持ち家か賃貸か(2)~持ち家の維持・修繕の実際~
持ち家と賃貸住宅を比較シリーズ、第2回は持ち家の維持・修繕にどのぐらいの手間や費用がかかるのかを考えてみます。
維持・修繕の手間がかからないのが賃貸住宅のメリット
水漏れの発生や、給湯器の故障など、住宅には何かしらのトラブルがつきものです。賃貸住宅の場合は、住宅の固定設備に不具合が発生した場合、基本的に貸主側に修繕の責任があります。
最近は管理会社が間に入ることがほとんどで、24時間営業のコールセンターに電話すれば、短期間で修理業者などを手配してもらえます。日常的な清掃や点検なども管理会社が行うため、そもそも大きなトラブルが生じにくくなっているのも賃貸住宅のメリットの1つです。
また、管理がしっかりしていない賃貸住宅などで、貸主側の対応が悪い場合や、通常のメンテナンスだけでは対応しきれないような老朽化を原因とする不具合が多発するようなケースでは、別の賃貸住宅に引っ越すという最後の手段も残されています。
戸建住宅の維持・修繕の実際
戸建住宅を購入した場合は、基本的に維持・修繕を自分でやっていく必要があります。外壁や屋根の塗装、防水処理などは、しっかりとメンテナンスするなら5年に1回程度は必要です。ガスレンジや給湯器、壁紙なども10年ほどで交換時期を迎えます。流行のフローリングもワックスが固着して黒ずんでしまったり、表面が荒れてしまったりと、意外に傷みが早く、全面的な張り替えともなるとリビングだけでも30万円程度は必要になります。
ほかにも、雨どいや屋外の排水口は、マメに手入れをしないと詰まって漏水の原因になりますし、庭があれば、夏場は雑草の処理に追われることになるでしょう。
面倒なメンテナンスを便利屋などに依頼することもできますが、1回あたり数千円から数万円の費用が発生するため「こんなことなら賃貸のほうが良かった」と思うことにもなりかねません。
戸建住宅を購入するなら、維持・修繕にどのぐらいのコストや手間がかかるのかを把握し、維持・修繕の長期計画を立てるぐらいの慎重さが必要です。修繕費の一般的な目安としては、最初の10年で100~150万円程度といわれています。時間が経過するにつれて費用は増していくため、30年目には少なくとも300万円程度は見込んでおくべきです。
分譲マンションの維持・修繕の実際
分譲マンションを購入した場合、共有部の日常的なメンテナンスは原則として管理組合が委託する管理会社が行います。建物の修繕については、管理組合が長期修繕計画を作り、それにもとづいて専門業者に委託して行われます。管理費と修繕積立金は必要ですが、必要な金額を普段から貯金していると思えば手間がかからない分、戸建て住宅よりは楽だといえるでしょう。
ただ、マンションで注意しなければいけないのは、管理組合がしっかりと機能しているかどうかです。住人同士の折り合いが悪いなどの理由で、管理組合、特に理事会が機能していないと、最悪の場合、管理や修繕が滞ってしまうことも。
漏水などの具体的な被害が出てから、慌てて大規模修繕を行う場合は、積立金が足りずに多額の一時金を徴収されることもあります。こうした状態になってしまうと、自分の努力だけでは解決が難しく、戸建住宅よりもはるかにやっかいなことになります。
このように、分譲マンションの場合は、管理組合の運営がしっかり機能しているどうかが非常に重要です。普段から組合の運営状況を見守り、場合によっては自らが組合の理事となって運営していく覚悟が必要です。
分譲マンションの管理費・積立金の目安は、最初の10年が月額20,000円×120か月で《240万円》、それから徐々に値上がりしていくことが普通で、10~20年目までは25,000円×120か月で《300万円》、20~30年目は30,000円×120か月で《480万円》程度を見込んでおきましょう。また、基本的に戸数の少ないマンションほど負担は大きくなります。
戸建住宅よりも割高ですが、これは管理・清掃などの費用が入っているためで、戸建でも、敷地の清掃や庭の手入れを外注すれば、当然費用が発生します。
維持・修繕の手間を楽しみと思えるかどうか
マイホームを手に入れると、現実的な管理や修繕の手間がかかることは避けられません。また、賃貸住宅なら近所づきあいもほとんど不要ですし、どうしても隣人と折り合いが悪ければ引っ越すこともできます。
これがマイホームとなると、ご近所づきあいも避けられません。こうした点を踏まえて、賃貸住宅に住み続けるほうがいい、と考える人が多いのも事実です。しかし、こうした手間は必ずしもデメリットとは言い切れません。面倒な庭の手入れも、自分の城だと思えば、むしろ楽しいと感じる人もいます。近所づきあいも、うまくやっていければ人生の楽しさが広がります。
結局のところ、こうした手間をマイホームの楽しみの1つと思える価値観を持っているかどうかが重要になると言えるでしょう。
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「持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
(4)賃貸住宅における原状回復の範囲
(5)最終結論
「関連記事①-ハウスメーカーと工務店の違い」はこちら↓
(1)住宅設計のスタイルの違い
(2)価格面の比較
(3)設計、デザイン面の比較
(4)安心感があるのはどちらか
(5)満足度が高いのはどちらか
「関連記事②-自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ