建設需要の傾向を読み解いて市場の先行きを考えよう!-面白いほどよくわかる建設市場-需要編(4)

建設業をわかりやすく解説する「面白いほどよくわかる建設市場」の「需要編」、3回目であった前回のコラムでは建設市場における「需要」の中身にフォーカスして、具体的にどこに「需要」があるのかを紐解く方法について紹介しました。4回目の今回は、建設市場における「需要」の傾向把握にフォーカスして色々と紹介したいと思います。

面白いほどよくわかる建設市場-需要編(4)

「需要」の傾向を把握する目的は!?


本シリーズ第1回のコラムでも触れましたが、「建設需要」という言葉はニュースや新聞、雑誌などを通して多くの人に多様な目的で活用されています。

例えば、投資家や建設業関係者はこれらの情報源から建設市場における「需要」の大きさや傾向を掴みます。そして、「今後、建設市場全体が伸びていきそうだ。」とか「その中でも特にオフィス建設需要が伸びていきそうだ。」といったような仮説を立て、今後の「投資先」や「主力とする商品開発の方向性」を検討するのです。

その為、ニュースや新聞雑誌等の「建設需要」に関する記事では必ずと言ってよいほど「前年比で〇〇%増加した。」や「前年同月比で●●%下落した。」などと、現在と過去の時点と比較して「需要」の変化や傾向が読み取れる内容になっています。

このように、建設市場における「需要」を把握する際には「需要」の大きさを把握するだけでなく、同様にその変化や傾向を把握することが非常に重要となります。

「需要」の傾向を把握するのに適している指標とは!?


まず、建設市場における市場規模の大きさや傾向について語られる際、必ずと言ってよいほど登場する建設投資のグラフを紹介します(下図1)。


建設投資額の推移(兆円)


このグラフは建設投資額(兆円)といった金額ベースで市場規模の変化が理解しやすいこともあり本当に多くのケースで使われています。例えば、このグラフを用いることで「建設市場の規模はバブル崩壊後の20年間で84兆円から42兆円に半減したが、近年回復傾向にある。」などと非常に分かりやすく市場規模の流れを説明することができます。

しかしながら、この建設投資額は利用しやすい一方「維持・修理に係る投資額が含まれてない」とか「特定の時点における需要を示す受注高とは異なり、工事の出来高に応じた出来高ベースの実績額である」といったような落とし穴も抱えています。その為、この指標をきちんと理解しないまま活用すると、例えば、建設投資額は「建設市場における全ての需要を表している」などと勘違いを引き起こしてしまいます。

したがって、建設市場における「需要」の変化や傾向を掴む際には「建設投資額」の指標ではなく「建設会社の受注高(円)」や「新設住宅着工戸数(戸)」や「建築着工床面積(㎡)」といった指標を用いる方が、より適正に「需要」の傾向について把握することができるのです。

実際に建設市場の「需要」に関する傾向を把握してみよう!


それでは実際に、統計データを活用して2015年までの建設市場における「需要」の傾向見ていくこととします。


受注高の推移(兆円)


まず、建設市場における全体需要の規模や傾向を受注高ベース、つまり建設会社によって受注された工事の金額(兆円)に基づいて紹介します。

上図2から、01年に41兆円であった「需要」規模は、35兆円である08年まで増減を繰り返しながら縮小していることが読み取れます。さらに09年には29兆円まで落ち込み、この低い水準は11年まで続いていることが分かります。そして12年に一変し、一気に45兆円まで回復、その後は15年までに55兆円規模と順調に大きくなっていることが読み取れます。


建築着工床面積の推移百万平方メートル


次に、建設需要の7割以上を占める建築需要の傾向について、着工床面積ベース、つまり着工された工事の床面積(㎡)に基づき見てみましょう。

まず、上図3から、建築需要は90年に2億8千万㎡で最大規模となり、翌91年に急減していることが読み取れます。そして、95年まで徐々に減少するも、96年に2億6千万㎡の水準まで一気に回復していることが分かります。しかしながら、翌97年に再び急減してしまい、増減を繰り返し08年まで減少傾向で推移するも、09年にさらに大きく落ち込み1億1千万㎡と90年の約40%の水準に縮小していることが読み取れます。その後、13年まで順調に1億5千万㎡の水準に回復するも、14年、15年と連続して減少して15年は1億3千万㎡の需要規模となっていることが分かります。


新設着工住宅の推移(万戸)


最後に、建築需要の6割弱を占める住宅需要の傾向を、新設着工住宅ベース、つまり着工された新設住宅の戸数(万戸)に基づいて、見てみることにしましょう。

上図4より、まず、建築需要は90年に171万戸で最大の規模となり、翌91年に急激に落ち込んでいることが読み取れます。また、その後96年までに需要が回復するも、再び翌97年に急減していることが分かります。そして、増減を繰り返しながら08年まで減少傾向で推移して、09年には79万戸と90年の半分以下の水準に一気に減少していることが読み取れます。さらには、13年まで順調に98万戸の水準まで回復するも、翌14年にまたもや急減、15年は若干回復して91万戸の需要規模となっていることが分かります。

ここまで図2、3、4から顕著に読み取れることを挙げましたが、これらの図から共通して読み取れる内容を以下に挙げてみます。

【図2、3、4から共通して読み取れる内容】
①「需要」は90年を最大規模として翌91年に急減している。(図3、4より)
②「需要」は96年に急増し翌97年に急減している。(図3、4より)
③「需要」は08年から09に急激に減少している。(図2、3,4より)
④「需要」は09年に急激してからその後回復傾向にある。(図2、3,4より)
⑤ 15年における「需要」の規模は90年と比較して概ね半分程度の規模に縮小している。(図3、4より)

実は、建設市場における「需要」の傾向を把握する際は、このように複数の情報から共通して読み取れる事項を洗い出して整理することがとても重要です。なぜならば、上記のように複数の情報源から共通して読み取れる内容は、より説得力や説明力を有すると共に、より実態を表している可能性が高いからです。

建設市場における「需要」の傾向把握から生まれる「なぜ?」…


ここまで建設市場における「需要」の傾向把握について、実例を用いて淡々と解説して来ました。ところで、先に挙げたグラフを見ていただくと読み取れるように、いずれのグラフにおいても「需要」が急に増えたり、急に減ったり、していますが「なぜ」でしょうか?

それは「需要」の急増や急減に影響を与える「要因」が背景としてあったからです。例えば、分かりやすい例では、図3、4では90年から91年にかけて「需要」が大幅に減少していることが読み取れますが、これはバブル経済の崩壊で景気が冷え込んだ影響を受けた結果であります。

このように、建設市場で「需要」の傾向を把握する際は「需要」が大きく増加した、または減少した時点について「なぜ?」と考え、どのような「要因」が影響を与えているのかを把握することが重要です。なぜならば「需要」に影響を及ぼす「要因」をしっかりと把握することで、建設市場の「需要」についてより理解を深めて、さらに奥へと紐解くことが可能となるからです。

そこで、次回は建設市場の「需要」に影響を与える「要因」にフォーカスして、分かりやすく解説していきたいと思います。

建設需要のPoint(4)
①「需要」を把握する際には、規模や大きさを把握するだけでなく、変化や傾向を把握することが重要!
②「建設投資額」の指標を活用する際は注意が必要!
③「需要」の傾向把握では、「受注高」「着工床面積」「着工住宅戸数」といった指標を活用しよう!
④「需要」の傾向把握では、複数の情報から共通して読み取れる内容を整理することが重要!
⑤「需要」が大きく増減した時点で、どのような「要因」が影響を与えていたのかを把握することが重要!

【今回採用した図(グラフ)の表現方法について】
余談ですが、一般に、統計データを活用して傾向把握を試みる場合、その表現方法について、例えば、イメージは「表かグラフか?」、グラフなら「折線グラフか棒グラフか?」、単位は「実数か指数かパーセントか?」、時系列は「月か四半期か年か?」などといったことを検討し、目的に沿って用いるのが一般的です。

しかしながら、今回のコラムでは「需要」の傾向把握について分かりやすく紹介することを目的としている為、これらの説明は省きました。統計データを図表に起こして、どのような手順で目的に適った表現方法を取捨選択するのか?といったお話については、別途機会を設けその際に紹介させてもらいます。

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