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自社ビルか賃貸か(2)~自社ビルのデメリット~

自社ビルと賃貸オフィスを比較するシリーズ。第1回は自社ビルを持つことのメリットを考えました。

その結果、自社ビルを持つといいことだらけのように感じたかもしれませんが、当然ながらデメリットもあります。第2回は自社ビルのデメリットについて考えていきます。

自社ビルか賃貸か(2)~自社ビルのデメリット~

広範囲に影響する立地条件の悪さ


豊富な資金があって、都心の一等地に自社ビルを建てられるなら話は別ですが、それができるのは一部の巨大企業や、よほど業績が好調な企業に限られます。現実的には、多くの企業が自社ビルを所有する際には、限られた予算の中でやりくりをして、いくつかの妥協点を見出して折り合いをつけているのが実情です。

妥協点として真っ先に考えられるのが立地条件です。都心を離れたり、都心でも交通の便が悪い場所などであれば土地の所得費用を削ることができますが、その影響は意外なほど広範囲に及びます。

まず、通勤の便が悪くなるというのは社員に不評なことは間違いないでしょう。郊外に建てた場合は、社員の交通費増加、外回り営業の経費増加や時間効率の悪化も予想されます。社内的な影響以外にも、来訪者や出入り業者にも不満を持たれて敬遠される恐れがあります。また、こうした立地条件の悪さは、人材確保にも悪影響を及ぼすでしょう。

管理・メンテナンスの手間と費用


ビルを所有すると、そのビルの管理やメンテナンスは自社で行わなければいけません。大企業であれば、総務部が主管となって、管理業務を外部委託すれば済む話ですが、中小企業の場合、それまで未経験の自社ビルの管理をスムーズに行える部署の設置や人材の確保ができない恐れもあります。

管理が行き届かないと、対外的な印象が悪くなったり、社員のモチベーションに悪影響が出る恐れがありますが、むやみに外注に頼ると、経費ばかりかかって、賃貸のほうが安かったということになりかねません。

メリットとして挙げたセキュリティの向上についても、しっかりと対策を行えてこそのもの。中途半端な対応では、むしろ賃貸オフィスでビルの管理者にセキュリティ対策を依頼したほうが良かったという事態も考えられます。

従業員数の増減に対応しにくい


自社ビルを所有することの代表的なデメリットが、従業員数の増減に対応しにくいことです。増加時に、一部を賃貸オフィスでまかなうと、全部門集約の効果が薄れますし、外に出された部署は疎外感を持ちやすく、不満のもとになります。また、むりやり増床して詰め込むと、社員のストレスが増加します。

従業員の減少時は、それ自体に問題はありませんが、減少するということは基本的に業績が低下しているはずで、自社ビルの維持も難しくなってくるはずです。賃貸であれば、一部を解約したり、規模に合うオフィスに移転することで対応できますが、自社ビルではそういうわけにもいきません。

自社ビルの一部フロアを賃貸に出して家賃収入を得られれば理想的ですが、立地条件が悪い場合は店子も簡単には見つからないでしょう。また、最初から賃貸を想定した作りになっていればいいのですが、そうでない場合は、セキュリティ上の問題などから、大がかりな工事が必要になる恐れもあります。

対外的なステータスが低下する恐れも


昨今は、自社ビルに信用度やステータス性がさほどなくなっており、経営者の多くは、大きなメリットがない限り、自社ビル建設を目指すようなことは少なくなりました。このような流れの中で、具体的なメリットが少なく、経営者の夢や、箔を付けたいなどの理由だけで自社ビルを建てると、世間からは「古い体質の企業」、「オーナーのワガママが通ってしまう企業」などと思われかねません。信用とステータス性を求めて建てたはずの自社ビルで、逆に対外的な信用を失うことになりかねないわけです。

次回は賃貸オフィスのメリットについて考えてみます。

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「自社ビルか賃貸か」はこちら↓
(1)自社ビルのメリット
(2)自社ビルのデメリット
(3)賃貸のメリット
(4)賃貸のデメリット
(5)財務面の影響とこれまでのまとめ

「関連記事①-遊休不動産の活用」はこちら↓
(1)増加する遊休不動産と問題点
(2)遊休不動産がマイナス資産と化す時代
(3)遊休不動産の活用方法
(4)管理・活用を支援するサービス
(5)遊休不動産活用を支援する施策

「関連記事②-持ち家か賃貸住宅か」はこちら↓
(1)支出を比較する方法
(2)持ち家の維持・修繕の実際
(3)35年後の資産価値
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「関連記事③-ハウスメーカーと工務店の違い」はこちら↓
(1)住宅設計のスタイルの違い
(2)価格面の比較
(3)設計、デザイン面の比較
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