錢高組の状況|中堅ゼネコンの状況把握【2020年版】
【業績から把握する錢高組|2020年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回は中堅ゼネコンである錢高組について紹介していきます。具体的には、2020年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2019年度における錢高組の受注高は1011億円と前年度から約19.0%の大幅な減少となりました。受注高は2011年度の1023億円から2014年度の1518億円まで増加傾向で推移した後、2017年度の1168億円まで3年連続の減少傾向で推移していました。その後、2018年度は1249億円まで増加しましたが、2019年度は減少へ転じました。この2019年度の水準は、直近の9年間で見てみると最も低い水準となっていますが、2014年度を除いては、概ね1000億円から1250億円の範囲で推移していることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約88.5%、土木工事が約11.5%を占めていることが分かります。(下図参照)
中堅ゼネコン8社の受注高における建築工事割合が平均で約52%であることを踏まえると、錢高組は中堅ゼネコンの中でも建築工事の比重が特に高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2019年度における売上高は1327億円と前年度より約3.8%の増加となりました。売上高は2012年度より2016年度まで概ね1100億円前後の水準で推移した後、2017年度から3年連続の増加傾向で推移していることが読み取れます。なお、この2019年度の水準は、過去9年間で底となった2016年度の1107億円と比較して約19.9%高い水準となっています。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2019年度における錢高組の繰越高は1357億円と前年度から約17.8%の大幅な減少となりました。繰越高は2013年度の1055億円から2016年度の1718億円まで増加傾向で推移した後、2019年度まで3年連続の減少となっています。また、2019年度の水準は、底であった2013年度の水準と比較して約28.6%高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2019年度における錢高組の手持ち工事月数は12.3ヵ月と2018年度における15.5ヵ月より大きく落ち込んだ水準となりました。手持ち工事月数は3年連続で減少しており、この2019年度の水準は2013年度の10.8ヵ月以来6年ぶりの低水準にあることが読み取れます。(下図参照)
4. 営業利益・営業利益率の状況
2019年度における営業利益は59億円と前年度より約1.5%増加しました。錢高組の営業利益は2012年度の−49億円から2015年度の45億円まで増加傾向で推移しましたが、2016年度に37億円まで減少しました。その後、2017年度に70億円まで増加しましたが、2018年度に再び58億円まで減少、そこから2019年度は概ね横ばいながら僅かに増加した形となっています。(下図参照)
一方、2019年度の営業利益率は4.5%でした。この9年間における営業利益率の推移は、営業利益の推移と極めて類似した推移となっており、2017年度の5.6%を山として2018年度の4.6%まで下落した後、2019年度までは概ね横ばい推移となっております。
5. 従業員の状況
2019年度における錢高組の従業員数は1036人でした。前年度から僅かに減少していますが、従業員数は2013年度より概ね1000人前後の水準で推移していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2019年度における従業員の平均年齢は39.9歳、平均勤続年数は15.1年、平均年収は821.2万円でした。
さらに錢高組の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約97.6(百万円/人)、128.1(百万円/人)、130.9(百万円/人)、5.7(百万円/人)となっています。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【錢高組の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1011億円 | |
② 売上高 | 1327億円 | |
③ 繰越高 | 1357億円 | |
④ 営業利益 | 59億円 | |
⑤ 営業利益率 | 4.5% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 12.3ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 1036人 | |
⑧ 平均年齢 | 39.9歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 15.1年 | |
⑩ 平均年収 | 821.2万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 97.6(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 128.1(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 130.9(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 5.7(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 895億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 116億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 0億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとして中堅ゼネコンである錢高組の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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