中堅ゼネコンの状況|ゼネコン規模別の状況把握【2024年版】
【業績から把握する中堅ゼネコン|2024年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はゼネコン規模別の観点から、中堅ゼネコンの状況について紹介していきます。
具体的には、2024年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに以下の点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2023年度における中堅ゼネコン8社の受注高は平均で1,915億円と前年度から約8.6%の増加となりました。受注高は2011年度の1,164億円から2014年度の1,625億円まで増加傾向で推移した後、2015年度から2017年度まで概ね1,500億円前後で推移しました。(下図参照)
そして、2018年度に1,808億円と過去13年間で2番目に高い水準まで増加した後、2019年度は1,507億円まで減少しています。そこから2020年度は増加、2021年度は減少と推移し、2022年度は再び増加へ転じ、2年連続で増加しています。また、この2023年度の水準は、直近の13年間で最も高い水準で、底となった2011年度の水準と比較してみると約64.5%高い水準にあることが分かります。
ここで、中堅ゼネコンの業界シェアを受注高ベースで見てみると、建設業全体のうち中堅ゼネコン8社の占める割合は2.0%となっております。(下図参照)
国内の建設業者数が約47万社であることを踏まえると、中堅ゼネコンが8社で占める業界シェアはそれほど小さくない水準であるものの、建設需要に対しての影響力は限定的であると考えられます。
2. 売上高の状況
次に、2023年度における中堅ゼネコンの売上高は平均で1,735億円と前年度より約13.5%の増加となりました。売上高は2011年度の1,225億円から2015年度の1,482億円まで増加傾向で推移した後、2016年度の1,394億円まで減少しました。(下図参照)
その後、3年連続の増加傾向で推移し、2019年度には1,584億円と過去10年間で2番目に高い水準になっています。そこから2年連続で減少したものの、2022年度は増加に転じ、2年連続で増加していることが読み取れます。この2023年度の売上高を底であった2011年度の水準と比較してみると、約41.6%高い水準であることが分かります。
3. 繰越高の状況
続いて、2023年度における中堅ゼネコンの繰越高は平均で2,680億円と前年度から約7.8%の増加となりました。繰越高は底であった2011年度の1,329億円から2016年度の1,869億円まで4年連続の増加傾向で推移しましたが、2017年度は1,850億円と若干減少しています。(下図参照)
そこから、2018年度の2,174億円まで大きく増加した後、2019年度に減少しましたが、2020年度から4年連続で増加し、2023年度の水準は、この13年間で最も高い水準となっていることが分かります。また、この2023年度の繰越高は、底であった2011年度の水準と比較して約101.7%も高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が非常に高い水準にあることが読み取れます。

ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2023年度における中堅ゼネコンの手持ち工事月数は18.5ヵ月となりました。手持ち工事月数は2018年度の17.4カ月から2019年度の16.0カ月まで減少したものの、2020年度から3年連続で増加し、2022年度の水準は過去10年間で最も高い水準となっていることが分かります。また、2023年度は減少に転じています。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2023年度における中堅ゼネコンの営業利益は57億円と前年度の48億円より9億円増加しました。営業利益は底となっていた2011年度の−6億円から2017年度の80億円まで6年連続の増加傾向で推移しましたが、2018年度は69億円と7年振りに減少しました。その後、2019年度から2年連続で増加していたものの、2021年度から2年連続の減少し、2023年度は増加に転じています。(下図参照)
また、2023年度の営業利益率は3.3%でした。営業利益率は営業利益の推移を反映する形で、2011年度を底として2017年度の5.3%まで6年連続で上昇した後、2018年度に下落しています。その後、2019年度までは横ばいで推移し、2020年度は僅かに上昇、2021年度から2年連続で下落しましたが、2023年度は下落に転じていることが分かります。
5. 従業員の状況
2023年度における中堅ゼネコンの従業員数は平均で1,570人と前年度より僅かに減少しました。2014年度の1,390人より2020年度の1,554人まで6年連続で非常に穏やかに増加した後、2022年度まで概ね1,550人で横ばい推移し、2023年度は1,570人まで増加していることが読み取れます。(下図参照)
また、2023年度の中堅ゼネコンにおける従業員の平均年齢は43.2歳、平均勤続年数は17.5年、平均年収は863.9万円でした。
さらに中堅ゼネコンの業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約122.0(百万円/人)、110.5(百万円/人)、170.7(百万円/人)、3.6(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
最後に、今回対象とした中堅ゼネコン8社と採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【対象とした中堅ゼネコン8社】
ゼネコン規模 | 会社名 |
中堅ゼネコン | 奥村組 鉄建建設 東洋建設 東亜建設工業 淺沼組 飛島建設 錢高組 大豊建設 |
【中堅ゼネコンの状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆5,319億円 | 8社の総額 |
② 売上高 | 1兆3,878億円 | 8社の総額 |
③ 繰越高 | 2兆1,441億円 | 8社の総額 |
④ 営業利益 | 453億円 | 8社の総額 |
⑤ 営業利益率 | 3.3% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.5ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 12,558人 | 8社の総数 |
⑧ 受注高(平均) | 1,915億円 | ①÷8社 |
⑨ 売上高(平均) | 1,735億円 | ②÷8社 |
⑩ 繰越高(平均) | 2,680億円 | ③÷8社 |
⑪ 営業利益(平均) | 57億円 | ④÷8社 |
⑫ 従業員数(平均) | 1,570人 | ⑦÷8社 |
⑬ 平均年齢 | 43.2歳 | 総年齢÷⑦ |
⑭ 平均勤続年数 | 17.5年 | 総年数÷⑦ |
⑮ 平均年収 | 863.9万円 | 総年収÷⑦ |
⑯ 従業員あたり受注高 | 122.0(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑰ 従業員あたり売上高 | 110.5(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑱ 従業員あたり繰越高 | 170.7(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑲ 従業員あたり営業利益 | 3.6(百万円/人) | ④÷⑦ |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、ゼネコン規模別の観点から中堅ゼネコンの状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。

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