遊休不動産の活用(5)~遊休不動産活用を支援する施策~
遊休不動産の活用について考えるシリーズ。第5回は国や地方自治体などが行っている、遊休不動産の活用を支援する補助金や各種取り組み、事業活動などについて調べていきます。
自治体が行っている空き家対策の補助金など
全国の多くの自治体では、空き家対策の一環として、空き家の改修やリフォームに補助金を出しています。そのうちのいくつかの例を紹介します。
◇島根県太田市の空き家改修事業
大田市空き家情報登録制度に登録がある空き家で、U・Iターン者又は空き家所有者等が定住を目的に空き家を改修する場合に改修費用の一部を補助しています。
改修費用が50万円以上の場合に、30万円を上限として費用の1/3が助成されます。
◇鹿児島県中種子町の定住促進住宅整備事業補助金
中種子町へのU・Iターン者等に貸し付ける住宅として、町内建築業者等により概ね60㎡以上の空き家の改修を行った者に対し、補助金が交付されています。10万円以上の改修を行った場合に、30万円を上限として費用の2/3が助成されます。
◇広島県神石高原町の空き家及び住宅改修補助金交付事業
空き家バンク登録物件を購入または賃貸借した移住者、自宅を改修するUターン者、新婚定住者などが、自宅改修工事をする場合50万円以上の改修工事費の1/2(上限50万円まで)が予算の範囲内で助成されます。
3例紹介しましたが、これはほんの一部にすぎません。自分が保有する不動産のある市町村で補助金などの事業が行われていないか確認してみましょう。
市町村のホームページなどで見つからなくても、問い合わせてみると何かしらの支援やアドバイスが受けられる場合もあります。
北九州発祥のリノベーションスクールで遊休不動産を積極的に活用する
補助を受けて空き家の改修やリフォームを行っても、場所柄などの問題で簡単に賃借人が見つからないケースもあります。
ここでは、さらに一歩踏み込んで、遊休不動産を利用した新たな価値を創造するプロジェクトを紹介します。
◇リノベーションスクール
2011年に北九州市で始まり、全国に広がりつつあるのがリノベーションスクールです。このプロジェクトは《不動産の再生を通じてまちでの新しいビジネスを生み出しエリアを再生す》ことを主目的としています。
具体的には、遊休不動産のオーナーから土地や建物の提供を受けて、事業プランを計画します。
また、遊休不動産を中心とする特定エリアでの事業プランを考えたり、地域レベルでの情報発信などの可能性を追及することも行われます。
遊休不動産オーナー自らが事業プランの計画者になることもできますし、不動産を提供して事業に活用してもらうこともできるため、自分で活動することは難しいという人にもおすすめのプロジェクトです。
農地を所有しているなら市民農園で活用する
相続等で農地を所有したが、農業を行なうことができずに耕作放棄地になっている場合、市民農園として活用する方法が考えられます。
市民農園とは、農業従事者以外の一般の人が趣味やレクリエーションとして野菜や花などの栽培を行うことができる農園のことで、レンタル型の家庭菜園のようなイメージです。市民農園は、耕作放棄地対策の1つとして「市民農園整備促進法」と「特定農地貸付法」という2つの関連法律が作られて、国家レベルで推進されている事業です。
事業形態としては、農地の所有者自らが農園の経営者になる方法と、所有者が農地を提供して地方公共団体や農業協同組合、あるいは民間企業やNPO法人が経営者になる方法があります。市民農園の開設にあたっては、農林水産省が所管する各種交付金が受けられる場合が多く、農協や日本政策金融公庫から低利率の融資を受けられる制度もあります。
また、農地以外の空き地などに市民参加型の菜園を作る場合でも交付金が受けられる制度があるため、空き地の活用法としても考えることができます。
「遊休不動産の活用」はこちら↓
(1)増加する遊休不動産と問題点
(2)遊休不動産がマイナス資産と化す時代
(3)遊休不動産の活用方法
(4)管理・活用を支援するサービス
(5)遊休不動産活用を支援する施策
「関連記事①-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ
「関連記事②-持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論