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遊休不動産の活用(2)~遊休不動産がマイナス資産と化す時代~

遊休不動産の活用について考えるシリーズ。第2回は遊休不動産を所有している個人や企業の受けるデメリットはどんなことがあるのかを調べていきます。

遊休不動産の活用(2)~遊休不動産がマイナス資産と化す時代~

不動産は所有しているだけで税金が発生する


所有する不動産が遊休不動産となっている場合の最も直接的なデメリットとして、税金の支払いが挙げられます。不動産の所有者にかかる税金は、評価額に対して1.4%発生する固定資産税と、0.3%発生する都市計画税があります。評価額1,000万円の土地を所有しているとすれば、毎年17万円の税金を支払わなければいけないということになります。

経済が成長し、土地の価格が上がり続けていた時代であれば、青空駐車場(設備等を導入せず、空き地をそのまま駐車場として貸している状態)にするだけでも、税金分程度の収益は確保できましたし、あとは所有しているだけで資産価値が増していきました。しかし、不況が続く昨今の状況では青空駐車場では税金分の収益が確保できないことも多く、資産価値の上昇も期待できません。

空き家対策法の施行で、税金の軽減措置がなくなる


土地に住宅が建っている場合は、税金の軽減措置があります。具体的には住宅1戸につき200㎡までの土地の固定資産税が1/6、都市計画税が1/3と大幅に軽減されます。1,000万円の土地に住宅が建っていれば、たとえそれが空き家であっても、本来17万円の税金が3.3万円で済むということです。

この軽減措置は住宅が不足していた1970年代に、住宅の建設を促進する目的作られたものです。ですが、住宅が余っている現代ではその目的を失い、

逆に、住宅付きの土地を相続した人が、高額な費用をかけて取り壊し、収益があがるかどうか不透明な駐車場などに転換するよりも、空き家のまま放置して税金の軽減措置を受けたほうがまだまし、と考えて空き家を放置してしまう要因になっています。

そのため平成27年度の税制改革で「空き家対策特別措置法」が施行され、見直しが図られました。具体的には、空き家の中でも、倒壊などの危険性がある、著しく衛生上の問題がある、景観を損なうといった問題のある空き家を「特定空家等」に市町村長が指定し、指定された空き家については固定資産税と都市計画税の軽減措置の対象から外すことができるようになっています。

実際には「特定空家等」に指定される前に、是正の勧告などが行われるためすぐに税金が上がるわけではありませんが、遊休不動産の所有者は注意が必要になってきます。

周辺住民とのトラブルに発展するケースもある


前回の考察では、遊休不動産が社会に与える悪影響について、周辺住民に犯罪発生の不安感を与えたり、衛生面での悪影響などが懸念され、その地域の価値を下げることにもつながる恐れがあることについて言及しました。

そのような地域住民への影響は、遊休不動産の所有者が想像するよりも深刻な場合が多くなっています。親族の墓参りなどで遊休不動産を所有する地域を訪問したところ、地位住民から苦情をいわれたり、放置するなら地元住民に売却して欲しいと迫られるケースなどもあります。

地元住民からの要望などを、自分の所有する不動産をどうしようが勝手だ、と突っぱねることはできるでしょう。しかし、将来的にその土地で過ごしたいと考えている場合などは地元住民に悪感情を持たれてしまうと大変です。また、土地や建物を売却したり貸したいと思っても、スムーズに運ばなくなってしまいます。

また、古くなった建物が倒壊して隣家に被害が及んだり、耕作放棄地で発生した害虫などが、周囲の田畑に被害が出た場合などは、損害賠償を請求されるなど、金銭的な負担を強いられるケースもありえます。

遊休不動産がマイナス資産と化す時代


遊休不動産を放置することは何の得にもならないばかりか、持っているだけで資産を減らすことになり、人間関係にまで悪影響を及ぼしかねないことがわかりました。現代社会において、遊休不動産はマイナス資産と化しているのです。

次回以降は、所有する不動産をマイナス資産としないために、遊休不動産の活用法について考えていきます。

「遊休不動産の活用」はこちら↓
(1)増加する遊休不動産と問題点
(2)遊休不動産がマイナス資産と化す時代
(3)遊休不動産の活用方法
(4)管理・活用を支援するサービス
(5)遊休不動産活用を支援する施策

「関連記事①-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ

「関連記事②-持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論

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