「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう!-面白いほどよくわかる建設市場-供給編(3)

建設業をわかりやすく解説する「面白いほどよくわかる建設市場」の「供給編」、第2回であった前回のコラムでは「建設業者の忙しさ」を把握する為のアプローチとして「建設業者の忙しさ」に影響を与える要因を把握する為の指標について解説しました。

3回目である今回は、さらに踏み込んで「建設業者の忙しさ」について、建設業者の規模別に把握する方法にフォーカスして分かりやすく解説していきたいと思います。

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なぜ「業者の規模別」に「建設業者の忙しさ」を把握する必要があるのか!?


建設業では建設業者はその規模によって「大手5社(スーパーゼネコン)」「大手5社を除く大手50社(準大手・中堅ゼネコン)」「大手50社以外(中小規模の建設会社)」などと分類されて呼ばれています。また、建設業者は自社で対応できる建物の用途や規模がある程度決まっており、会社の規模が大きくなればなるほどに、大規模な工事に対応できるようになるのが一般的です。

その為、建設の需要が大規模な工事に集中している場合は比較的大きな建設業者が忙しくなり、反対に小規模な工事に需要が集中している場合には中小規模の建設業者が忙しくなるといったように、業者の規模によって忙しさが異なる場合があります。

そこで「建設業者の忙しさ」を把握する際には、業者の規模別にその動向を把握することで、自らが係る案件に対応可能な建設業者の規模における「忙しさ」をきちんと理解することが重要となるのです。なぜならば、建設業者全体を見た場合に「忙しい」と導かれた結論が、実はある特定規模の建設業者の「もの凄く忙しい」に引っ張られたことによる偏った結論である可能性があるからです。

「業者の規模別」に「建設業者の忙しさ」を覗いてみよう!


それでは業者の規模を「大手5社」「大手5社を除く大手50社」「大手50社以外」の3つの規模に分類し、それぞれについて、比較的簡単に入手可能な指標である「未消化工事高(円)」と「手持ち工事月数(カ月)」の2つの指標から、実際に規模別の「忙しさ」を見ていきましょう。(「未消化工事高」および「手持ち工事月数」については前回のコラム参照

①「未消化工事高」からの比較
まず、金額ベースである「未消化工事高」の観点より、建設業者の規模別にその傾向を見てみることとします。下図1から図3が示すように「大手5社」と「大手50社以外」の規模においては12年頃より15年まで「未消化工事高」は増加しておりこの間に段々と「忙しくなっている」と読み取ることができます。一方で「大手5社を除く大手50社」の規模では、同指標は14年から15年にかけて概ね同じ水準で推移したことが分かります。


大手5社-未消化工事高(兆円)



大手5社を除く大手50社-未消化工事高(兆円)



大手50社以外-未消化工事高(兆円)


ここで重要なことは、図2より「大手5社を除く大手50社」である建設業者が「忙しくなくなった」わけではないということです。同規模における「未消化工事高」は低い水準にあった09年の4.2兆円と比較すると15年の時点では6.5兆円と約55%高い水準にあり、依然として「忙しい」と判断できます。つまり、上図2より、同規模における建設業者の忙しさは「依然として忙しいものの、その加速度は徐々に緩和されつつある」と、その傾向について適切に読み取ることが重要です。

②「手持ち工事月数」からの比較
次に「手持ち工事月数」の観点より、建設業者の規模別にその傾向を見てみましょう。下図4から図6が示すように「大手5社」と「大手50社以外」の規模においては、先に述べた「未消化工事高」と同様に、12年頃より15年まで「手持ち工事月数」は段々と延びており、この間「忙しくなっている」ことが分かります。一方、「大手5社を除く大手50社」の規模では、同指標は14年から15年にかけて11.7ヵ月から9.7ヵ月へと2ヵ月程度短くなっており、15年は14年と比較して「忙しさ」が緩和された可能性があると読み取ることができます。


大手5社手持ち工事月数(ヶ月)



大手5社を除く大手50社-手持ち工事月数(ヶ月)



大手50社以外-手持ち工事月数(ヶ月)


ところで、一般に「手持ち工事月数」は業者規模が大きくなればなるほどに長くなることを補足として紹介します。これは、業者規模が大きくなるに比例して受注する工事の規模が大きくなる傾向がある為、結果として工期が長くなることに起因します。したがって、規模が異なる建設業者で得られた「手持ち工事月数」を直接比較してもあまり意味がなく、例えば、15年の同指標より大手5社(15.2ヵ月)は大手50社(4.6ヵ月)と比較して「3倍以上忙しい」わけではないので注意が必要です。

③「未消化工事高」と「手持ち工事月数」を併せて読み取れることは?
上記の内容から、「大手5社」と「大手50社以外」の規模においては、12年頃より15年までの間で依然として「忙しくなっている」ことが読み取れる一方、「大手5社を除く大手50社」は14年から15年にかけて「忙しさのピークを迎えた可能性がある」ことが読み取れます。

以上より、これら「未消化工事高」と「手持ち工事月数」の2つの観点から、業者規模別の「建設業者の忙しさ」を覗いてみると、規模が異なることで、その傾向も異なることが分かりました。但し、この結果はあくまでも「未消化工事高」と「手持ち工事月数」の2つの指標を用いた観点からのみより得られた結果であることに留意することが必要です。

また、ここで活用した2つの指標以外にも情報が得られる場合には、ここで得られた結果をそれらの視点から検証することも重要です。なぜならば、より多くの視点から同一の結論を導くことができるのであれば、より説得力や説明力を有する結論となるからです。

このように、建設市場における「供給」について把握しようとする場合には、業者の規模別にその中身を覗いてみることで、より理解を深めることが可能になるのです。

次回は、さらにもう一歩踏み込み、個別に「建設業者の忙しさ」を把握して、その結果を実際の開発プロジェクトで活用するアプローチにフォーカスして分かりやすく解説していきたいと思います。

建設市場における供給のPoint(3)
①「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう!
②業者規模は「大手5社(スーパーゼネコン)」「大手5社を除く大手50社(準大手・中堅ゼネコン)」「大手50社以外(中小規模の建設会社)」といった3つの規模から着目してみよう!
③「未消化工事高」や「手持ち工事月数」といった比較的簡単に入手可能な指標を活用しよう!
④業者規模が異なることで「建設業者の忙しさ」も異なる場合があると理解しよう!

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