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「影響要因」を把握して説得力のある建設需要予測を導こう!-面白いほどよくわかる建設市場-需要編(5)

建設業をわかりやすく解説する「面白いほどよくわかる建設市場」の「需要編」、第4回であった前回のコラムでは建設市場における「需要」の傾向把握にフォーカスし、その目的や活用に適している指標の紹介をしました。
「需要編」の最終回となる今回は、建設市場の「需要」に影響を与える「要因」にフォーカスして分かりやすく紹介していきたいと思います。

面白いほどよくわかる建設市場-需要編(5)

「建設需要」に影響を与える「要因」とは?


一般に、建設需要に影響を与える「要因」は数多くありますが、大きく分類すると下記のような「要因」が挙げられますので解説していきましょう。

①景気/経済状況による要因
②社会的ニーズによる要因
③政府等の政策による要因
④価格による要因
⑤特殊な要因

①景気/経済状況による要因
まず「景気/経済状況による要因」が挙げられます。例えば、景気が右肩上がりの状況では、開発事業者は住宅やオフィスの需要が増えるであろうと開発事業を積極的に進め、また、製造業者も受注や販売が増えるであろうと工場や倉庫といった設備投資を進んで行うので、建設の需要は増加する傾向にあります。一方、バブル崩壊後やリーマン・ショック後のように景気が良くない状況下では反対の動きとなるため、一般に建設需要は減少する傾向にあります。

②社会的ニーズによる要因
次に「社会的ニーズによる要因」が挙げられますが「国内における人口減少」や「就労スタイルの変化」などがこの要因にあたります。例えば、国内における人口が減少すると必要な住宅の絶対数が減る為、住宅の需要が減少します。また「就労スタイルの変化」により在宅勤務やフリーアドレスのオフィスが増えると、これに伴い必要なオフィスのスペースも減っていくのでオフィス需要が減少します。

③政府等の政策による要因
「政府等の政策による要因」としては大きくは「法改正」「金利政策」「消費増税」などが挙げられます。例えば「法改正」によって耐震基準が変わった場合、基準を満たしていない建物は耐震補強工事が必要となる為、これらの需要が増加します。一方で「金利政策」により金利が上昇した場合、一般的には住宅ローンも上昇する為、住宅需要が減少する傾向に向かいます。また「消費増税」は増税年の前年に大きな規模の住宅需要を生みますが、増税年以降に住宅需要を大きく減少させる傾向があります。

④価格による要因
「価格による要因」では「工事費」や「地価」が挙げられます。例えば、「工事費」や「地価」が高騰すると、開発を計画していた企業が「工事費が高騰して予算を大幅に超過してしまった」などの理由で開発が延期や中止となる場合、また「地価が高騰して土地の仕込みが困難である」などの理由から開発案件の数そのものが減ってしまう場合などの為、建設の需要は減少する傾向にあります。

⑤特殊な要因
最後に「特殊な要因」としては「震災・災害」や「オリンピック等の国際イベントの開催」などが挙げられます。例えば、大地震による震災や戦争によって町や都市が壊滅的な被害を受けた場合、その復興の為、大きな規模の建設需要が生まれます。また、オリンピックや万博といった国際的なイベントが開催される場合では、開催都市においては、競技場など関連施設の建設需要、イベント開催に向けた近郊ホテルなど宿泊施設の建設需要や改修工事需要が増加する傾向にあります。

このように、これら建設需要に影響を与える「要因」は、実際に需要が増加したり減少したりと変動する前に作用している為、例えば、下図のように「要因」が発生してからタイムラグを経て需要が変動するのが一般的であります。


建設需要に影響を与える要因


これまでに「建設需要」に大きな影響を与えてきた主要な「要因」とは!?


それでは過去に建設需要に大きな影響を与えてきた主要な要因について実際にいくつか例にとって説明していきたいと思います。

まず「景気状況/経済状況による要因」として90年に起きた「バブル崩壊」と08年に起きた「リーマン・ショック」が挙げられます。下図の通り、これらの「要因」によって、その後の建築需要がそれぞれ93年までに約19%、09年までに27%と大きく減少していることが読み取れます。


バブル崩壊とリーマンショックの建築需要への影響



次に挙げられるのが「政府等の政策による要因」としての「消費増税」です。消費税が89年に導入されて以降、これまで97年と14年にそれぞれ5%、8%へと消費税の引き上げが行われてきました。下図より消費税が引き上げられる年の前年における住宅需要は大きく増加する一方、増税年における住宅の需要は大きく落ち込んでいることが読み取れます。


消費税が引き上げられる際の住宅需要への影響


これは、一般に、車や住宅などの高額な商品を購入するのであれば、消費税が引き上げられる前に購入しようとする動きが消費者の中で強く働く為であると考えられます。つまり、消費増税の年に住宅購入を検討していた人が、消費税の引き上げ前に購入するといった「先買い」の現象が起きるのです。その結果、消費税の引き上げられる年の前年における住宅需要は大きく増加する傾向にあり、その反面、増税が実施される年における住宅需要は「先買い」によって需要が前年に繰り上げされた影響で大きく減少する傾向にあります。

最後に「特殊な要因」として11年に起きた「東日本大震災」を例に挙げ解説していきます。11年3月に発生した東日本大震災の影響で多くの家屋、建物が倒壊し、広範囲でインフラ設備が被害を受けました。政府は被害を被った地域における復興を目指し復興庁を設置し、復興に必要となる大規模な予算を確保しました。その影響を受け、下図が示すように震災発生の4年間における公共建設需要と比較して、震災発生後の4年間では約6割の需要増となっていることが読み取れます。


東日本大震災の復興に係る公共建設需要への影響


ここまで建設需要に大きな影響を与えた主要な「要因」をいくつか紹介しましたが、これらはあくまでも需要が大きく変動した際に主要であると考えられる「要因」であり、実際にはこれら以外の多くの「要因」が影響した結果として需要が変動したということを理解することが重要であります。なぜならば、建設市場における需要に非常に大きな影響を与える「要因」はあるものの、一要因のみによって建設市場の需要が決定されることはまずないと言えるからであります。

「面白いほどよくわかる建設市場-需要編」完結!新編へ!


これまで5回にわたり建設市場の「需要」を読み解く方法について、例を用いながら紹介してきました。その中でも、特に今回紹介してきました需要に影響を与える「要因」については、これらが建設市場のどの需要にどの程度の大きさの影響を与えるのかを把握することが非常に重要となります。なぜならば、これらの「要因」が影響を与える需要や、その影響度について理解を深めて把握することで、例えば、将来的な建設需要の規模や傾向について予測したり、仮説を立てたりする際、論理的思考に基づいた説得力/説明力のある結論を導くことが可能となるからであります。

次回からのコラムでは新編である「面白いほどよくわかる建設市場-供給編」として、建設市場に関連する「供給」にフォーカスしてお話をしていきたいと思います。

建設需要のPoint(5)
①「建設需要」に影響を与える「要因」は大きく5タイプに分類される!
 ・景気/経済状況による要因
 ・社会的ニーズによる要因
 ・政府等の政策による要因
 ・価格による要因
 ・特殊な要因
②「要因」が発生してから「建設需要」が実際に変動するまでにはタイムラグが生じる!
③建設需要に影響を与える「要因」は一因のみでない!
④影響度の大小はあるものの、多くの「要因」が同時に建設需要に影響を及ぼしている!
⑤「どの要因が?」「どの需要に?」「どの程度の大きさの影響を与える?」のかを把握することが非常に重要!

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