建設プロジェクトのコストマネジメントとは!?

【佐藤隆良の建設コストマネジメント特集①】
建設業では人手不足を背景に、2011年から現在まで建築費の水準が上昇しています。開発事業における建築費は事業の採算性に大きな影響を与える為、コストマネジメントの需要は近年拡大傾向です。そこで、今回の建設コラム特集では「コストマネジメント」を取り上げ、建設プロジェクトの各段階で必要となる具体的な役割や業務の内容について全6回にわたり紹介していきます。

建設プロジェクトのコストマネジメントとは!?

企画段階のコストマネジメントとは!?


この段階は、事業主のプロジェクト遂行の意思決定及び要求条件の整理のために必要な設計前の段階となります。まず、敷地条件、環境条件等の調査、そして関係官庁との法律的、技術的な観点からの調査や協議などを経て、対象とする建物用途から規模などの基本的な設計条件を検討し、事業企画案等の作成を行います。

また、フィージビリティスタディと呼ばれる計画事業の実現可能性や妥当性、採算性など多角的に検討し、事業性を評価・判断する作業もこの段階で行われるのが一般的です。さらに、事業に必要な予算設定を行うと共に、全体スケジュールについての検討を行い、プロジェクトの進め方、体制・役割など実施体制の確立に向けた検討も行います。

これらの業務には、発注方式を設計/施工分離とするか、あるいは設計・施工一貫方式とするか、などの発注についての検討も含まれ、事業主の立場でプロジェクト全体を統括する専門コンサルタントがPM(プロジェクトマネジメント)やCM(コンストラクションマネジメント)の役割として企画段階から参画する事例も増えてきています。

企画段階でのコストマネジメントの役割としては、大きくは以下の2点が挙げられます。

1)全体事業費の予算策定
2)事業の妥当性・採算性の検討

1)全体事業費の予算策定


まず、企画段階では主として事業主からの情報を基に、事業計画を遂行するには一体いくら位の予算を必要とするかを設定していきます。この時点における建築費算出の前提条件は、基本的に建物の用途、仕様(グレード)、規模、計画地域といった要素となります。

そこで、過去の類似プロジェクトにおける工事費から「㎡単価」や「坪単価」に基づいた概算手法を活用するのが一般的です。具体的には、類似プロジェクトより「㎡あたり単価」や「坪あたり単価」を設定し、この単価をベースに事業計画と類似プロジェクトの「地域」「規模」「契約時点」といった差異を補正して工事費を算出します。この方法は、建物用途によっては「戸あたり単価」や「病床あたり単価」などと併せて検討されます。

また、算出された工事費の水準が、市場の工事費水準から大きく外れていないかを確認・検証する方法として、下記のイメージのようにベンチマークが活用されることにも触れておきます。このベンチマークによる工事費水準の確認は、算出された建築費の水準が一定の市場水準に収まっていることを客観的に示しているのに加え、視覚的にも分かり易い為、設定する予算の水準について関係者に理解を得やすい点も活用メリットとして挙げられます。


平方メートル単価と床面積のベンチマーク


なお、全体事業費予算を出すため、建築工事費、付帯工事費、外構工事費等のハードコストのみならず、設計・コンサルタント等の業務サービスフィーであるソフトコストも含めて計上する必要があります。

2)事業の妥当性・採算性の検討


また、事業について、投資効果や採算性といった経営的な側面より評価・判断することもコストマネジメント業務の重要な役割となります。実現性の高いプロジェクトとする為には、プロジェクトの初期段階で計画事業に対して客観的かつ的確な評価が不可欠だからです。その為、事業収支計画に基づいて、イニシャルコストから事業期間内に建物の維持・運用で必要となるランニングコストまでを踏まえ、計画事業の実現可能性や妥当性、採算性について検討するフィージビリティスタディが重要となります。


イニシャルコストに加えランニングコストを踏まえた事業の妥当性・採算性の検討が重要


今回のコラムでは、企画段階段階で必要となるコストマネジメントについて解説しました。次回は基本計画段階で必要なコストマネジメントについて説明していきます。

「佐藤隆良の建設コラム特集|コストマネジメント編」はこちらから↓
(1)建設プロジェクトのコストマネジメントとは!?
(2)基本計画段階のコストマネジメントとは!?
(3)基本設計段階のコストマネジメントとは!?
(4)実施設計段階のコストマネジメントとは!?
(5)工事発注段階のコストマネジメントとは!?
(6)施工段階のコストマネジメントとは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|発注・調達編」はこちらから↓
(1)建築工事の発注・調達は賢い買い物にしよう!
(2)プロジェクトに応じた発注契約方式を検討しよう!
(3)多様化する発注・調達の方式を学ぼう!
(4)多くの選択肢より最適な発注方式を模索しよう!
(5)プロジェクトを成功に導く発注・調達の方式とは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|価格契約方式とリスク負担」はこちらから↓
プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!?

「佐藤隆良の建設コラム特集|海外建設市場編」はこちらから↓
(1)世界62か国で建設費が最も高い水準なのは!?
(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる!
(3)世界における建設市場規模はどの程度か!?

著者紹介
佐藤隆良
株式会社サトウファシリティーズコンサルタンツ 代表取締役


1946 年生まれ。大学の建築学科を卒業後、イギリスの地方公共自治体建築部、及び民間コストマネジメントコンサルタント事務所に8 年間在籍し、公共施設や民間プロジェクトにおける開発計画業務のフィージビリティースタディー、建設経済分析・評価、コスト管理業務等に携わる。帰国後、1993 年(株)サトウファシリティーズコンサルタンツ設立。国内外プロジェクトの建設コストマネジメントを中心に、幅広いコンサルティングを手がける。2005 年、(社)日本建築積算協会理事・副会長そしてアジア太平洋建設コスト管理士協会(PAQS)会長を歴任。
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