奥村組の状況|中堅ゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する奥村組|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は中堅ゼネコンである奥村組について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における奥村組の受注高は2189億円と前年度から約18.6%の大幅な減少となりました。受注高は2016年度の2429億円から2017年度の2021億円まで減少した後、2018年度は2688億円と3割以上の大幅な増加になりましたが、2019年度は減少へ転じていることが読み取れます。この2019年度の水準は、直近8年間で底となった2011年度の1400億円と比較すると56.3%高い水準にあることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約59.0%、土木工事が約41.0%となっており、約6割を建築工事が占めていることが分かります。(下図参照)
中堅ゼネコン8社の受注高における建築工事割合が平均で約52%であることを踏まえると、奥村組は中堅ゼネコンの中でも建築工事の比重が高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は2224億円と前年度より約3.2%の増加となりました。売上高は2014年度から2016年度までは2000億円前後で推移し、2016年度に2186億円の水準まで増加しました。その後、2018年度は2155億円と若干減少しましたが、2019年度は増加に転じ、過去9年間で最も高い水準となっています。この2019年度の水準は底となった2011年度の1700億円と比較すると約30.4%高い水準となっており、この8年間で比較的大きく増加していることが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における奥村組の繰越高は3516億円と前年度から約0.6%の増加となりました。繰越高は2012年度の1857億円から2016年度の3018億円まで増加傾向で推移した後、2017年度には2908億円の水準まで若干ながら減少しました。その後、2018年度から2年連続で増加して、過去9年間で最も高い水準となっていることが読み取れます。また、2019年度の水準は底となった2012年度の水準と比較して約89.3%高い水準にあり、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量が、この8年間で約1.9倍に膨れ上がったことが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における奥村組の手持ち工事月数は19.0ヵ月と2018年度における19.5ヵ月より若干低い水準になりました。2019年度の手持ち工事月数は前年度より減少しましたが、この水準は直近の9年間で2番目に高い水準となっており、依然として高水準にあることが分かります。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は116億円と前年度より約10.1%減少しました。奥村組の営業利益は2011年度の−40億円から2017年度の150億円まで6年連続の継続的な増加傾向で推移していましたが、2018年度から2年連続で減少していることが分かります。(下図参照)
一方、2019年度の営業利益率は5.2%でした。営業利益率は営業利益の推移と非常に類似した形で、底であった2011年度から2017年度の6.9%まで上昇した後、2018年度から2年連続で下落傾向にあります。
5. 従業員の状況
2019年度における奥村組の従業員数は2489人でした。また、従業員数は2014年度の2280人より5年連続の増加傾向で推移し、この間に約210人増加したことが読み取れます。(下図参照)
また、2019年度における従業員の平均年齢は42.8歳、平均勤続年数は16.8年、平均年収は952.5万円でした。
さらに奥村組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約87.9(百万円/人)、89.4(百万円/人)、141.3(百万円/人)、4.7(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【奥村組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 2189億円 | |
② 売上高 | 2224億円 | |
③ 繰越高 | 3516億円 | |
④ 営業利益 | 116億円 | |
⑤ 営業利益率 | 5.2% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 19.0ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 2489人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.8歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 16.8年 | |
⑩ 平均年収 | 952.5万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 87.9(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 89.4(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 141.3(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 4.7(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 1292億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 896億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 0億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして中堅ゼネコンである奥村組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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