大成建設の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する大成建設|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである大成建設について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における大成建設の受注高は1兆3397億円と前年度から約0.2%の増加となりました。受注高は2016年度の1兆3482億円から2017年度の1兆4176億円まで増加するも、2018年度には1兆3366億円と減少、2019年度は僅かながら増加した形となりました。なお、大成建設の受注高は2013年度より2019年度まで継続的に1兆3000億円から1兆4000億円超の水準で推移しており、大きな目では概ね横ばい傾向の推移となっていることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約75.6%を占めている一方、土木工事は22.5%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約77%であることを踏まえると、大成建設は建築工事と土木工事のバランスがスーパーゼネコンの平均に非常に近いゼネコンであると考えられます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は1兆4095億円と前年度より約6.1%の増加となりました。売上高は2016年度の1兆1767億円から3年連続の増加傾向で推移し、この9年間で最も高い水準となっていることが読み取れます。この2019年度の水準を底であった2011年度の1兆251億円と比較してみると、売上高は8年間で約37.5%と4割近く増加していることが分かります。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における大成建設の繰越高は2兆2213億円と前年度から約3.0%の減少となりました。繰越高は2012年度の1兆5541億円より6年連続の増加傾向で推移し、2018年度に2兆2911億円と直近の9年で最も高い水準となっていましたが、2019年度は7年ぶりに減少へ転じました。また、2019年度の水準は、2012年度の水準と比較して約42.9%高い水準にあり、前年度より減少となったものの、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における大成建設の手持ち工事月数は18.9ヵ月と2016年度における21.8ヵ月から3年連続の減少となりました。この2019年度の水準は、2014年度の17.6ヵ月と2015年度の19.3ヵ月の間に位置し、直近の9年間で5番目に高い水準となっていることが読み取れます。(下図参照)
また、手持ち工事月数は3年連続の減少となりましたが、これは2016年度から2019年度まで売上高の変動率が繰越高の変動率を上回っていることを示しています。実際に、この3年間で売上高は約19.8%増加しているのに対して、繰越高は3.9%の増加と、売上高の増加率が繰越高の増加率を上回る形となっています。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は1416億円と前年度より約5.9%増加しました。大成建設の営業利益は2012年度の224億円から2017年度の1576億円まで5年連続で増加しました。そして、2018年度に1338億円と減少しましたが、2019年度は増加に転じています。(下図参照)
また、2019年度の営業利益率は10.0%となりました。営業利益率は2012年度の2.1%を底として2017年度の12.4%まで継続的な上昇傾向で推移していましたが、営業利益の減少を反映する形で2018年度は10.1%まで下落しました。一方、2019年度では営業利益は増加となりましたが、営業利益率は2018年度から概ね横ばいながら僅かに下落しています。
5. 従業員の状況
2019年度における大成建設の従業員数は9680人でした。従業員数は2012年度の9021人から2016年度の9635人まで穏やかに増加し、2017年度に若干減少しましたが、その後は2年連続の増加傾向にあることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2019年度における従業員の平均年齢は43.0歳、平均勤続年数は18.3年、平均年収は1010.3万円でした。
さらに大成建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約138.4(百万円/人)、145.6(百万円/人)、229.5(百万円/人)、14.6(百万円/人)であることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【大成建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆3397億円 | |
② 売上高 | 1兆4095億円 | |
③ 繰越高 | 2兆2213億円 | |
④ 営業利益 | 1416億円 | |
⑤ 営業利益率 | 10.0% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.9ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 9680人 | |
⑧ 平均年齢 | 43.0歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 18.3年 | |
⑩ 平均年収 | 1010.3万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 138.4(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 145.6(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 229.5(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 14.6(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1兆125億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 3017億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 255億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである大成建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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