飛島建設の状況|中堅ゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する飛島建設|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は中堅ゼネコンである飛島建設について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における飛島建設の受注高は1067億円と前年度から約29.6%の大幅な増加となりました。受注高は2016年度の1358億円から2017年度の1224億円まで減少した後、2018年度は1517億円と直近の9年間で最も高い水準まで大きく増加しましたが、2019年度は減少へ転じていることが読み取れます。この2019年度の水準は、この9年間で最も低い水準となった2011年度の1003億円に迫る水準であることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約44.7%、土木工事が約54.3%となっており、半分以上を土木工事が占めていることが分かります。(下図参照)
中堅ゼネコン8社の受注高における建築工事割合が平均で約52%であることを踏まえると、飛島建設は中堅ゼネコンの中でも土木工事の比重が高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は1234億円と前年度より約0.3%の増加となりました。売上高は2014年度から2016年度までは1150億円前後の水準で推移し、2017年度に直近9年間で最も高い1282億円の水準まで増加しました。その後、2018年度は1231億円まで減少し、そこから2019年度は概ね横ばい若干の増加となっています。また、この2019年度の水準は、底となった2011年度の水準と比較すると約16.1%高い水準となっていることが読み取れます。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における飛島建設の繰越高は1822億円と前年度から約8.4%の減少となりました。繰越高は2012年度の1192億円から2016年度の1762億円まで増加傾向で推移した後、2017年度には1704億円の水準まで若干ながら減少しました。2018年度は1990億円と過去9年間で最も高い水準まで増加しましたが、2019年度は減少へ転じていることが読み取れます。また、2019年度の水準は、底となった2012年度の水準と比較して約52.8%高い水準にあり、前年度より減少となったものの、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は依然として高水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における飛島建設の手持ち工事月数は17.7ヵ月と2018年度における19.4ヵ月から減少しました。手持ち工事月数は2016年度の18.3ヵ月から2017年度の16ヵ月まで減少し、2018年度に直近9年間で最も高い水準まで増加しましたが、2019年度は減少となっています。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は73億円と前年度より約7.8%増加しました。飛島建設の営業利益は2012年度の13億円から2015年度の61億円まで3年連続の増加傾向で推移していましたが、2016年度に若干ながら54億円に減少しています。そして、2017年度には過去9年間で最も高い83億円の水準まで一気に増加、そこから2018年度は67億円と減少しましたが、2019年度は増加に転じていることが分かります。(下図参照)
一方、2019年度の営業利益率は5.9%でした。営業利益率は営業利益の推移と非常に類似した形で、底であった2012年度から2015年度の5.1%まで上昇した後、2016年度に一度下落し、2017年度には過去最高の6.4%となっています。その後、2018年度は5.5%まで下落していますが、2019年度は再び上昇へ転じています。
5. 従業員の状況
2019年度における飛島建設の従業員数は1315人でした。また、従業員数は2013年度の1142人より6年連続の増加傾向で推移し、この間に約170人増加したことが読み取れます。(下図参照)
また、2019年度における従業員の平均年齢は46.0歳、平均勤続年数は20.40年、平均年収は794.8万円でした。
さらに飛島建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約81.2(百万円/人)、93.9(百万円/人)、138.6(百万円/人)、5.5(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【飛島建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1067億円 | |
② 売上高 | 1234億円 | |
③ 繰越高 | 1822億円 | |
④ 営業利益 | 73億円 | |
⑤ 営業利益率 | 5.9% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 17.7ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 1315人 | |
⑧ 平均年齢 | 46.0歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 20.0年 | |
⑩ 平均年収 | 794.8万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 81.2(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 93.9(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 138.6(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 5.5(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 477億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 580億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 10億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして中堅ゼネコンである飛島建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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