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遊休不動産の活用(1)~増加する遊休不動産と問題点~

人口減少と出口の見えない不況の影響で、全国的に遊休不動産が増えています。遊休不動産とは、誰も住んでいない住宅や、賃借人のいない貸店舗や貸工場、そして空き地などのことをいいます。

不動産の所有者が個人の場合も企業の場合も含まれます。遊休不動産が増加することによる問題や活用法、今後の見通しについて考えていきます。

遊休不動産の活用(1)~増加する遊休不動産と問題点~

遊休不動産が発生する理由とは


遊休不動産が発生する原因は様々です。例えば個人の場合なら、親族から不動産を相続したが、遠方のため自分で活用する予定はなく、なんとなく放置しているケース。企業の場合は、何らかの計画で不動産を所得したものの、不況の影響などで計画が頓挫し、そのまま放置されているケースなどが考えられます。

個人・企業を問わず、売りたい・貸したいと思っているが、買い手や賃借人が見つからないケースもあります。こうした原因は昔から存在していましたが、近年特に増加している理由として、個人の場合は、核家族化が進んだことで、親から不動産を相続しても使い道がないことが多くなったことが挙げられるでしょう。

企業の場合は、不況と人手不足で新規事業を始めることが難しくなっていることなどが考えられます。また、都心部への人口の集中化が進みつつあることで、地方や郊外の不動産の価値が著しく減少し、買い手や賃借人が見つからないケースも急増しています。

個人と企業の中間的な要素として、高齢化と後継者不足により、農家が廃業して農地が耕作放棄地になるケースや、管理されず放置される山林なども遊休不動産の1つといえます。

遊休不動産の増加を示す各種データ


5年毎に行われる総務省の住宅・土地統計調査(平成25年度)によれば、空き家などの居住世帯のない住宅は853万戸存在し、住宅の総数に占める割り合いは14.1%で、およそ7軒に1軒が該当します。居住用の住宅だけでこの数ですから、オフィスや工場向けの建物や空き地などを含めると、さらに膨大な数に上るであろうことが想定されます。

次に、国土交通省の土地総合情報ライブラリーによれば、全国の空き地発生数は1998年が約12.5万haなのに対して、5年後の2003年はには13万haと増加傾向にあります。

また、低・未利用地面積の統計では、首都圏で2000年に約2300haが、2003年には3300haと顕著に増加しており、土地の用途地域としては工業系用途地域の占める割り合いが最も多くなっています。

さらに、農林水産庁の報告によると全国の耕作放棄地の面積は、1995年が約24万haなのに対して、5年後の2000年には34万haと大幅に増加。その後も増え続け、2015年には約42万haにまで増えています。

遊休不動産の増加が社会に与える影響


遊休不動産が増加すると、どういった問題が出てくるのでしょうか。国や地方自治体によるアンケートでは、空き地・荒地や空き家・廃屋に対して多くの人が犯罪発生の増加などを懸念する不安感を持っていることがわかっています。また、実際に放火などを原因とした火事の発生数が増加したという報告も見られます。

実際には犯罪の発生数が増加していなかったとしても、不安感を持つ人が多くなれば、その地域の人気が低下し空き家や空き地がさらに増加するという悪循環が発生します。
これは商業地域でも同様で、商店街などで閉店する店舗が増えると、商店街全体の活気が低下し、経営に息づまる店舗がさらに増加する恐れが高まります。さらに、空き地の増加は生活環境の悪化にもつながります。管理が放棄された空き地には雑草が生い茂り、害虫の発生源になったり、ゴミの不法投棄も誘発します。

また、農地の耕作放棄地では、雑草や害虫が隣接する農地に広がり、耕作に悪影響を及ぼします。山林などでは、木の管理が行われないことで山が荒れて、土砂崩れ等の災害発生の恐れが高まります。

遊休不動産の増加は国家レベルの大きな問題


遊休不動産が増加は、デメリットが非常に多く、また増加することがさらなる増加をもたらすという悪循環に陥りやすい問題であることがわかりました。これを放置すれば、国家経済が成り立たなくなる恐れのある大問題です。

ただ、眠っている建物や土地があるということは、それを活用して新しいことを始めるチャンスでもあります。次回以降は、遊休不動産の所有者にとってのデメリットや、遊休不動産の解消に向けた制度や取り組みを紹介していきます。

「遊休不動産の活用」はこちら↓
(1)増加する遊休不動産と問題点
(2)遊休不動産がマイナス資産と化す時代
(3)遊休不動産の活用方法
(4)管理・活用を支援するサービス
(5)遊休不動産活用を支援する施策

「関連記事①-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ

「関連記事②-持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論

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