基本設計段階のコストマネジメントとは!?

【佐藤隆良の建設コストマネジメント特集③】
建設コストマネジメント特集、前回のコラムでは、建設プロジェクトの基本計画段階におけるコストマネジメントについて具体的に紹介しました。3回目となる今回は、プロジェクトの基本設計段階で必要となるコストマネジメントの実務について説明していきます。

基本設計段階のコストマネジメントとは

基本設計段階のコストマネジメントとは!?


基本設計は、基本構想に基づいて計画の骨子をまとめ、実施設計に入る前に基本的な建物概要を検討して固める段階です。この段階に入ると、建物の規模・形状、アクセス方式、仕様概要、構造方式、設備方式、防災システムなどがより明確になってきます。

これら基本事項の決定を図面化したものが基本設計図書で、建物の配置、平面図、立面図、断面図、仕様概要書が含まれます。

基本設計段階でのコストマネジメントには、下記の内容が含まれます。

1)工事費概算書の作成
2)コストプランによる現状コストの確認
3)設計VEの実施|基本設計段階

1)工事費概算書の作成


基本設計図等により基本的な建物概要や仕様が見えてくるので、その設計情報の内容に応じて、「概算数量」に基づいた手法で概算工事費が算出されます。この概算手法の基本は、各部位毎に概算数量を算出し、それに対応する合成単価を乗じて工事費を算出する方法となります。

また、合成単価を作成する際は、建設市場における資材価格や労務単価の調査を実施して、建設地域や市場の状況に基づいた単価水準とすることが重要となります。特に資材や労務の単価水準が著しく変動している時期、あるいは特殊な材料や技術内容などを含む設計となっている場合などでは、一般的な工事単価の水準と大きく乖離する可能性がある為です。

さらに、設計者より、複数の設計代替案が提示された場合には、それら代替案について異なる概算工事費を算出し、コストの比較・検討も併せて実施します。

2)コストプランによる現状コストの確認


算出した概算工事費(基本設計段階)をコストプランに反映させ、目標予算と比べて予算内に収まっているか確認をします。これについては、全体工事費(総額)とコストプランにおける工事項目毎、それぞれについてチェックします。

もし、全体工事費が目標予算を超過している場合は、コストプランで目標コストをオーバーしている工事項目について、目標コストに収める方策を検討します。

具体的には、概算工事費算出の前提条件を確認すると共に、必要に応じてVE(バリューエンジニアリング)やCD(コストダウン)により設計内容について代替案の検討や仕様の見直しを行ない、予算内に収める為のコストコントロールを施します。

一方で、全体工事費が目標予算に収まっている場合でも、コストプランにおける工事項目のコストについて、コスト配分のバランスが取れているか確認が必要です。例えば、ある工事項目で算出した概算工事費が目標コストを超過している場合、この部分の内容を確認し、設計を見直して目標予算内に収まるようにするか、あるいは他の部分のコストを減らしてそれを充当するのかなど、適切な対応を検討します。

これら確認・検討のプロセスを通して、最終的な工事費がコストプランにおける目標コストに収まり、その他にコスト面で大きな問題がなければ、コストプランに基づいて発注者と設計者に現状コストとして報告し、承認を得た後に次の設計段階(実施設計段階)に進むことになります。

3)設計VEの実施|基本設計段階


基本設計段階は、発注者にとって計画建物の概要を確定し、設計が次の実施設計に進んで良いかの最終的な確認と判断を行う大事な段階であります。その為、発注者の視点から現在の設計内容のレビューを行うのが設計VEであり、通常はVEチームと呼ばれる原設計者とは異なるコンサルタントチームによって実施されます。


設計VEの取り組みイメージ


設計VEの目的は、設計の内容を多面的にレビューすることで発注者が求める建物の機能とコストならびにスケジュールの観点から費用対効果の向上を図ることにあります。

具体的には、基本設計図と工事費概算書をベースに、例えば、「発注者が求める建物の機能を満たしているか?」「発注者が望んでいる以上に過剰な仕上げグレードや設備容量になっていないか?」「同じ機能を満たす安価な建材・機器は無いか?」など、設計に無理、無駄、過剰な部分がないか確認するだけでなく、設計内容を少し見直すことでコストや工期に大きく影響する改善代案を模索し「VE提案」として提示します。

この際、コストや工期に影響を与える提案については、具体的なコスト縮減額や工期短縮日数など、定量化したうえで提案されます。

また、VEチームにより検討された「VE提案」は発注者と設計者に提出され、両者によって提案の採否が検討されます。そして、採用された「VE提案」については、設計者によって次の段階で取り入れられ、設計に反映されることになります。

以上のように、今回のコラムでは基本設計段階で必要となるコストマネジメントの実務について具体的に解説しました。次回は実施設計段階におけるコストマネジメントについて紹介します。

「佐藤隆良の建設コラム特集|コストマネジメント編」はこちらから↓
(1)建設プロジェクトのコストマネジメントとは!?
(2)基本計画段階のコストマネジメントとは!?
(3)基本設計段階のコストマネジメントとは!?
(4)実施設計段階のコストマネジメントとは!?
(5)工事発注段階のコストマネジメントとは!?
(6)施工段階のコストマネジメントとは!?

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(1)建築工事の発注・調達は賢い買い物にしよう!
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(5)プロジェクトを成功に導く発注・調達の方式とは!?

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プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!?

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(1)世界62か国で建設費が最も高い水準なのは!?
(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる!
(3)世界における建設市場規模はどの程度か!?

著者紹介
佐藤隆良
株式会社サトウファシリティーズコンサルタンツ 代表取締役


1946 年生まれ。大学の建築学科を卒業後、イギリスの地方公共自治体建築部、及び民間コストマネジメントコンサルタント事務所に8 年間在籍し、公共施設や民間プロジェクトにおける開発計画業務のフィージビリティースタディー、建設経済分析・評価、コスト管理業務等に携わる。帰国後、1993 年(株)サトウファシリティーズコンサルタンツ設立。国内外プロジェクトの建設コストマネジメントを中心に、幅広いコンサルティングを手がける。2005 年、(社)日本建築積算協会理事・副会長そしてアジア太平洋建設コスト管理士協会(PAQS)会長を歴任。
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