清水建設の状況|スーパーゼネコンの状況把握【2021年版】
【業績から把握する清水建設|2021年版】
国内の主要なゼネコンの状況を業績などから把握する「ゼネコンの状況」シリーズ、今回はスーパーゼネコンである清水建設について紹介していきます。具体的には、2021年3月期決算における受注高や売上高、繰越高といった業績の状況や傾向をベースに下記の観点より紹介します。
- 1. 受注高の状況
- 2. 売上高の状況
- 3. 繰越高の状況
- 4. 営業利益と営業利益率の状況
- 5. 従業員の状況
- 参考|主要データ一覧
1. 受注高の状況
まず、2020年度における清水建設の受注高は1兆2010億円と前年度から約5.8%の減少となりました。受注高は2015年度の1兆3419億円より3年連続の増加傾向で推移し、2018年度には1兆7255億円と直近の10年間で最も高い水準になりましたが、2019年度から2年連続で減少しています。この2020年度の受注高の水準は、底となっていた2012年度の水準と比較して約3.5%と若干高い水準であり、過去10年間で3番目に低い水準となっていることが分かります。(下図参照)
続いて、受注高の内訳構成を見てみると、建築工事が全体の約68.1%を占めている一方、土木工事は26.1%となっております。(下図参照)
スーパーゼネコン5社の受注高における建築工事割合が平均で約75%であることを踏まえると、清水建設は、建築工事と土木工事のバランスがスーパーゼネコンの平均と比べ、土木工事の割合が若干高いゼネコンであると言えます。
2. 売上高の状況
次に、2020年度における売上高は1兆2500億円と前年度より約11.8%の減少となりました。売上高は2011年度の1兆1849億円から2015年度の1兆4068億円まで4年連続で増加した後、2017年度の1兆2626億円まで2年連続で減少しました。その後、2019年度には1兆4176億円と直近の10年間で最も高い水準まで増加しましたが、そこから大きく減少していることが分かります。(下図参照)
3. 繰越高の状況
続いて、2020年度における清水建設の繰越高は1兆9463億円と前年度から約2.5%の減少となりました。繰越高は増加傾向で推移し、2018年度には2兆1385億円と、この10年間で最も高い水準まで増加しましたが、2019年度から2年連続で減少していることが読み取れます。この2020年度の繰越高の水準は、底であった2012年度の1兆1984億円と比較して約62.4%高い水準にあり、2年連続で減少したものの、次期に繰り越されることになる手持ち工事の量は依然として非常に高い水準にあることが分かります。(下図参照)
ここで、建設会社が期末時点で「繰越高」として抱えている手持ち工事を解消する為に必要な期間を示す「手持ち工事月数」と呼ばれる指標についても見ていきます。
2020年度における清水建設の手持ち工事月数は18.7ヵ月となりました。手持ち工事月数は、2018年度の18.2ヵ月から2019年度の16.9カ月へ減少しましたが、2020年度は過去10年間で最も高い水準まで増加しています。(下図参照)
これは、2019年度から2020年度にかけて、売上高の変動率が繰越高の変動率を下回っていることを示しています。具体的に、2019年度から20年度にかけて売上高は約11.8%減少しているのに対して、繰越高は約2.5%の減少でした。
4. 営業利益・営業利益率の状況
2020年度における清水建設の営業利益は901億円と前年度より約21.9%減少しました。営業利益は、2018年度から2年連続で増加して2019年度には1153億円と、直近の10年間で最も高い水準となりましたが、そこから大きく減少していることが読み取れます。(下図参照)
また、2020年度の営業利益率は7.2%と前年度より0.9%下落しました。営業利益率は2012年度の0.2%を底として2017年度の8.6%まで継続的な上昇傾向で推移していましたが、2018年度は8.1%と6年振りに下落しています。その後、2019年度は横ばいで推移したものの、2020年度は営業利益の推移と同様に下落していることが分かります。
5. 従業員の状況
2020年度における清水建設の従業員数は10,494人となっています。2011年度の10,776人より2018年度の10,336人まで7年連続の穏やかな減少傾向で推移していましたが、2019年度から2年連続で増加していることが読み取れます。(下図参照)
続いて、2020年度における従業員の平均年齢は42.8歳、平均勤続年数は15.3年、平均年収は971.2万円でした。
さらに清水建設の業績について従業員一人あたりの水準で見てみると、従業員あたり受注高、売上高、繰越高、営業利益は、それぞれ約114.4(百万円/人)、119.1(百万円/人)、185.5(百万円/人)、8.6(百万円/人)となっていることが分かります。(下図参照)
参考|主要データ一覧
ここで、今回採用されたデータのうち主要なデータについて、参考として一覧表で以下に紹介します。
【清水建設の状況|主要データ一覧】
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
① 受注高 | 1兆2010億円 | |
② 売上高 | 1兆2500億円 | |
③ 繰越高 | 1兆9463億円 | |
④ 営業利益 | 901億円 | |
⑤ 営業利益率 | 7.2% | ④÷② |
⑥ 手持ち工事月数 | 18.7ヵ月 | ③÷②×12ヵ月 |
⑦ 従業員数 | 10,494人 | |
⑧ 平均年齢 | 42.8歳 | |
⑨ 平均勤続年数 | 15.3年 | |
⑩ 平均年収 | 971.2万円 | |
⑪ 従業員あたり受注高 | 114.4(百万円/人) | ①÷⑦ |
⑫ 従業員あたり売上高 | 119.1(百万円/人) | ②÷⑦ |
⑬ 従業員あたり繰越高 | 185.5(百万円/人) | ③÷⑦ |
⑭ 従業員あたり営業利益 | 8.6(百万円/人) | ④÷⑦ |
⑮ 受注高(建築) | 8177億円 | |
⑯ 受注高(土木) | 3130億円 | |
⑰ 受注高(その他) | 703億円 | ① -(⑮+⑯) |
注)値は「単独」に基づく。
以上のように、今回は「ゼネコンの状況」シリーズとして、国内の主要なゼネコンとしてスーパーゼネコンである清水建設の状況について、受注高や売上高といった業績の状況や傾向をベースに紹介しました。
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