熊谷組の状況|準大手ゼネコンの状況把握【2021年版】
【業績から把握する熊谷組|2021年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は準大手ゼネコンである熊谷組について紹介していきます。具体的には、2021年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2020年度における熊谷組の受注高は2834億円と前年度から約12.8%の減少となりました。受注高は2016年度の2847億円から2018年度の4540億円まで2年連続の増加傾向で推移していましたが、2019年度から2年連続で減少しています。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約64.7%、土木工事が約35.3%を占めていることが分かります。(下図参照)
準大手ゼネコン10社の受注高における建築工事割合が平均で約67%であることを踏まえると、熊谷組は準大手ゼネコンの中でも僅かながら建築工事の割合が高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2020年度における売上高は3602億円と前年度より約2.3%の増加となりました。売上高は底であった2012年度の1949億円から2014年度の2882億円まで増加傾向で推移しましたが、2015年度に2675億円まで減少しています。その後、2020年度まで5年連続の増加傾向で推移しており、直近の10年間で最も高い水準となっています。また、この2020年度における売上高の水準は、2012年度と比較して約84.8%高い水準となっており、この8年間で飛躍的に増加したことが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2020年度における熊谷組の繰越高は4662億円と前年度から約14.2%の減少となりました。繰越高は2011年度の1952億円から2018年度の5704億円まで7年連続の増加傾向で推移しましたが、2019年度から2年連続の減少となっています。この2020年度の水準は2011年度の水準と比較して約2.4倍高い水準にあり、2年連続で減少したものの、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は依然として非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2020年度における熊谷組の手持ち工事月数は15.5ヵ月と2018年度における22.3ヵ月より2年連続の減少となりました。また、この2020年度の水準は、過去10年間で4番目に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2020年度における熊谷組の営業利益は224億円と前年度より約10.9%の増加となりました。営業利益は、2016年度の211億円まで4年連続の増加傾向で推移し、2017年度に179億円まで減少した後、2018年度に211億円まで回復しました。その後、2019年度に若干減少したものの、2020年度は再び増加に転じ、過去10年間で最も高い水準となっていることが読み取れます。(下図参照)
また、2020年度の営業利益率は6.2%でした。営業利益率は2016年度の7.7%まで上昇傾向で推移し、2017年度に6.1%の水準まで下落した後、2018年度は6.9%の水準まで回復しています。その後、2019年度に5.7%まで下落したものの、営業利益の推移と同様に2020年度は再び上昇してることが分かります。
5. 従業員の状況
2020年度における熊谷組の従業員数は2620人と2013年度より7年連続の穏やかな増加傾向で推移していることが読み取れます。(下図参照)
また、2020年度における従業員の平均年齢は44.3歳、平均勤続年数は19.4年、平均年収は802.2万円でした。
さらに熊谷組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約108.2(百万円/人)、137.5(百万円/人)、178.0(百万円/人)、8.6(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【熊谷組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 2834億円 | |
② 売上高 | 3602億円 | |
③ 繰越高 | 4662億円 | |
④ 営業利益 | 224億円 | |
⑤ 営業利益率 | 6.2% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 15.5ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 2620人 | |
⑧ 平均年齢 | 44.3歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 19.4年 | |
⑩ 平均年収 | 802.2万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 108.2(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 137.5(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 178.0(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 8.6(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1833億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 1001億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 0億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして準大手ゼネコンである熊谷組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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