前田建設工業の状況｜準大手ゼネコンの状況把握【2023年版】
【業績から把握する前田建設工業｜2023年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は準大手ゼネコンである前田建設工業について紹介していきます。具体的には、2023年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考｜主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2022年度における前田建設工業の受注高は3669億円と前年度から約12.7%の減少となりました。受注高は2016年度の4502億円から2017年度の3738億円まで減少した後、2018年度には4281億円の水準まで回復しました。そして、受注高は、2019年度に4085億円まで減少した後、2021年度の4205億円まで2年連続で増加しましたが、2022年度は減少へ転じています。この2022年度の水準は、底であった2011年度の水準と比較すると25.1%高い水準にあることが分かります。（下図参照）
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約71.0%、土木工事が約29.0%を占めていることが分かります。（下図参照）
準大手ゼネコン10社の受注高における建築工事割合が平均で約66%であることを踏まえると、前田建設工業は準大手ゼネコンの中でも建築工事の割合が比較的大きいゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2022年度における売上高は3759億円と前年度より2.8%の増加となりました。売上高は、2011年度の2590億円から2015年度の3726億円まで継続的な増加傾向で推移した後、2016年度に3381億円まで減少しました。そこから、2018年度の4013億円まで増加傾向で推移した後、2021年度の3658億円まで3年連続で減少しましたが、2022年度は増加に転じています。この2022年度の水準は、底であった2011年度と比較して約45.1%高い水準にあり、依然として高い水準となっていることが読み取れます。（下図参照）
3. 繰越高の状況
続いて、2022年度における前田建設工業の繰越高は7182億円と前年度から概ね横ばい僅かに増加しました。繰越高は2013年度の4015億円から2016年度の5688億円まで増加傾向で推移した後、2017年度は概ね横ばいとなりました。その後、2018年度から5年連続の増加となっています。この2022年度の水準は、過去10年間で最も高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が非常に高い水準にあることが分かります。（下図参照）
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2022年度における前田建設工業の手持ち工事月数は22.9ヵ月と、2021年度の23.6ヵ月から減少しました。また、この2022年度の水準は、直近の10年間で2番目に高い水準であることが分かります。（下図参照）
4. 営業利益・営業利益率の状況
2022年度における前田建設工業の営業利益は299億円と前年度より約9.5%の増加となりました。そして、2012年度の-87億円から2018年度の298億円まで6年連続の長期的な増加傾向で推移した後、2019年度に286億円まで減少しました。その後、営業利益は、2021年度の273億円まで減少したものの、2022年度に増加に転じ、この10年間で最も高い水準となっています。（下図参照）
また、2022年度の営業利益率は8.0%と前年度より上昇しました。営業利益率は、2012年度を底として2017年度の7.4%まで継続的に上昇した後、2019年度まで概ね横ばい傾向で推移しました。そして、過去10年間で最も高い水準となった2020年度の8.1%まで上昇した後、2021年度は7.5%まで下落したものの、2022年度は再び上昇に転じていることが分かります。
5. 従業員の状況
2022年度における前田建設工業の従業員数は3277人と2011年度より11年連続の非常に穏やかな増加傾向で推移していることが読み取れます。この2022年度の従業員数は2011年度の水準と比較すると約19.3%高い水準にあり、従業員数はこの11年間で2割近く増えたことが分かります。（下図参照）
続いて、2022年度における従業員の平均年齢は40.4歳、平均勤続年数は14.8年、平均年収は967.1万円でした。（注1）
さらに前田建設工業の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約112.0（百万円/人）、114.7（百万円/人）、219.2（百万円/人）、9.1（百万円/人）となっています。（下図参照）
参考｜主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【前田建設工業の状況｜主要データ一覧】
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| ① 受注高 | 3669億円 | |
| ② 売上高 | 3759億円 | |
| ③ 繰越高 | 7182億円 | |
| ④ 営業利益 | 299億円 | |
| ⑤ 営業利益率 | 8.0% | ④÷② |
| ⑥ 手持ち工事月数 | 22.9ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
| ⑦ 従業員数 | 3277人 | |
| ⑧ 平均年齢 | 40.4歳 | |
| ⑨ 平均勤続年数 | 14.8年 | |
| ⑩ 平均年収 | 967.1万円 | |
| ⑪ 従業員あたり受注高 | 112.0（百万円/人） | ①÷⑦ |
| ⑫ 従業員あたり売上高 | 114.7（百万円/人） | ②÷⑦ |
| ⑬ 従業員あたり繰越高 | 219.2（百万円/人） | ③÷⑦ |
| ⑭ 従業員あたり営業利益 | 9.1（百万円/人） | ④÷⑦ |
| ⑮ 受注高（建築） | 2605億円 | |
| ⑯ 受注高（土木） | 1065億円 |
注1）平均年齢、平均勤続年数、平均年収の値はインフロニア・ホールディングスの値に基づいて作成。
注2）値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして準大手ゼネコンである前田建設工業の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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