施工段階のコストマネジメントとは!?

【佐藤隆良の建設コストマネジメント特集⑥】
建設コストマネジメント特集、前回のコラムでは、建設プロジェクトの工事発注段階におけるコストマネジメントの実務について紹介しました。最終回の今回はプロジェクトの施工段階で必要となるコストマネジメントについて説明していきます。

施工段階のコストマネジメントとは

施工段階におけるコストマネジメントとは!?


施工段階は、設計図書及び工事契約書の内容に基づいて工事が進む段階で、建物が竣工するまでを指します。工事が契約内容に従って適切に進行していくことが監理され、工事の完成時にも、設計図及び工事契約書に示された内容に適合していることが確認されます。

施工段階でのコスト管理には、下記の内容が含まれます。

1)変更工事コストの管理
2)現状コストのトラッキング/モニタリング
3)出来高査定と最終工事費の清算

1)変更工事コストの管理


プロジェクトのコスト管理は、工事契約が締結されれば完了するのではなく、施工期間中でも継続的に必要となります。その理由としては、施工段階中に発生する設計変更にあります。これらは、工事契約書に基づいて変更工事として認められる内容であるか審査され、変更と認められる場合は、施工者より発注者へ請求されることとなります。

建物の規模や工事契約の内容にもよりますが、一般的にも、施工段階において変更工事は頻繁に発生する為、変更工事に伴うコスト管理が非常に重要となります。何故ならば、この変更工事コストをしっかり管理していないと、工事完了時に施工者より思ってもいない金額を請求され、それまで予算に収まっていたものの、最終的な工事費が予算を大きくオーバーしてしまう恐れもあるからです。

具体的な管理方法としては、設計変更が発生した際に下記の内容に従って管理します。
① 変更工事と認められるか否かの確認
(工事契約書を踏まえて施工業者とも協議の上で合意する)
② 変更工事に係る変更コストの合意
(妥当なコストであるか精査して金額を合意する)
③ 変更工事管理シートによる変更コスト管理
(発生した変更工事に伴う変更コストを一元的に管理する)

なお、設計変更は現場定例などで事前に発注者サイドと施工者でその内容や金額について協議し合意の上で実施される必要がありますが、スケジュール等の関係で、とりあえず変更指示が出され、その後協議によって変更工事の金額が合意される場合もあります。

2)現状コストのトラッキング/モニタリング


施工段階では、変更工事に伴うコストを管理すると共に、現状コストが目標予算に対してどの位置にあるのかをトラッキングする作業も重要となります。

具体的には、前述した変更工事管理シートで一元的に管理された変更コストの合計額(増額分と減額分の合計)を発注段階で契約された工事契約金額に加えた金額を現状コストとしてトラックします。

この際、コストプランを活用し、変更工事コストの欄に契約金額からの増減額を入力して、現状コストが目標予算からどのように変動したのか分かり易い形で発注者や設計者に報告されます。

また、発注者やプロジェクトによっては予算が部署ごとに管理されている場合がある為、このような場合には、変更工事コストがどの部署の要求によるものであるかについても変更工事管理シートで管理し、例えば、コストプランにおける項目のトラッキングとは別に、部署別の変更工事コストのトラッキングを報告する場合もあります。

なお、一般的にはこれらはコストモニタリングレポートまたはコストトラッキングレポートとして、施工期間中に月1回程度の頻度で発注者へ報告されます。

3)出来高査定と最終工事費の清算


出来高査定は工事契約書の支払い条件に基づいたタイミングで実施され、発注者へ報告されます。また、契約後に発生した変更工事については、変更契約が締結されていない場合には出来高の対象外となり、竣工後の最終工事費の精算時に協議の上まとめて清算されるのが一般的です。

このように、変更工事が大量に発生した場合は、施工期間中に変更工事管理を実施していないと、最終工事費の精算時に施工者からの請求される変更工事費の内容を精査することが出来なくなってしまうので、施工段階におけるコストマネジメントのポイントは徹底した変更工事管理にあることが分かります。

これまで、全6回のコラムを通して建設コストマネジメントの具体的な役割や実務内容についてプロジェクト段階別に紹介してきました。

それぞれの段階で重要となる考え方、終始一貫して必要な手法など、抱えているプロジェクトの目的や状況に基づいた適切なコストマネジメントを展開することがプロジェクトを成功に導く重要なポイントとなります。

「佐藤隆良の建設コラム特集|コストマネジメント編」はこちらから↓
(1)建設プロジェクトのコストマネジメントとは!?
(2)基本計画段階のコストマネジメントとは!?
(3)基本設計段階のコストマネジメントとは!?
(4)実施設計段階のコストマネジメントとは!?
(5)工事発注段階のコストマネジメントとは!?
(6)施工段階のコストマネジメントとは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|発注・調達編」はこちらから↓
(1)建築工事の発注・調達は賢い買い物にしよう!
(2)プロジェクトに応じた発注契約方式を検討しよう!
(3)多様化する発注・調達の方式を学ぼう!
(4)多くの選択肢より最適な発注方式を模索しよう!
(5)プロジェクトを成功に導く発注・調達の方式とは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|価格契約方式とリスク負担」はこちらから↓
プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|海外建設市場編」はこちらから↓
(1)世界62か国で建設費が最も高い水準なのは!?
(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる!
(3)世界における建設市場規模はどの程度か!?

著者紹介
佐藤隆良
株式会社サトウファシリティーズコンサルタンツ 代表取締役


1946 年生まれ。大学の建築学科を卒業後、イギリスの地方公共自治体建築部、及び民間コストマネジメントコンサルタント事務所に8 年間在籍し、公共施設や民間プロジェクトにおける開発計画業務のフィージビリティースタディー、建設経済分析・評価、コスト管理業務等に携わる。帰国後、1993 年(株)サトウファシリティーズコンサルタンツ設立。国内外プロジェクトの建設コストマネジメントを中心に、幅広いコンサルティングを手がける。2005 年、(社)日本建築積算協会理事・副会長そしてアジア太平洋建設コスト管理士協会(PAQS)会長を歴任。
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