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2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?-建設統計からみた建設市場(1)

国交省より16年の「建築着工統計調査」が発表されました。同調査に基づいて16年の建設市場を「建築需要」と「建築費」の観点より解説していきます。

2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?-建設統計からみた建設市場(1)

16年の建築需要は新設住宅需要増で増加へ!


16年の着工床面積(㎡)は1億3296万㎡となり前年比で約2.7%増(約352万㎡増)でした。この水準は、需要規模が過去最大であったバブル期90年の46%程度の水準、また、近年では12年や14年と同程度の水準です。(下図1参照)


着工床面積(百万m2|全国


①建築需要が増加した要因は!?
建築需要増加の主要な要因としては、住宅建築の着工床面積が約7818万㎡と前年比で4.2%増加したことが挙げられ、この背景には、17年4月から予定されていた消費増税前の駆け込み需要があったと考えられます。(なお、消費増税は19年10月へと延期された。)

実際に、16年の新設住宅戸数(戸)は96.7万戸となり前年比で約6.4%増(約5万8千戸増)と大きく増加し、この水準はバブル期である90年のおよそ57%程度の水準、また、近年では14年の消費増税前に駆け込み需要があった13年と同程度の水準です。(下図2参照)


新設住宅戸数(万戸)|全国


③住宅需要の内訳は!?
利用目的別でみた新設住宅需要は「貸家」が41.9万戸(前年比10.5%増)、「持家」が29.2万戸(前年比3.1%増)、「分譲住宅(一戸建)」が13.4万戸(前年比8.2%増)と増加する一方、「分譲住宅(マンション)」が11.5万戸(前年比0.9%減)となりました。同じ「分譲住宅」でも一戸建てが大きく増加する中、マンションが若干の減少となっています。また、「貸家」の建築需要は5年連続で11年の水準と比較して約46%増加しています。(下図3参照)


新設住宅戸数(万戸)|貸家(全国)


③非住宅の建築需要は!?
一方、非住宅建築の着工床面積は5478万㎡と前年比0.7%とわずかに増加でした。事務所、店舗、工場といった用途が前年比でそれぞれ7.5%減、0.4%減、8.5%減と落ち込む中、倉庫が前年比で9.9%増と大きく増加し、総じて若干の増加となりました。特に、倉庫の需要は6年連続で増加しており、10年と比較して2倍以上の水準と拡大しています。(下図4参照)


着工床面積(万m2)|倉庫(全国)


16年の建築費の水準は依然として高い水準!


全建築物(全国)における16年の建築費水準(万円/㎡)は、19.8(万円/㎡)と前年の19.2(万円/㎡)を0.6(万円/㎡)上回りました(前年比約2.8%の上昇)。これは15年に引き続いて、バブル期であった91年の18.7(万円/㎡)より高い水準であり、直近で最も低い水準であった12年の16.6(万円/㎡)と比べると約19%程度高い水準となっています。(下図5参照)


建築費水準(万円/m2)|全建築物(全国)


①建築費水準上昇の要因は!?
建築費の水準が上昇した要因としては、住宅の建築費水準が19.0(万円/㎡)と前年比で約1.5%、非住宅の建築費水準が21.0(万円/㎡)と前年比で約5.0%それぞれ上昇したことが挙げられます。建物用途別にみた建築費水準の変動率(前年比%)は、店舗、病院・診療所、学校で大きく上昇する一方、工場と倉庫では下落となりました。(図6参照)


建築費水準の変動率(前年比)|建物用途別(全国)


②東京におけるRC造住宅の建築費水準は!?
RC造住宅(東京都)の16年における建築費水準(万円/㎡)は29.5(万円/㎡)と前年と同じ水準でした。これはバブル期であった91年の30.6(万円/㎡)についで高い水準であり、直近で最も低い水準であった11年の21.7(万円/㎡)と比べると約35%程度高い水準となります。(下図7参照)


建築費水準(万円/m2)|RC造 住宅(東京都)



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(1)2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?
(2)建設市場における「受注高」「施工高」「未消化工事高」の水準は!?

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(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる!
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