五洋建設の状況|準大手ゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する五洋建設|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は準大手ゼネコンである五洋建設について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における五洋建設の受注高は4398億円と前年度から約12.3%の大幅な減少となりました。受注高は2015年度の4432億円より2017年度の6686億円まで2年連続で増加しておりましたが、2018年度から2年連続の減少となっていることが読み取れます。この2019年度の水準は、底となった2012年度の2814億円と比較すると約56.3%高い水準にありますが、2015年度以来の低い水準となっていることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約40.9%、土木工事が約59.1%を占め、土木工事の比率が建築工事の比率を上回っていることが分かります。(下図参照)
準大手ゼネコン10社の受注高における建築工事割合が平均で約65%であることを踏まえると、五洋建設は準大手ゼネコンの中でも土木工事に特化したゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は5415億円と前年度より約5.7%の増加となりました。売上高は2011年度の3086億円から8年連続で継続的な増加傾向にあり、また、この2019年度の水準は2011年度と比較して約75.5%高い水準と、この8年間で非常に大きく増加したことが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における五洋建設の繰越高は7595億円と前年度から約13.0%と大幅な減少になりました。繰越高は2014年度の7624億円から2年連続の減少傾向で推移した後、2017年度に8753億円と急増しましたが、そこから2019年度まで2年連続で減少しています。この2019年度の水準は、底となった2012年度の3151億円と比較して約2.4倍高い水準にあり、減少傾向にあるものの、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は依然として高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における五洋建設の手持ち工事月数16.8ヵ月と2018年度における20.5ヵ月より大きく落ち込んだ水準となりました。この2019年度の水準は、2013年度の14.1ヵ月以来6年ぶり、過去9年間では4番目に低い水準にあることが読み取れます。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は293億円と前年度より約13.4%の大幅な増加となりました。五洋建設の営業利益は2012年度の71億円から7年連続の長期的な増加傾向にあり、この2019年度の水準は2012年度と比較すると約4.1倍以上と非常に大きく増加していることが読み取れます。(下図参照)
一方、2019年度の営業利益率は5.4%と直近の9年間では最も高い水準となりました。営業利益率は2014年度の2.5%を底として2019年度まで5年間の継続的な上昇傾向で推移しています。
5. 従業員の状況
2019年度における五洋建設の従業員数は4835人でした。2013年度の2947人から2018年度の4846人まで5年連続の増加傾向で推移していましたが、2019年度は概ね横ばいながらも僅かに減少していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2019年度における従業員の平均年齢は42.5歳、平均勤続年数は17.9年、平均年収は876.4万円でした。
さらに五洋建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約91.0(百万円/人)、112.0(百万円/人)、157.1(百万円/人)、6.1(百万円/人)となっていることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【五洋建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 4398億円 | |
② 売上高 | 5415億円 | |
③ 繰越高 | 7595億円 | |
④ 営業利益 | 293億円 | |
⑤ 営業利益率 | 5.4% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 16.8ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 4835人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.5歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 17.9年 | |
⑩ 平均年収 | 876.4万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 91.0(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 112.0(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 157.1(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 6.1(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1797億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 2597億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 4億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして準大手ゼネコンである五洋建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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