清水建設の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2024年版】
【業績から把握する清水建設|2024年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである清水建設について紹介していきます。具体的には、2024年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2023年度における清水建設の受注高は1兆8,522億円と前年度から約22.2%増加しました。受注高は2015年度の1兆3,419億円より3年連続の増加傾向で推移し、2018年度には1兆7,255億円と直近の10年間で最も高い水準になりました。そして、2019年度から2年連続で減少した後、2021年度の1兆5,435億円まで大きく増加したものの、2022年度は減少に転じています。2023年度の受注高の水準は、底となっていた2012年度の水準と比較して約59.7%高い水準であり、過去13年間で最も高い水準となっていることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約74.8%を占めている一方、土木工事は18.1%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約75%であることを踏まえると、清水建設は、建築工事と土木工事のバランスが概ね平均的なゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2023年度における売上高は1兆5,779億円と前年度より約1.3%の増加となりました。売上高は2011年度の1兆1,849億円から2015年度の1兆4,068億円まで4年連続で増加した後、2017年度の1兆2,626億円まで2年連続で減少しています。その後、2019年度には1兆4,176億円と直近の10年間で最も高い水準まで増加しました。2020年度は1兆2,500億円の水準まで大きく減少したものの、2021年度から3年連続で増加していることが分かります。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2023年度における清水建設の繰越高は2兆4,256億円と前年度から約12.7%の増加となりました。繰越高は増加傾向で推移し、2018年度には2兆1,385億円まで増加しました。繰越高は2019年度から2年連続で減少した後、2021年度に直近の10年間で最も高い2兆1,928億円まで増加しましたが、2022年度は減少に転じています。2023年度の繰越高の水準は、底であった2012年度の1兆1,984億円と比較して約102.4%高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が依然として非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2023年度における清水建設の手持ち工事月数は18.4ヵ月となりました。手持ち工事月数は、2019年度から2年連続で増加し、2021年度は過去10年間で最も高い水準となった20.4ヵ月まで増加しましたが、2022年度は大きく減少し、2023年度は増加に転じています。(下図参照)
これは、2021年度から2022年度にかけて、売上高の変動率が繰越高の変動率を上回っていることを示しています。具体的に、2021年度から2022年度にかけて売上高は約21.0%増加しているのに対して、繰越高は約1.9%の減少でした。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2023年度における清水建設の営業利益は-502億円と前年度より約251.2%減少しました。営業利益は、2018年度から2年連続で増加して2019年度には1,153億円と、直近の10年間で最も高い水準となりましたが、そこから4年連続で大きく減少していることが読み取れます。(下図参照)
また、2023年度の営業利益率は-3.2%と前年度より5.3%下落しました。営業利益率は2012年度の0.2%を底として2017年度の8.6%まで継続的な上昇傾向で推移していましたが、2018年度は8.1%と6年振りに下落しています。その後、2019年度は横ばいで推移したものの、2020年度からは営業利益の推移と同様に4年連続で下落していることが分かります。
5. 従業員の状況
2023年度における清水建設の従業員数は10,949人となっています。2011年度の10,776人より2018年度の10,336人まで7年連続の穏やかな減少傾向で推移していましたが、2019年度から5年連続で増加していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2023年度における従業員の平均年齢は43.6歳、平均勤続年数は15.9年、平均年収は982万円でした。
さらに清水建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約169.2(百万円/人)、144.1(百万円/人)、221.5(百万円/人)、-4.6(百万円/人)となっていることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【清水建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆8,522億円 | |
② 売上高 | 1兆5,779億円 | |
③ 繰越高 | 2兆4,256億円 | |
④ 営業利益 | -502億円 | |
⑤ 営業利益率 | -3.2% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.4ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 10,949人 | |
⑧ 平均年齢 | 43.6歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 15.9年 | |
⑩ 平均年収 | 982万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 169.2(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 144.1(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 221.5(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | -4.6(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1兆3,858億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 3,352億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 1,312億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである清水建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
◇業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ
◇実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
◇職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】TOPへ
◇購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】TOPへ
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【過去データ】TOPへ
「ゼネコンランキング」はこちらから↓
・受注高ランキング
・売上高ランキング
・繰越高ランキング
・手持ち工事月数ランキング
・営業利益ランキング
・営業利益率ランキング
・従業員数ランキング
・平均年齢ランキング
・平均勤続年数ランキング
・平均年収ランキング
「ゼネコン規模別の状況把握」はこちらから↓
・スーパーゼネコン
・準大手ゼネコン
・中堅ゼネコン
・準大手・中堅ゼネコン18社
・ゼネコン大手23社
・ゼネコン規模別の比較
「スーパーゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・清水建設
・大成建設
・大林組
・鹿島建設
・竹中工務店
「準大手ゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・五洋建設
・長谷工コーポレーション
・戸田建設
・熊谷組
・前田建設工業
・西松建設
・三井住友建設
・安藤ハザマ
・東急建設
・フジタ
「中堅ゼネコンの状況把握」はこちらから↓
・奥村組
・鉄建建設
・東洋建設
・東亜建設工業
・淺沼組
・飛島建設
・錢高組
・大豊建設
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-供給編」はこちらから↓
(1)色々な視点から「建設業者の忙しさ」を把握しよう!
(2)「建設業者の忙しさ」を把握する具体的なアプローチとは!
(3)「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう!
(4)建設業者の供給状況を見抜いて実プロジェクトに応用しよう!
「関連記事-建設統計からみた建設市場シリーズ」はこちらから↓
(1)2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?
(2)建設市場における「受注高」「施工高」「手持ち工事高」の水準は!?