持ち家か賃貸か(5)~最終結論~
持ち家と賃貸住宅を比較するシリーズ、最後になる第5回はこれまでの内容を踏まえた最終結論を考えます。
支出に関してはやや持ち家有利、自由度は賃貸有利
第1回で考察した持ち家と賃貸住宅の支出比較では、同条件の物件を単純比較した場合、持ち家のほうが支出がかなり抑えられることがわかりました。賃貸住宅が支出面で対抗するには、そのときの生活に必要な最小限の広さの家に順次移り住んでいくことが必要になるでしょう。
それでもなお、現在の超低金利では、持ち家のほうが支出面でやや有利と考えられます。ただし、便利な都心に住みたくなったり、逆に自然に多い郊外に住みたくなったなど、ライフスタイルが変わった場合の対応の自由度では賃貸住宅がはるかにまさります。
土地や建物に縛られず自由に生きたいという人には、賃貸住宅に支出以上の価値を見出すことができるでしょう。
維持・管理の手間では賃貸住宅有利だが、考え方次第
第2回で考察した、建物や敷地の維持・管理の手間や支出については、賃貸住宅がはっきり有利といえます。修繕費用などの思わぬ出費に苦労したり、休日に庭の草むしりに追われるようなこともありません。
煩わしい手間暇を抑えて、時間を有意義に使いたいという人には賃貸住宅が向いているでしょう。ただ、昨今はDIYなどが流行しているように、手間暇をかけて自分の家を自分好みに作り上げていく作業を楽しいと感じる人もいます。
仕方なく庭の草むしりをするのではなく、花壇を作ったり、ちょっとした作物を育てるなど、趣味の延長として庭の手入れができるタイプの人なら、維持・管理の手間はさほどマイナス面にはなりません。
投資目的で住宅を購入するのはリスクが高い
第3回では、持ち家の35年後の資産価値について考察し、人口減少社会では資産価値を期待して住宅を購入するのは危険であると結論づけました。
ただ、全ての住宅の価値が下がっているわけではありません。再開発や大型ショッピングモールなどの誘致に成功した街では、土地や住宅の価値が上がっているところも存在します。
こうした地域では、購入したマンションが値上がりして、数年後に売約した利益で戸建住宅に買い替えた成功例などもあります。
とはいえ、値上がりを見込んだ住宅購入はリスクが高く、ライフプランに取り入れることはおすすめできません。値上がり期待の住宅購入は投資の1つであると考えて、リスクヘッジできるだけの余裕がある人以外は避けるべきでしょう。
賃貸住宅に住むという現実を割り切れるかどうか
第4回は、賃貸住宅の原状回復義務は大きな負担にならないと結論づけました。ただ、そうはいっても賃貸ならではの立場の弱さは存在します。
例えば住んでいる地域が再開発などで便利になった場合、持ち家ならば喜ばしいことですが、賃貸住宅の場合は家賃の値上げを提示されることがあって、必ずしも喜ばしいとは言い切れません。
分譲マンションに賃貸で居住する場合では、管理組合に加入できないことで駐車場の空きがなかなか回ってこなかったり、隣人とトラブルが発生した場合には、組合員に比べてどうしても立場が弱くなりがちです。
賃貸住宅に住むことで現実的な問題はほとんどありませんが、このような精神的な不利感を気にするかどうかがポイントになるでしょう。
どちらが有利かではなく、どちらを望むかが重要
支出の少なさにひかれて郊外に持ち家を所有しても、遠距離通勤が苦痛で仕方がない、というタイプの人にはマイナス面のほうが多いでしょう。
職場に友人が多く夜遊びが多い人が毎度タクシーを使って帰宅するようでは、支出の少なさも帳消しです。
逆に賃貸での生活に自由さよりも不利感や疎外感を感じるタイプの人が、リスクを恐れて住宅購入に踏み切らないのは、ストレスをためるばかりです。
世の中には、住宅を購入して心から良かったと思っている人もいますし、賃貸住宅を選んで正解だったと考えている人も大勢います。
結局のところ持ち家か賃貸住宅かの最終結論は、どちらが有利かで決めるのではなく、それぞれの特徴を理解し、自分のライフスタイルや価値観を見極めたうえで、自分はどちらを望んでいるのかを考えるのが正解なのではないでしょうか。
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「持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論
「関連記事①-ハウスメーカーと工務店の違い」はこちら↓
(1)住宅設計のスタイルの違い
(2)価格面の比較
(3)設計、デザイン面の比較
(4)安心感があるのはどちらか
(5)満足度が高いのはどちらか
「関連記事②-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ