熊谷組の状況|準大手ゼネコンの状況把握【2022年版】
【業績から把握する熊谷組|2022年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は準大手ゼネコンである熊谷組について紹介していきます。具体的には、2022年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2021年度における熊谷組の受注高は3502億円と前年度から約23.6%の増加となりました。受注高は2016年度の2847億円から過去10年間で最も高い水準となった2018年度の4540億円まで2年連続の増加傾向で推移しました。その後、受注高は2019年度から2年連続で減少していましたが、2021年度は再び増加に転じました。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約68.4%、土木工事が約31.6%を占めていることが分かります。(下図参照)
準大手ゼネコン10社の受注高における建築工事割合が平均で約67%であることを踏まえると、熊谷組は建築工事と土木工事のバランスが準大手ゼネコンの平均に極めて近いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2021年度における売上高は3310億円と前年度より約8.1%の減少となりました。売上高は底であった2012年度の1949億円から2014年度の2882億円まで増加傾向で推移しましたが、2015年度に2675億円まで減少しています。その後、直近の10年間で最も高い水準となった2020年度の3602億円まで5年連続で増加していましたが、2021年度は減少に転じています。また、この2021年度における売上高の水準は、2012年度と比較して約69.8%高い水準となっており、前年度より減少したものの、依然として高い水準にあることが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2021年度における熊谷組の繰越高は4855億円と前年度から約4.1%の増加となりました。繰越高は2018年度の5704億円まで7年連続の増加傾向で推移した後、2019年度から2年連続で減少しましたが、2021年度は再び増加に転じています。この2021年度の水準は2011年度の水準と比較して約2.5倍高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は依然として非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2021年度における熊谷組の手持ち工事月数は17.6ヵ月と前年度から2.1ヵ月の増加となりました。手持ち工事月数は2018年度における22.3ヵ月より2年連続で減少していましたが、2021年度は増加に転じており、過去10年間で3番目に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2021年度における熊谷組の営業利益は178億円と前年度より約20.8%の減少となりました。営業利益は、2016年度の211億円まで4年連続の増加傾向で推移し、2017年度に179億円まで減少した後、2018年度に211億円まで回復しました。その後、過去10年間で最も高い水準となった2020年度の224億円から再び減少していることが読み取れます。(下図参照)
また、2021年度の営業利益率は5.4%でした。営業利益率は2016年度の7.7%まで上昇傾向で推移し、2017年度に6.1%の水準まで下落した後、2018年度は6.9%の水準まで回復しています。その後、2020年度に6.2%まで上昇したものの、営業利益の推移と同様に2021年度は再び下落してることが分かります。
5. 従業員の状況
2021年度における熊谷組の従業員数は2626人と2013年度より8年連続の穏やかな増加傾向で推移していることが読み取れます。(下図参照)
また、2021年度における従業員の平均年齢は44.1歳、平均勤続年数は19.2年、平均年収は840.9万円でした。
さらに熊谷組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約133.4(百万円/人)、126.1(百万円/人)、184.9(百万円/人)、6.8(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【熊谷組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 3502億円 | |
② 売上高 | 3310億円 | |
③ 繰越高 | 4855億円 | |
④ 営業利益 | 178億円 | |
⑤ 営業利益率 | 5.4% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 17.6ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 2626人 | |
⑧ 平均年齢 | 44.1歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 19.2年 | |
⑩ 平均年収 | 840.9万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 133.4(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 126.1(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 184.9(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 6.8(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 2394億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 1108億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 0億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして準大手ゼネコンである熊谷組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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