休不動産の管理・活用を支援するサービスを紹介します。
いますぐできる、空き家管理サービスの利用
空き家を所有している人の場合、空き家を放置することのデメリット(「特定空家等」に指定されて税金の軽減がなくなったり、地元住民から悪感情を持たれることなど)は理解しているが、様々な事情でいますぐ積極的に活用することは難しいという人も多いと思います。
こうした場合「空き家管理サービス」を利用することで、最低限の管理を行うことが可能です。空き家管理サービスは、遠方にあるなどの理由で所有者が管理することが難しい空き家を、所有者の代理で巡回監視したり、通気換気や雑草の手入れ、ポストの整理などを行ってくれるサービスです。
サービスを提供する事業者は、地元の建設業者、賃貸住宅などの管理業者、警備会社、便利屋、NPO法人などで、価格やサービス内容もまちまちです。最も手軽なものでは、月に1回の巡回監視と1方向からの写真撮影、空き家への管理会社の連絡先の表示で、月額数百円のサービスがあります。
また、通気換気や雨漏り確認など、住宅内に立ち入る作業が入ると月額数千円が一般的です。将来的にも居住する予定のない空き家であれば、数百円のサービスで、周辺住民に迷惑の掛かる事態になっていないかを確認するだけでも、一定の効果が期待できます。
住宅を賃貸に出すならリロケーションサービスがおすすめ
相続等で土地と住宅を相続し、賃貸に出すことを考えている場合は、リロケーションサービスを利用して、住宅を貸し出すことが空き家の活用法として考えられます。
リロケーションとは、転勤などで持ち家を離れざるをえなくなったが、将来戻ってきたいので売却はしたくない、というニーズに応えて、一定期間だけ住宅を他人に貸すサービスのこと。
以前は、一度貸してしまうと賃借人が同意しないと住宅を返してもらうことが難しかったのですが、2000年に「定期借家権」が施行されてからは、定めた期間が経過した時点で契約を終了することができるようになっています。
リロケーションサービスには、契約の仲介だけ行うのものと、事業者が住宅を借り上げて、管理と賃貸を一括して行うものもあり、後者であれば、ほとんど手間をかけずに、住宅の管理・活用ができます。十数年後に自分がその住宅で暮らしたいという場合に適したサービスです。
古い住宅、田舎の住宅などは空き家バンクで借主を探す
空き家を賃貸やリロケーションで活用するには、比較的近代的な住宅であったり、都市部への通勤圏内であるなど、ある程度の家賃収入が見込める程度の条件が必要です。相続した住宅が古すぎたり、都市部から離れた農村などで家賃収入が見込めないようなケースでは、一般的な賃貸・リロケーションでの活用は難しくなります。
こうした場合に向いているのが、全国で自治体などが運営している「空き家バンク」の活用です。
空き家バンクとは、主に県外から移住希望者向けに空き家の売り物件や賃貸物件を紹介しているサイトのこと。定年後の田舎暮らしを考えている人などを対象に想定しているため、都市部への通勤圏である必要はなく、家賃が安ければ古くても構わない、むしろ古民家を探している、というニーズも存在するため、近代的な住宅である必要もありません。
特に条件の悪い住宅の場合は、家賃を無料にしているものや、中には契約時に貸主側が一定の支度金を借主に支払う条件を付けているケースもあります。
固定資産税などを払っているのに、家賃収入がないと考えると厳しい条件のようですが、住み込みの管理人を無料で雇ったようなものと考えれば家賃を無料にしてもメリットがあることがわかります。
また、家賃を無料にする代わりに、賃借人が敷地内の家庭菜園で育てた野菜を分けてもらったり、墓参りなどで帰省したときに家に泊めてもらうなど、個性的な条件を付けている例も存在しています。
放置せずに、地域住民とつながりを持つことが大事
遠方などに空き家を所有している場合は、どうしても放置しがちになってしまいますが、空き家の周りに居住して生活している人たちがいることを忘れてはいけません。
最低限、連絡先だけでも掲示しておけば、何かあった際は近隣の住人から連絡がもらえるかもしれませんし、放置されているわけではない、と安心感を持ってもらえます。家賃を無料にしてでも誰かに住んでもらえば荒地や廃屋と化すことは避けられますし、賃借人を通して地域住民とコミュニケーションが図れます。地域住民とつながりを持っておけば、遊休不動産の活用方法も自然と広がっていくことでしょう。
「遊休不動産の活用」はこちら↓
(1)増加する遊休不動産と問題点
(2)遊休不動産がマイナス資産と化す時代
(3)遊休不動産の活用方法
(4)管理・活用を支援するサービス
(5)遊休不動産活用を支援する施策
「関連記事①-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ
「関連記事②-持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論