大林組の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2024年版】
【業績から把握する大林組|2024年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである大林組について紹介していきます。具体的には、2024年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2023年度における大林組の受注高は1兆6,016億円と前年度から約7.2%の増加となりました。受注高は2011年度の1兆497億円から2015年度の1兆4290億円まで4年連続で増加し、その後は2017年度の1兆3208億円まで2年連続で減少しました。そして、2019年度には1兆5,559億円と大きく増加し、直近の10年間で最も高い水準となりましたが、2020年度に若干の減少に転じました。そこから2021年度に若干増加した後、2022年度は再び減少に転じています。また、2023年度の受注高は、底であった2011年度の水準と比較して、約52.5%高い水準にあることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約74.8%を占めている一方、土木工事は23.5%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約75%であることを踏まえると、大林組は建築工事と土木工事のバランスがスーパーゼネコンの平均に比較的近いゼネコンであると考えられます。
2. 売上高の状況
次に、2023年度における売上高は1兆5,822億円と前年度より約14.1%の増加となりました。売上高は2011年度の9,636億円から2014年度の1兆2,598億円まで増加傾向で推移した後、2017年度の1兆2,941億円までは概ね1兆2,500億円から1兆3,000億円の水準で推移していました。(下図参照)
そして、2018年度は1兆3983億円と2017年度から1000億円超の増加、2019年度は1兆4000億円を超え、過去10年で最も高い水準となりました。その後、2020年度は1兆2304億円の水準まで減少しましたが、2021年度から3年連続で増加していることが読み取れます。また、2023年度の水準を、底となっていた2011年度の水準と比較すると、売上高は約64.2%高い水準にあることが分かります。
3. 繰越高の状況
続いて、2023年度における大林組の繰越高は2兆3,956億円と前年度から約0.8%の増加となりました。繰越高は2011年度の1兆3886億円から2014年度の1兆4577億円までは概ね1兆4000億円前後の水準で推移し、その後は2017年度の1兆7408億円まで3年連続の増加傾向にありました。そして、2018年度は1兆6701億円と減少したものの、2019年度から5年連続で増加しています。(下図参照)
この2023年度の水準は、底であった2011年度の水準と比較すると、約72.5%も高い水準にあり、直近の13年間で最も高い水準となっていることが分かります。
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2023年度における大林組の手持ち工事月数は18.2ヵ月と前年度から減少していることが読み取れます。(下図参照)
2022年度の手持ち工事月数は増加しましたが、これは2021年度から2022年度まで売上高の変動率が繰越高の変動率を下回ったことを示しています。具体的に、この1年間で売上高は約0.9%増加しているのに対して、繰越高は4.7%の増加となっています。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2023年度における大林組の営業利益は433億円と前年度より約27.7%減少しました。営業利益は2013年度の28億円から2018年度の1233億円まで5年連続の増加傾向で推移していました。そこから2021年度の44億円まで3年連続で減少した後、2022年度は大きく増加に転じましたが、2023年度は再び減少に転じています。(下図参照)
また、2023年度の営業利益率は2.7%となりました。営業利益率は営業利益の増加傾向を反映する形で2013年度の0.2%を底として5年連続で上昇し、2018年度には8.8%と過去10年で最も高い水準となりました。そこから2021年度の0.3%まで2019年度から3年連続で下落した後、2022年度は上昇に転じましたが、2023年度は再び減少に転じています。
5. 従業員の状況
2023年度における大林組の従業員数は10,230人と2012年度より12年連続の非常に穏やかな増加傾向で推移していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2023年度における従業員の平均年齢は42.6歳、平均勤続年数は16.7年、平均年収は1,066万円でした。
さらに大林組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約156.6(百万円/人)、154.7(百万円/人)、234.2(百万円/人)、4.2(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【大林組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆6,016億円 | |
② 売上高 | 1兆5,822億円 | |
③ 繰越高 | 2兆3,956億円 | |
④ 営業利益 | 433億円 | |
⑤ 営業利益率 | 2.7% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.2ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 10,230人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.6歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 16.7年 | |
⑩ 平均年収 | 1,066万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 156.6(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 154.7(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 234.2(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 4.2(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1兆1,986億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 3,766億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 264億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである大林組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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