大林組の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する大林組|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである大林組について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における大林組の受注高は1兆5559億円と前年度から約17.2%の大幅な増加となりました。受注高は2011年度の1兆497億円から2015年度の1兆4290億円まで4年連続で増加し、その後は2017年度の1兆3208億円まで2年連続で減少しました。そして、2018年度は1兆3276億円と2017年度から概ね横ばい若干の増加でしたが、2019年度は大きく増加しています。また、この2019年度における受注高の水準は直近の9年間で最も高い水準となり、底であった2011年度の水準と比較してみると約48.2%増と5割近くも増加していることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約77.5%を占めている一方、土木工事は21.0%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約77%であることを踏まえると、大林組は建築工事と土木工事のバランスがスーパーゼネコンの平均に極めて近いゼネコンであると考えられます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は1兆4164億円と前年度より約1.3%の増加となりました。売上高は2011年度の9636億円から2014年度の1兆2598億円まで増加傾向で推移した後、2017年度の1兆2941億円までは概ね1兆2500億円から1兆3000億円の水準で推移していました。(下図参照)
そして、2018年度は1兆3983億円と2017年度から1000億円超の増加、2019年度は1兆4000億円を超え、過去9年で最も高い水準となっていることが読み取れます。この2019年度の水準を底となっていた2011年度の水準と比較してみると、売上高はこの8年間で約47.0%と5割近くも増加していることが分かります。
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における大林組の繰越高は1兆8097億円と前年度から約8.4%の増加となりました。繰越高は2011年度の1兆3886億円から2014年度の1兆4577億円までは概ね1兆4000億円前後の水準で推移し、その後は2017年度の1兆7408億円まで3年連続の増加傾向にありました。そして、2018年度は1兆6701億円と減少したものの、2019年度は再び増加に転じています。(下図参照)
この2019年度の水準は、底であった2011年度の水準と比較すると、約30.3%も高い水準にあり、直近の9年間で最も高い水準となっていることが分かります。
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における大林組の手持ち工事月数は15.3ヵ月と2018年度における14.4ヵ月から1ヵ月ほど高い水準となりました。また、この2019年度の水準は直近の9年間で見た場合、4番目に低い水準であることが読み取れます。(下図参照)
2019年度の手持ち工事月数は増加しましたが、これは2018年度から2019年度まで売上高の変動率が繰越高の変動率を下回っていることを示しています。具体的に、この1年間で売上高は約1.3%増加しているのに対して、繰越高は17.2%の増加と売上高の増加率が繰越高の増加率を下回る形となっています。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は1130億円と前年度より約8.3%減少しました。大林組の営業利益は2013年度の28億円から2018年度の1233億円まで5年連続の増加傾向にありましたが、2019年度は減少へ転じています。(下図参照)
また、2019年度の営業利益率は8.0%となりました。営業利益率は営業利益の増加傾向を反映する形で2013年度の0.2%を底として5年連続で上昇し、2018年度には8.8%と過去9年で最も高い水準となりましたが、2019年度は下落しています。
5. 従業員の状況
2019年度における大林組の従業員数は9669人と2012年度より7年連続の非常に穏やかな増加傾向で推移していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2019年度における従業員の平均年齢は42.6歳、平均勤続年数は17.2年、平均年収は1057.7万円でした。
さらに大林組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約160.9(百万円/人)、146.5(百万円/人)、187.2(百万円/人)、11.7(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【大林組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆5559億円 | |
② 売上高 | 1兆4164億円 | |
③ 繰越高 | 1兆8097億円 | |
④ 営業利益 | 1130億円 | |
⑤ 営業利益率 | 8.0% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 15.3ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 9669人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.6歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 17.2年 | |
⑩ 平均年収 | 1057.7万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 160.9(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 146.5(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 187.2(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 11.7(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1兆2056億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 3268億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 235億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである大林組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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