大成建設の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2024年版】
【業績から把握する大成建設|2024年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである大成建設について紹介していきます。具体的には、2024年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2023年度における大成建設の受注高は1兆5830億円と前年度から約7.5%の増加となりました。受注高は2016年度の1兆3482億円から2017年度の1兆4176億円まで増加するも、2018年度には1兆3366億円と減少しました。そして、2019年度に若干増加した後、2021年度の1兆2588億円まで2年連続で減少していましたが、2023年度にかけて2年連続で増加しています。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約64.7%を占めている一方、土木工事は32.8%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約75%であることを踏まえると、大成建設は建築工事と土木工事のバランスがスーパーゼネコンの平均と比べ、土木工事の割合が若干高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2023年度における売上高は1兆3937億円と前年度より約5.1%の増加となりました。売上高は2016年度の1兆1767億円から3年連続の増加傾向で推移し、2019年度には1兆4095億円と過去10年間で最も高い水準になりました。その後、売上高は2020年度の1兆1449億円まで大きく減少しましたが、2021年度から3年連続で増加していることが読み取れます。この2023年度の水準は、底であった2011年度の1兆251億円と比較すると約35.9%高い水準になっています。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2023年度における大成建設の繰越高は2兆7736億円と前年度から約7.3%の増加となりました。繰越高は2012年度の1兆5541億円から増加傾向で推移し、2018年度には2兆2911億円まで6年連続で増加しました。そして、2019年度は7年ぶりに減少へ転じましたが、2020年度から4年連続で増加し、2023年度の繰越高は過去11年間で最も高い水準になっています。また、2023年度の水準は、2012年度の水準と比較して約78.5%高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2023年度における大成建設の手持ち工事月数は23.9ヵ月と前年度から減少しました。手持ち工事月数は2016年度の21.8ヵ月から2019年度の18.9カ月まで3年連続で減少しました。そこから2020年度は25.1ヵ月と大きく増加し、直近の10年間で最も高い水準となったものの、2021年度から2年連続で減少し、2023年度は増加に転じています。(下図参照)
2022年度までに手持ち工事月数は減少しましたが、これは売上高の変動率が繰越高の変動率を上回っていることを示しています。実際に、売上高は約8.7%増加しているのに対して、繰越高は6.0%の増加となっています。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2023年度における大成建設の営業利益は55億円と前年度より約86.8%減少しました。営業利益は2012年度の224億円から2017年度の1,576億円まで5年連続で増加しましたが、2018年度に1,338億円まで減少しました。そして、2019年度は増加に転じたものの、2020年度から4年連続で減少となっています。(下図参照)
また、2023年度の営業利益率は0.4%となりました。営業利益率は2012年度の2.1%を底として2017年度の12.4%まで継続的な上昇傾向で推移していましたが、営業利益の減少を反映する形で2018年度は10.1%まで下落しました。そして、2019年度は横ばいで推移したものの、2020年度から4年連続で下落していることが分かります。
5. 従業員の状況
2023年度における大成建設の従業員数は10,068人でした。従業員数は2012年度の9,021人から2016年度の9,635人まで穏やかに増加し、2017年度に若干減少しましたが、その後は6年連続の増加傾向にあることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2023年度における従業員の平均年齢は42.9歳、平均勤続年数は17.9年、平均年収は1,024.7万円でした。
さらに大成建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約157.2(百万円/人)、138.4(百万円/人)、275.5(百万円/人)、0.5(百万円/人)であることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【大成建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆5830億円 | |
② 売上高 | 1兆3937億円 | |
③ 繰越高 | 2兆7736億円 | |
④ 営業利益 | 55億円 | |
⑤ 営業利益率 | 0.4% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 23.9ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 9897人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.9歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 17.9年 | |
⑩ 平均年収 | 1,024.7万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 157.2(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 138.4(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 275.5(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 0.5(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 10,242億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 5,188億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 400億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである大成建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
◇業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ
◇実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
◇職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】TOPへ
◇購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】TOPへ
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【過去データ】TOPへ
「ゼネコンランキング」はこちらから↓
・受注高ランキング
・売上高ランキング
・繰越高ランキング
・手持ち工事月数ランキング
・営業利益ランキング
・営業利益率ランキング
・従業員数ランキング
・平均年齢ランキング
・平均勤続年数ランキング
・平均年収ランキング
「ゼネコン規模別の状況把握」はこちらから↓
・スーパーゼネコン
・準大手ゼネコン
・中堅ゼネコン
・準大手・中堅ゼネコン18社
・ゼネコン大手23社
・ゼネコン規模別の比較
「スーパーゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・清水建設
・大成建設
・大林組
・鹿島建設
・竹中工務店
「準大手ゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・五洋建設
・長谷工コーポレーション
・戸田建設
・熊谷組
・前田建設工業
・西松建設
・三井住友建設
・安藤ハザマ
・東急建設
・フジタ
「中堅ゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・奥村組
・鉄建建設
・東洋建設
・東亜建設工業
・淺沼組
・飛島建設
・錢高組
・大豊建設
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-供給編」はこちらから↓
(1)色々な視点から「建設業者の忙しさ」を把握しよう!
(2)「建設業者の忙しさ」を把握する具体的なアプローチとは!
(3)「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう!
(4)建設業者の供給状況を見抜いて実プロジェクトに応用しよう!
「関連記事-建設統計からみた建設市場シリーズ」はこちらから↓
(1)2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?
(2)建設市場における「受注高」「施工高」「手持ち工事高」の水準は!?