準大手・中堅ゼネコン18社の状況|ゼネコン規模別の状況把握【2024年版】
【業績から把握する準大手・中堅ゼネコン|2024年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はゼネコン規模別の観点から、準大手・中堅ゼネコンの状況について紹介していきます。
具体的には、2024年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに以下の点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2023年度における準大手・中堅ゼネコン18社の受注高は平均で3,227億円と前年度から約6.4%の増加となりました。受注高は2011年度の2,059億円から2014年度の2,967億円まで増加傾向で推移した後、2015年度に2,768億円まで減少しました。(下図参照)
その後、2016年度から3年連続の増加傾向で推移し、2018年度には3,309億円と過去13年間で最も高い水準になりました。2019年度から2年連続の減少となっていましたが、2021年度から3年連続の増加となっています。また、この2023年度の水準は、底となった2011年度の水準と比較してみると約56.7%高い水準にあることが分かります。
ここで、準大手・中堅ゼネコンの業界シェアを受注高ベースで見てみると、建設業全体のうち準大手・中堅ゼネコン18社の占める割合は7.6%となっております。(下図参照)
国内の建設業者数が約47万社であることを踏まえると、準大手・中堅ゼネコンが18社で占める業界シェアは1割弱となり、建設需要に対して比較的に強い影響力があると考えられます。
2. 売上高の状況
次に、2023年度における準大手・中堅ゼネコンの売上高は平均で3,204億円と前年度より約8.2%の増加となりました。売上高は2011年度の2,165億円から2015年度の2,714億円まで増加傾向で推移した後、2016年度の2,640億円まで若干減少しました。(下図参照)
その後、3年連続の増加傾向で推移し、2019年度は3,086億円と過去13年間で2番目に高い水準となりました。2020年度は2,765億円と減少したものの、2021年度から3年連続で増加推移していることが読み取れます。この2023年度の水準を底であった2011年度の水準と比較してみると、約48%高い水準にあることが分かります。
3. 繰越高の状況
続いて、2023年度における準大手・中堅ゼネコンの繰越高は平均で4,882億円と前年度から約4.7%増加しました。繰越高は底であった2012年度の2,303億円から2018年度の4,359億円まで6年連続の継続的な増加傾向で推移しました。(下図参照)
その後、繰越高は2019年度の4,200億円まで減少したものの、2020年度から4連続で増加し、2023年度の水準は、この13年間で最も高い水準となっていることが読み取れます。また、この2023年度の水準は、底であった2012年度の水準と比較して約112%高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が非常に高い水準にあることが分かります。
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2023年度における準大手・中堅ゼネコンの手持ち工事月数は18.3ヵ月でした。この13年間で最も高い水準となった2021年度の19.3ヵ月から2年連続で減少となりましたが、依然高い水準となっていることが分かります。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2023年度における準大手・中堅ゼネコンの営業利益は132億円と前年度より約40.4%増加しました。営業利益は底となっていた2012年度の損益から2017年度の208億円まで5年連続の増加傾向にありましたが、2018年度より5年連続の減少傾向にあり、2023年度は増加に転じていることが読み取れます。(下図参照)
また、2023年度の営業利益率は4.1%と前年度から0.9%上昇しました。営業利益率は営業利益の推移を反映する形で2012年度を底として6年連続の上昇傾向で推移し、この10年間で最も高い水準となった2017年度の7.4%まで上昇した後、2018年度から5年連続で下落し、2023年度には上昇に転じていることが分かります。
5. 従業員の状況
2023年度における準大手・中堅ゼネコンの従業員数は平均で2,656人と前年度から僅かながらも減少しました。2013年度の2,146人より2019年度の2,671人まで7年連続の増加傾向で推移していましたが、2021年度から僅かながらも3年連続で減少しています。(下図参照)
また、2023年度の準大手・中堅ゼネコンにおける従業員の平均年齢は43.5歳、平均勤続年数は17.8年、平均年収は887.9万円(注1)でした。
さらに準大手・中堅ゼネコンの業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約121.5(百万円/人)、120.7(百万円/人)、183.8(百万円/人)、5.0(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
最後に、今回対象とした準大手・中堅ゼネコン18社と採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【対象とした準大手・中堅ゼネコン18社】
ゼネコン規模 | 会社名 |
準大手ゼネコン | 五洋建設 長谷工コーポレーション 戸田建設 熊谷組 前田建設工業 西松建設 三井住友建設 安藤ハザマ 東急建設 フジタ |
中堅ゼネコン | 奥村組 鉄建建設 東洋建設 東亜建設工業 淺沼組 飛島建設 錢高組 大豊建設 |
【準大手・中堅ゼネコンの状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 5兆8,086億円 | 18社の総額 |
② 売上高 | 5兆7,678億円 | 18社の総額 |
③ 繰越高 | 8兆7,881億円 | 18社の総額 |
④ 営業利益 | 2,337億円 | 18社の総額 |
⑤ 営業利益率 | 4.1% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.3ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 47,803人 | 18社の総数 |
⑧ 受注高(平均) | 3,227億円 | ①÷18社 |
⑨ 売上高(平均) | 3,204億円 | ②÷18社 |
⑩ 繰越高(平均) | 4,882億円 | ③÷18社 |
⑪ 営業利益(平均) | 132億円 | ④÷18社 |
⑫ 従業員数(平均) | 2,656人 | ⑦÷18社 |
⑬ 平均年齢 | 43.5歳 | 総年齢÷⑦ |
⑭ 平均勤続年数 | 17.8年 | 総年数÷⑦ |
⑮ 平均年収 | 887.9万円 | 総年収÷⑦ |
⑯ 従業員あたり受注高 | 121.5(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑰ 従業員あたり売上高 | 120.7(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑱ 従業員あたり繰越高 | 183.8(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑲ 従業員あたり営業利益 | 5.0(百万円/人) | ④÷⑦ |
注1)前田建設工業はインフロニア・ホールディングスの値を採用して作成。
注2)値は「単独」に基づく。
注3)フジタの繰越高は弘文社による推計値
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、ゼネコン規模別の観点から準大手・中堅ゼネコンの状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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