五洋建設の状況|準大手ゼネコンの状況把握【2021年版】
【業績から把握する五洋建設|2021年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は準大手ゼネコンである五洋建設について紹介していきます。具体的には、2021年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2020年度における五洋建設の受注高は5053億円と前年度から約14.9%の増加となりました。受注高は2017年度の6686億円より2019年度の4398億円まで2年連続で減少しておりましたが、2020年度は増加に転じていることが読み取れます。この2020年度の水準は、底となった2012年度の2814億円と比較すると約79.5%高い水準にあり、過去10年間で3番目に高い水準となっていることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約61.7%、土木工事が約38.3%を占め、建築工事の比率が土木工事の比率を上回っていることが分かります。(下図参照)
準大手ゼネコン10社の受注高における建築工事割合が平均で約67%であることを踏まえると、五洋建設は建築工事と土木工事のバランスが準大手ゼネコンの平均に比較的近いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2020年度における売上高は4451億円と前年度より約17.8%の減少となりました。売上高は2011年度の3086億円から2019年度の5415億円まで8年連続の継続的な増加傾向にありましたが、9年ぶりに減少していることが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2020年度における五洋建設の繰越高は8163億円と前年度から約7.3%の増加になりました。繰越高は2014年度の7624億円から2年連続の減少傾向で推移した後、2017年度に8753億円と急増しました。そこから2019年度の7595億円まで2年連続で減少していましたが、2020年度は増加に転じています。この2020年度の水準は、底となった2012年度の3151億円と比較して約2.6倍高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2020年度における五洋建設の手持ち工事月数22.0ヵ月と2019年度の16.8ヵ月より大きく増加しています。この2020年度の水準は、2014年度の23.2ヵ月に次いで、過去10年間で2番目に高い水準にあることが読み取れます。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2020年度における五洋建設の営業利益は270億円と前年度より約8.0%の減少となりました。営業利益は2012年度の71億円から2019年度の293億円まで7年連続の長期的な増加傾向にありましたが、2020年度は8年ぶりの減少となっています。この2020年度の水準は、底となっていた2012年度の水準と比較すると約3.8倍以上と、前年度より減少したものの、以前として高い水準にあることが読み取れます。(下図参照)
一方、2020年度の営業利益率は6.1%と直近の10年間で最も高い水準となっています。営業利益率は2014年度の2.5%を底として2020年度まで6年間の継続的な上昇傾向で推移しています。
5. 従業員の状況
2020年度における五洋建設の従業員数は4889人でした。従業員数は、2018年度の4846人まで5年連続の増加傾向で推移していましたが、2019年度は4835人と僅かながら減少しました。2020年度は概ね横ばいながらも2019年度より若干増加していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2020年度における従業員の平均年齢は42.1歳、平均勤続年数は17.5年、平均年収は878.0万円でした。
さらに五洋建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約103.3(百万円/人)、91.0(百万円/人)、167.0(百万円/人)、5.5(百万円/人)となっていることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【五洋建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 5053億円 | |
② 売上高 | 4451億円 | |
③ 繰越高 | 8163億円 | |
④ 営業利益 | 270億円 | |
⑤ 営業利益率 | 6.1% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 22.0ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 4889人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.1歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 17.5年 | |
⑩ 平均年収 | 878.0万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 103.3(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 91.0(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 167.0(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 5.5(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 3116億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 1933億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 3億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして準大手ゼネコンである五洋建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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